2012 Fiscal Year Research-status Report
メタボリックシンドロームの向血栓性予防の新たな治療的戦略の確立
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23590905
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
津田 博子 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (30180003)
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Keywords | プロテインS / メタボリックシンドローム / 向血栓性 / リポタンパク質 |
Research Abstract |
メタボリックシンドロームでは動脈硬化性疾患だけでなく静脈血栓塞栓症のリスクも高まる。本研究では、メタボリックシンドロームの向血栓性に対する抗凝固因子プロテインS(PS)の新規機能を明らかにし、食生活改善を主軸とした予防治療法開発を目的としている。今年度の研究によって得られた成果は以下のとおりである。 1. 臨床研究 平成23年度の研究で肥満女性の血中総PS抗原量が、血中中性脂肪、およびVLDLやキロミクロンのアポタンパク質のapoC-II,apoC-IIIと正に相関することを見出した。そこで、平成24年度は肥満女性62名(48.5±7.8歳)の血中総PS抗原量、中性脂肪について、身体指標、食物摂取状況との関連を比較した。血中中性脂肪は内臓脂肪面積、エネルギー摂取量と強く正に相関するが、総PS抗原量は相関しなかった。また、総PS抗原量は血中エストラジオールと強く負に相関し、閉経者が未閉経者に比べ有意に高値であったが、血中中性脂肪はエストラジオールと関連せず、閉経の有無でも差がなかった。以上から、血中PSはVLDLやキロミクロンなどの中性脂肪に富むリポタンパク質に関連しているが、血中PSと血中中性脂肪とは異なる機序で調節されることが分かった。 2. 基礎研究 抗腫瘍作用、アンチエイジング作用を示すことから健康食品として注目されているresveratrolの二量体R3、R4を合成し、株化ヒト肝細胞HepG2のPS mRNA発現をreal time PCR法で検討した。R3、R4はresveratrol の1/10の濃度で、PS mRNA発現を抑制するだけでなく、抗凝固因子プロテインC mRNA発現も抑制したため、血液凝固制御系を強く抑制することが示唆された。さらに、apoC-II,apoC-IIを含む主要なアポタンパク質のmRNA発現解析系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①肥満患者の減量前後での血中プロテインS(PS)動態とメタボリックシンドロームのリスクファクターや血中アディポカインとの関連の解析、②肥満患者の減量前後での血中PS動態に影響を与える食事因子の探索と介入研究による確認、③食事因子やアディポカインによる肝細胞、血管内皮細胞のPS発現調節のメカニズム解明、の3つの研究項目について研究を推進している。 1. 臨床研究 平成23年度は中村学園大学健康増進センター「肥満クリニック」を受診した肥満女性の血中PS動態を解析した結果、血中PSが高分子量アディポネクチン、内臓脂肪蓄積、血圧、血糖、HDL-コレステロールとは関連しなかったが、VLDL,カイロミクロンなどの中性脂肪に富むリポタンパク質と関連することを明らかにした。そこで、平成24年度は血中PS、中性脂肪と身体指標、食事因子との関連を比較した。血中中性脂肪は内臓脂肪面積、エネルギー摂取量と強く正に相関するが、総PS抗原量はエネルギー摂取量とは相関せず、血中中性脂肪はPSと異なり、血中エストラジオールと関連しなかった。したがって、血中PSと中性脂肪の調節因子が異なることが分かった。 2. 基礎研究 平成23年度は赤ワインに含まれるresveratrolが株化ヒト肝細胞のPS発現を抑制するが抗線溶因子のplasminogen activator inhibitor-type 1 (PAI-1)発現を促進し向血栓性を強く促進することを明らかにした。そこで、平成24年度はresveratrolの二量体R3、R4について検討したところ、resveratrol の1/10の濃度でPS発現を抑制したことから、二量体化によりresveratrolの向血栓性がさらに増強することが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 臨床研究 平成24年度は減量前の肥満女性を対象にして血中PSに関連する食事因子を検討したが、エネルギー摂取量を始めいずれの栄養素、食品群摂取量との関連も示さなかった。そこで、平成25年度は、非肥満の若年女性約200名を対象として、肥満女性で認めた血中PSと中性脂肪に富むリポタンパク質と関連を検討する。肥満女性については、4ヶ月間の減量治療前後での身体特性、食習慣の変化がPS 動態に及ぼす影響について検討する。 2. 基礎研究 平成24年度にapoC-II,apoC-IIを含む主要なアポタンパク質のmRNA発現解析系を確立した。そこで、平成25年度は中性脂肪に含まれる各種飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸が、株化ヒト肝細胞、株化ヒト血管内皮細胞におけるPS、PC、PAI-1などの血液凝固線溶因子およびアポタンパク質遺伝子発現を制御するかを検討し、その分子機序解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度から繰り越した調節経費は約151万円となるため、平成25年度の直接経費は約260万円となる。支出の内訳としては、研究補助員の賃金105万円、試薬類、実験器具類、臨床検査依頼費等の130万円、国際血栓止血学会(オランダ・アムステルダム)での研究成果発表を予定しているので旅費15万円、その他10万円を予定している。
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Research Products
(13 results)
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[Presentation] Charting of daily weight pattern introduced into group therapy reinforces the synergistic effect on weight reduction in obese patients.
Author(s)
Ueno H., Miyazaki H., Abe S., Imai K., Masuda T., Koga R., Tsuda H., Iwamoto M., Nakazono E., Ono M., Yazumi K., Moriyama K., Oobe M., Aishima E., Nakano S., Sakata T.
Organizer
16th Int. Congr. Dietetics.
Place of Presentation
International Congress Center (Sydney, Australia)
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