2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ除菌後胃粘膜のマイクロRNA発現解析による除菌後胃癌の解明
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23590911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大野 秀樹 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30396866)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 除菌 |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ除菌による胃癌予防効果が示され、今後除菌患者は増加すると予想される。しかし、除菌後低いながらも胃癌発症のリスクが残存することが知られている。本研究では除菌による臨床症状と遺伝子発現異常の変化について解析を行い、除菌後胃粘膜の病態変化について検討した。今回は胃炎患者の除菌成功例を主な対象とした。まず除菌後の自覚症状についてFSSGスコアを用い解析した。スコアは除菌前8.7 ± 6.7から除菌成功後4.7 ± 5.2へと有意に低下しており、除菌後に自覚症状は改善していた。これまでのところ除菌により胃炎症状のみならず内視鏡的胃炎の所見も改善するとの報告が多いが、本研究では除菌後に認められる遺伝子発現異常についてさらに検討した。今回は特にマイクロRNA(miRNA)の発現異常について網羅的解析を行った。ピロリ除菌後患者と未感染患者を対象に胃体部と前庭部粘膜の生検検体を用いmiRNAマイクロアレイ法による発現解析を行った。この結果、除菌後内視鏡的に胃炎が改善している胃粘膜においてmiR-92aやmiR-155等の発現がピロリ未感染者と比較し上昇していた。また、胃体部と前庭部では発現異常をきたしていたmiRNAに違いが認められた。今回発現異常を認めたmiRNAの中には細胞増殖や発癌に関与するとされるものが含まれており、除菌後胃癌の発症に関与している可能性が挙げられた。以上より、ピロリ除菌後に胃炎が消退した胃粘膜においてもmiRNAの発現異常が残存しており、この異常が細胞増殖等のシグナルに影響し除菌後胃癌の発症に関与している可能性が示唆された。今後、さらに長期間でのmiRNAの発現変化の解析が除菌後胃癌の病態解明や発症高危険群囲い込みのためのバイオマーカー同定には必要である。
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Research Products
(2 results)