2011 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクター・ピロリ除菌後胃粘膜のマイクロRNA発現解析による除菌後胃癌の解明
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23590911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大野 秀樹 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30396866)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 除菌 / 胃癌 |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ除菌による胃癌の発症予防効果が示され、除菌患者は激増すると予想される。ただし、除菌後でも発癌リスクがあるため、除菌後集団の中で胃癌をいかに効率良く発見していくかが今後問題となる。しかし、いまだ除菌後胃癌の病態については不明な点が多い。本研究は除菌後胃癌発症の病態解明を目的とし、除菌後に残存する腸上皮化生等での遺伝子発現異常についてマイクロRNA(miRNA)等の発現解析を行い、発現異常を認めたmiRNAやその標的遺伝子に関し、分子生物学的実験により発癌への関与を明らかにし、除菌後の胃癌発症のリスク評価に有用な遺伝子変異等のバイオマーカーを提示することを目的としている。 本研究ではヘリコバクター・ピロリ感染者の除菌前後での経過を観察することを必要とする。当院受診者において、日本ヘリコバクター学会ガイドラインに基づきヘリコバクター・ピロリ感染検査を行い、陽性者の中で除菌希望者に対して除菌治療を行った。また、上部消化管内視鏡検査にて萎縮性粘膜や腸上皮化生が認められた患者群でのヘリコバクター・ピロリ感染状況について検討を行った。さらに、今後胃粘膜でのmiRNAの発現検討を行うため、内視鏡下生検により得られた胃粘膜からのRNAを抽出し、マイクロアレイ等に使用可能となる条件設定のための予備検討を行った。その他、研究対象とすべきmiRNA候補について、学会報告や文献等による情報収集も継続して行った。なお、マイクロアレイに関しては、現時点では実施するのに十分な臨床検体数が集積していないため、次年度以降もさらに検体を収集しマイクロアレイ等による解析を進める方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はヘリコバクター・ピロリ感染者における除菌前後での胃粘膜の変化を解析検討することを目的としている。まず、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われた患者に対しては、日本ヘリコバクター学会ガイドラインに基づき血清抗体、尿中抗体、尿素呼気試験、鏡検法、迅速ウレアーゼ試験を用いてヘリコバクター・ピロリ感染診断を行った。感染者に対して一次除菌はプロトンポンプインヒビター、サワシリン、クラリスロマイシンにより、二次除菌はプロトンポンプインヒビター、サワシリン、メトロニダゾールにより除菌治療を施行し、除菌判定として尿素呼気試験を行った。 上部消化管内視鏡検査を施行された患者では、内視鏡的観察による萎縮境界精査の他、適宜生検検体を用い萎縮性変化や腸上皮化生の有無についての病理学的検討を行った。また、胃粘膜におけるmiRNAの発現変化を今後マイクロアレイによる行うため、生検による臨床検体を採取し収集した。なお、マイクロアレイを行うために十分な臨床検体数が確保されていないため、マイクロアレイの実施は次年度とした。
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Strategy for Future Research Activity |
内視鏡生検により胃粘膜の臨床検体を収集した上で、ヘリコバクター・ピロリ未感染で腸上皮化生を認めない正常群とヘリコバクター・ピロリ除菌後で腸上皮化生を認める2群に分け、miRNA マイクロアレイを行う。さらに、2群間で有意差を認めたmiRNAについて、Validationのため定量PCRを行う。 発現に有意差を認めたmiRNAについては標的遺伝子をデータベースにより解析し、炎症、細胞増殖、アポトーシス、発癌等に関連する可能性を有するmiRNAを中心に解析を進める。また、これらのmiRNAについて発癌機構への影響の有無について明らかにするために、胃癌上皮細胞株に候補miRNAをover expressionもしくはknock downさせ細胞機能の変化を検討する。同様に標的遺伝子が同定されれば、その遺伝子についても同様の解析を行う。 候補となるmiRNAとそのtarget geneの発現に関し、胃癌検体等を用い、その発現変化を胃癌、腸上皮化生粘膜、萎縮粘膜、正常粘膜との間でqRT-PCR、in situ hybidization、組織染色等を用い比較検討する。癌組織において有意な発現異常を認めたmiRNAと標的遺伝子については、その原因となり得る遺伝子変異、欠失、増幅の有無についてシークエンシングを行う。以上の実験結果より、除菌後発癌の高リスク群の指標として有用なバイオマーカーを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
収集した胃粘膜生検検体を用いてmiRNA マイクロアレイを行い、ヘリコバクター・ピロリの感染者と非感染者間や除菌前後において有意差を認めたmiRNAについてさらにValidationのための定量PCRを行う。 発現に有意差を認めたmiRNAについては標的遺伝子をデータベースにより解析し、炎症、細胞増殖、アポトーシス、発癌等に関連する可能性を有するmiRNAを中心に解析を進める。 また、これらのmiRNAについて発癌機構への影響の有無について明らかにするために、胃癌上皮細胞株に候補miRNAをover expressionもしくはknock downさせ細胞機能の変化を検討する。同様に標的遺伝子が同定されれば、その遺伝子についても同様の解析を行う。
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Research Products
(1 results)