2011 Fiscal Year Research-status Report
新しい動物モデルを用いた心サルコイドーシスの画期的な早期診断法の開発
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23590907
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
諸井 雅男 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (30256721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣江 道昭 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (80101872)
窪田 哲也 独立行政法人国立健康・栄養研究所, その他部局等, 研究員 (60385698)
瀧 淳一 金沢大学, 大学病院, 講師 (10251927)
吉田 恭子 (今中 恭子) 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00242967)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | サルコイドーシス / マウスモデル / 心サルコイドーシス |
Research Abstract |
サルコイドーシス(サ症)は全身性疾患であり、一般に心病変の合併がなければ比較的予後良好である。しかし、心サ症は診断が困難でありかつ治療が遅れれば予後不良となる。早期に診断し、早期にステロイドを使用すれば予後は改善されるため早期診断がきわめて重要である。サ症の原因はアクネ菌感染による過敏性免疫反応が示唆されているが不明の点も多く、動物モデルの確立は病因解明や早期の診断法開発に有用である。近年、肺サ症のマウスモデルが報告されたが、このモデルにおける心サ症の検討はなされていない。本研究の目的は肺サ症マウスから心サ症のマウスモデルを確立し、このマウスを用いて病態および早期診断法の可能性を探ることであった。3年計画の1年目は、肺サ症マウスモデルの確立と心サ症モデルの可能性を探ることであった。アポE欠損マウス(ApoE-/-)にコール酸含有高脂肪食(HFCD)を16週間与えるとその40%に肺サ症を発症するという報告があるため、まずはこのモデルの再現性を検討した。我々の検討では10%程度に肺門リンパ節にgranuloma形成を認めたにすぎなかった。granuloma形成の再現性はマウスのstrainにも依存すると思われるが、ApoE-/-HFCDモデルではそれほど高率には肺サ症は発症せず、モデルとしては改善の余地がある。原因と考えられているアクネ菌が肺に存在する可能性が低いために、モデルの作成確率が低い可能性がある。これを解決するためにアクネ菌をApoE-/-HFCDマウスの気道内に直接注入する肺サ症マウスモデルを現在、作成解析中である。これに基づきアクネ菌を直接心筋に注入するモデルを計画する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では1年目では肺サルコイドーシスの動物モデルの確立であった。アポE欠損マウス(ApoE-/-)にコール酸含有高脂肪食(HFCD)を16週間与えたモデル(ApoE-/-HFCD)では10-40%の確率で肺サルコイドーシスを作成できることが判明した。肺サ症モデル作成を1年目の目標としていたのでほぼ目標は達成されたと思われる。Samokhinらは2010年に同様な方法で作成されたモデルで40%の確率で肺サ症モデルマウスが作成できたことを報告している(Am J Pathol 2010,176:1148-1156)。肺サ症の発症の頻度はApoE-/-HFCDモデルではマウスのstrainに左右される可能性がある。またアクネ菌が気道に常在するとされているがその頻度に依存する可能性もある。さらにアクネ菌に対する過敏性免疫反応の違いも示唆される。以上の理由からApoE-/-HFCDの肺サ症発症の確率はそれほど高くなかったと推測される。ApoE-/-ではマクロファージが活性化されており、このマクロファージはコール酸を貪食はするが、処理できないために、granulomaを形成すると推測される。ApoE-/-HFCDモデルはヒトのサ症とは病因論が異なることおよび再現性がそれほど高くないことが欠点である。この両者を改善するモデルがさらに望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
ApoE-/-HFCDマウス(コール酸を含む高脂肪食負荷をおこなったApo E遺伝子欠損マウス)モデルはヒトのサ症とは病因論が異なることおよび再現性がそれほど高くないことが現段階で改善されるべき問題点である。この両者を改善するモデルが望まれる。サ症の病因の1つと考えられているアクネ菌投与によりマウス肺サ症を発症したとするモデルが報告されている。この場合に投与されたアクネ菌は熱処理されたもので少量を3回に分けて(2週間の間隔をあけて)皮下注射されている。すなわちアクネ菌による感作をおこなうと肺に常在するアクネ菌をマクロファージが貪食してgranulomaを形成する。一方、熱処理したアクネ菌を直接気道内に大量に投与することにより肺サ症を発症させる試みを今回我々は検討している。ApoE-/-HFCDマウスに経鼻でアクネ菌を投与するモデルである。 我々の最終目標は心サ症モデルを作成することである。そのためには肺サ症モデルを高率に再現性よく作成する必要がある。原因と考えられているアクネ菌は肺には常在するが心臓には常在しないために、肺サ症モデルの方が心サ症モデルよりも容易に作成できると考えられる。心臓へのアクネ菌の感染経路は肺のマクロファージ内で増殖した細胞壁欠失型アクネ菌(L型アクネ菌)が血行性あるいはリンパ行性に心筋へ散布されると考えられている。モデルでこれを再現するのは容易ではないため、次の段階は、熱処理アクネ菌の心筋への直接注入である。 次年度に使用する研究費が生じた理由は、ApoE-/-マウス(6週齢)の輸入が今年度に一部間に合わなかったためで、次年度にApoE-/-マウス(6週齢)の購入に充てる予定である。これによりアクネ菌の心筋内注入モデル作成が可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ApoE-/-HFCDマウス(コール酸を含む高脂肪食負荷をおこなったApo E遺伝子欠損マウス)にアクネ菌を経鼻的に気道に注入し、肺サ症の再現性のあるモデルを確立する。次に心サ症のマウスモデルを作成する。原因とされるアクネ菌をApoE-/-HFCDマウスの心臓に直接注入してその病変形成を病理学的に検討する。以下に次年度の研究費の使用計画をまとめた。1.ApoE-/-HFCDの準備(100+30匹購入および飼育量として2,200,000円)2.病理標本作製および免疫染色(テネイシンC抗体によるものを含む)460,613円
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Research Products
(1 results)