2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜機能と骨代謝動態からみたメタボリックシンドロームの病態生理
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23590901
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Research Institution | Kansai University of Health Sciences |
Principal Investigator |
津田 和志 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (90217315)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メタボリックシンドローム / 高血圧 / 酸化ストレス / 細胞膜fluidity / 電子スピン共鳴 / 赤血球 / nitric oxide / microcirculation |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームの基盤には内臓脂肪の蓄積があり、高血圧や心血管病変の成因となるが、その機序は明らかではない。本研究では高血圧を主体としたメタボリックシンドローム患者の細胞膜流動性 (fluidity) を電子スピン共鳴法にて測定し、その調節機序を各種血管内分泌因子との関連から考察した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に低下(膜microviscosityは悪化)していた。この成績は高血圧においてrheologic behaviorの異常からmicrocirculationの障害が惹起意される可能性を示唆するものと考えられる。さらに酸化ストレスの指標のひとつである血中8-iso-prostaglandin F2alpha (8-isoPGF2alpha) 値は高血圧群で正常血圧群に比し有意に高値であり、赤血球膜fluidityの悪化やnitric oxide (NO)代謝産物濃度の低下と有意に相関した。以上から酸化ストレスと内皮機能不全が高血圧の膜機能調節に重要な役割を果たし、メタボリックシンドロームに関連した血管内分泌因子の異常が心血管病変の成因に一部関与するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子スピン共鳴法によるメタボリックシンドローム患者の細胞膜流動性(fluidity)の測定は順調に行われている。また酸化ストレスのマーカーとしての血中8-iso-prostaglandin F2alpha や、内皮機能のマーカーである血中nitric oxide (NO)代謝産物濃度についても安定した定量が可能である。そしてこれら因子の関連性、ならびにそれらの膜機能に対する影響と作用メカニズムについて解析中である。 一方、メタボリックシンドローム患者の骨塩含量の測定についてもdual energy X-ray absorptiometric methodを用いて順調に測定を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、メタボリックシンドロームの成因である肥満、糖尿病ならびに高血圧の関連を細胞膜レベルの変化からみるため、引き続きメタボリックシンドローム患者を対象として、その細胞膜機能を電子スピン共鳴法にて測定し、インスリンやレプチン、アディポネクチンなどの血管内分泌因子の膜機能に及ぼす影響をCa代謝機構との関連から検討する。さらに動脈硬化病変や冠動脈疾患、慢性腎臓病 (CKD) の発症に細胞膜機能異常やこれら内分泌因子がどのように関与するか考察する。さらにメタボリックシンドローム患者の骨塩含量を測定することによって、全身のCa代謝異常がその病態にいかに関与するか考察を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メタボリックシンドロームは動脈硬化、虚血性心疾患、慢性腎臓病 (CKD)の危険因子と して注目されているが、その血管病変の特徴は明らかではない。本年度はメタボリックシンドロームの動脈硬化、血管病変の臨床像を明らかにするため、メタボリックシンドローム患者の冠動脈病変の特徴をmulti-detector CT (MDCT)にて評価する。さらに慢性腎臓病 (CKD)の病態把握のために尿中微量アルブミン量、糸球体濾過量(eGFR)、cystatinC値を測定する。そしてメタボリックシンドロームの血管病変上の特徴から、細胞膜機能や血管内分泌因子の変化が全身の微小循環障害や腎障害、臓器障害の予測因子となり得るか解析する。 一方、メタボリックシンドローム患者の骨塩含量に関してはdual energy X-ray absorptiometric methodを用いて定量的に測定し、各種血管内分泌因子との関連を詳細に検討する。
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