2011 Fiscal Year Research-status Report
Notch遺伝子を介した腸上皮化生進展過程における特有な胃癌幹細胞誘導機構の解明
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23590910
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今谷 晃 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30333876)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 胃 / 癌幹細胞 / マイクロアレイ / 発現制御 / 分化 |
Research Abstract |
胃においてはH.pylori感染に対する免疫応答により腸上皮化生が進展する。この進展過程において、分化型胃癌が発生すると考えられている。幹細胞の観点ではHomeobox遺伝子であるSox2からCdx2の発現変更が生じ、分化の再プログラム化がおこると仮定できる。一方で幹細胞維持に重要なNotch1遺伝子の制御異常は癌幹細胞を誘導し発癌に関与することが乳癌等で報告されている。そこで、Sox2からCdx2発現幹細胞への再プログラム化に絞り込んだ、Notch1に関連した癌幹細胞を誘導する遺伝子を、Microarray解析を用いて同定することを目的として、当該年度の研究を開始した。最初にヒト正常胃粘膜組織に対する免疫組織化学を用いた検討より、従来の知見と同様に、固有胃腺でSox2、腸上皮化生でCdx2の発現を認めた。一方Notch1は、固有胃腺では主に主細胞と壁細胞で発現し、腺底部に向けて強く発現していた。また、腸上皮化生のPaneth細胞にも発現を認めた。in vitroでの胃癌幹細胞誘導モデルとして、胃癌培養細胞株KATOIIIに対して、Knockout Single Vector System for inducible RNAi (Clontech) を遺伝子導入しNotch1遺伝子を抑制するNotch1siRNA誘導安定細胞株を樹立後、Agilent Expression Arrayを利用しMicroarray解析を行った。その結果、Notch1を抑制することにより、699遺伝子が抑制され、675遺伝子が発現誘導された。これらの同定された遺伝子群より、既に解析しているSox2遺伝子抑制により制御される遺伝子ファイルと照合し、ある遺伝子を抽出同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災により、東北大学医学系研究科消化器病態学分野の生化学実験室、同医学部共同実験室は、測定機器を含め壊滅的な被害を受けており、23年8月以降、ある程度の実験が再開可能となった。この時間的遅れのため、当初の計画に照らし合わせて、in vitroでの胃癌幹細胞誘導モデルを用いたMicroarrayによる解析までは進捗できたが、同定された遺伝子の胃癌における発現異常についての検討まで推し進めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Notch1またはSox2の発現を抑制し独立して行ったMicroarray解析よって得られた遺伝子群から、共通して変動が認められた遺伝子に関して、western blot法あるいは免疫組織化学を用い、発現異常をヒト癌培養細胞やヒト胃癌組織でスクリーニングする。23年度の遅れを取り戻すために平行して、同定した遺伝子の強制発現あるいは抑制ベクターを構築して、胃正常培養細胞株GSM06あるいは胃癌培養細胞株に導入する。そして、MTT法による細胞増殖能やsoft agar法による造腫瘍効果について検討する。また、既知の癌幹細胞マーカーの発現変化について、real-time RT-PCR法、western blot法あるいはFlow cytometry (FACS)を用いて検討する。 同定して遺伝子の発現制御機構を解明するために、そのプロモーター領域に関して、コンピューター解析(MatInpector; Genomatix)を用いたmotif検索を行い、想定されるシグナル伝達機構を選択する。そして、western blot法、luciferase assay、gel shift assay、ChiPなどで確認する。さらにHelicobacter pylori感染による発現変動についても検討し、胃発癌機構の解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、東日本大震災による研究環境の悪化に伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度計画している研究の遂行に使用する予定である。
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