2011 Fiscal Year Research-status Report
小腸上皮細胞の免疫機能を介する補中益気湯の薬効発現機構の解析
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23590895
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
清原 寛章 北里大学, 大学院感染制御科学府, 准教授 (70161601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 弘子 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (50129269)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 漢方薬 / 補中益気湯 / 小腸上皮細胞 / 抗がん剤 / 抗炎症作用 / オリゴ糖 / 上気道粘膜免疫機構 |
Research Abstract |
本研究では補中益気湯のマウス小腸上皮細胞での抗菌タンパクやパターン認識分子の発現に対する調節作用についての解析を行うことを目的とする。抗がん剤のメソトレキセートの前処置により作製した小腸上皮傷害モデルマウスへの補中益気湯の投与は上皮組織でのTNF-αやIL-1βのmRNA発現を抑制し、抗炎症作用を示すことが明らかとなった。本作用への補中益気湯含有成分の関与について検討した結果、脂溶性低分子成分群と水溶性の比較的低分子の成分群は関与するが、高分子成分群の関与は低いことが示唆された。また、脂溶性成分群では、IL-10 mRNAの発現を増強していた。一方、水溶性の低分子成分群では防御因子としての抗菌タンパク(MBP-CやRegIII-γ)の発現誘導には明瞭な影響を与えず、むしろtoll-like receptorの炎症性シグナルカスケードを負に制御するIRAK-Mの mRNA発現を炎症後期において増強することが示唆された。また、補中益気湯の主要含有成分の高分子多糖成分はメソトレキセート投与による小腸上皮障害モデルに対する抗炎症的な作用はほとんど示さないことが推定された。抗炎症作用を示した水溶性低分子成分は鎖長の異なる共通構造を有するオリゴ糖であることが明らかとなった。また、本オリゴ糖はIEC-6細胞を用いた検討からTLR9やNOD2の発現も増強させることを示唆した。そこで、本オリゴ糖群の補中益気湯の有する上気道粘膜免疫機構に対する賦活作用発現への関与について検討した結果、脂溶性成分群および高分子多糖群との共同作用により、上気道粘膜免疫機構に対する賦活化作用の発現に関与することが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補中益気湯の含有成分を用いた検討により、本漢方薬の有する抗がん剤による小腸上皮傷害に対する改善作用の多面的な作用メカニズムが明らかになってきた。また、薬効成分の一部を特定し得たこと、本活性成分が他の含有成分との共同作用により腸管から遠隔の上気道粘膜免疫機構に対する制御作用を示すことを明らかにできた点から、研究計画が円滑に進展していると評価できると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.補中益気湯およびオリゴ糖がIRAK-Mを誘導するメカニズムについて腸ペプチドのmelanocortin発現の観点から解析を行う。2.腸管免疫系の制御に重要な免疫因子(サイトカイン、ケモカイン、酵素、接着因子、ケモカイン受容体)について、パイエル板および腸管膜リンパ節での発現に対する補中益気湯や含有成分の投与による変化について遺伝子およびタンパクの両面から解析することにより、補中益気湯の作用点を探索する。3.パイエル板からのCD40LやRANKL陽性リンパ球の腸管膜リンパ組織への移行は腸管膜リンパ節での自己反応性リンパ球の除去機構の誘導に重要な役割を果たすことが報告されている。そこで、補中益気湯やその含有成分の投与による影響について、パイエル板でのCD40L/RANKL発現および腸管膜リンパ節でのAire発現の観点から解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の遂行においては、マウスへの投与実験を中心に検討を行う。このため、マウスの購入、飼育、解剖に要する経費として申請課題の研究費を充当する。また、多岐にわたる免疫関連因子の発現変化を追跡することを目的に、realtime PCRや特異抗体を用いたFlowcytometryによる解析を行う。このため、primer設計、mRNA抽出、realtime PCR実施に必要な酵素および蛍光試薬などの購入に研究費を充当する。さらに、IRAK-M誘導へのmelanocortinの関与についてはin vivoでの検討とともにIEC-6細胞を用いたin vitroでの検討が必要であることから、細胞培養用の試薬も研究費から充当する。一方、腸管膜リンパ節でのAire発現に関する検討においては研究の進展により、当該リンパ節ストローマ細胞上での自己抗原タンパクの発現を網羅的に検索する必要が出てくるため、自己抗原タンパクをコードするDNAを用いたDNAアレイの購入に研究費を充当する。
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