2013 Fiscal Year Annual Research Report
Notch遺伝子を介した腸上皮化生進展過程における特有な胃癌幹細胞誘導機構の解明
Project/Area Number |
23590910
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今谷 晃 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30333876)
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Keywords | 胃 / Helicobacter pylori / 癌抑制遺伝子 / 分化制御 |
Research Abstract |
胃上皮細胞においてH.pylori感染により慢性胃炎・萎縮がおこり腸上皮化生が進展し、この過程で胃癌が生じると考えられている。前年度までの研究期間の研究成果の一部として、幹細胞維持を調整しているNotch1遺伝子の発現は固有胃腺の分化成熟に関与し、in vitroの研究よりH.pylori刺激によりNotch1の発現が抑制を受けることを明らかにしている。 一方、従来Notch1は細胞内ドメイン(NICD)が過剰発現することによって発癌に関与することが周知の事実であったが、逆に近年、扁平上皮癌においてNotchの機能不全が癌化、つまり、Notch遺伝子が癌抑制遺伝子的側面を持っていることが明らかとなっている。 そこで当研究成果を踏まえて、H.pyloriによるNotch1発現抑制が胃癌を誘導するという作業仮説のもと研究を進めた。まずヒト胃癌培養細胞株においてNotchsiRNAを用いてNotch1発現を抑制したところ、細胞増殖の有意な亢進を認め、Notchの発現抑制が癌化につながることが示唆された。さらに、胃癌培養細胞株においてfull length Notchを維持するようにADAM阻害剤を用いて評価したところ、MTS assayで細胞増殖能は抑制され、Spheroid assayで造腫瘍能が抑制された。この過程においては、FACSおよび蛍光免疫染色でFull length Notchの発現が回復していることも判明した。このため、H.pylori感染による胃癌においては、Full length Notch1は癌抑制的に作用することを明らかにし、Full length Notchを維持回復するADAM阻害剤が胃癌に対する抗がん剤の創薬の基盤になることが示唆された。
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