2012 Fiscal Year Research-status Report
温度感受性遺伝子導入動物カハール細胞を用いた消化管間質腫瘍の悪性化機序
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23590912
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
杉山 敏郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00196768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 桂一 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (10334715)
安藤 孝将 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (30600671)
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Keywords | GIST / c-kit / stomach / intestine |
Research Abstract |
消化管間質腫瘍(GIST)発症の分子機構の解明からKIT蛋白を介した脱制御が主たる腫瘍化機序と推定されている。この点を証明すべく実施された変異c-kit遺伝子ノックインマウスの報告は予想に反してGIST起源カハール介在細胞過形成は多発するが、腫瘍は盲腸部に限局、発生頻度が最も高い胃に腫瘍は発生しないことが判明した。この知見は、第1点はc-kit遺伝子変異のみが増殖機序ではないこと、第2点は発生臓器の特異性があることを予測させた。 本研究では、この課題を解明すべく検討した。温度感受性増殖特性を示すSV40 largeT抗原遺伝子導入動物を用いて、GISTが発生する消化管各臓器(胃、小腸)の中からGIST起源であるカハール介在細胞からKIT陽性、CD34陽性をソーティングにより分離した。昨年の検討により、SV40 largeT抗原遺伝子導入細胞の特徴である温度感受性(33℃での培養ではSV40 largeT抗原が活性化し不死化するが、37℃では死滅する)胃由来カハール介在細胞株(臨床的に低悪性度)および小腸由来カハール介在細胞株(臨床的に高悪性度)が樹立された。これら細胞株にエクソン11変異c-kit遺伝子およびエクソン11変異およびエクソン17変異c-kit遺伝子を導入した。 その結果、小腸由来細胞株では37℃では死滅するが、エクソン11変異c-kit遺伝子導入細胞では37℃に戻しても死滅せず継代増殖することが確認された。そこでエクソン11変異c-kit遺伝子およびエクソン11変異およびエクソン17変異c-kit遺伝子導入した細胞mRNAを抽出、細胞増殖、アポトーシス関連DNAアレイを用いて、変異KIT蛋白に連動する細胞内情報伝達分子を検討、c-kit遺伝子変異と由来臓器の悪性度関連分子の同定を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記概要に記載したように、計画のすべては実施できていないが、本研究目的を達成する根幹部分の研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)細胞増殖、アポトーシス関連DNAアレイを用いて、小腸GIST細胞株と胃GIST細胞株のKIT蛋白に連動する異なった細胞内情報伝達分子mRNAの増減を検討し、c-kit遺伝子変異型と由来臓器の悪性度に関連する分子をスクリーニングする。 2)上記により明らかにされる変異c-kit遺伝子導入によって大きく変動する細胞内情報伝達分子が同定された場合には、それら分子機能をsiRNA法により抑制し、試験管内での増殖能およびアポトーシス抵抗性に及ぼす効果を検討する。 3)悪性度の高い小腸GIST細胞株をSCIDマウス皮下に移植し、腫瘍形成能を確認する。 4)現在、臨床上、使用可能なイマチニブ耐性克服薬はスニチニブであるが、上記の検討から、変異c-kit遺伝子への二次変異がエクソン17あるいはエクソン18に付加されると耐性克服薬であるスニチニブも無効となる。スニチニブ耐性克服薬の臨床試験からレゴラフェニブの効果が示されているが、その効果と上記解析で明らかにされた新規標的分子との相互作用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)細胞増殖、アポトーシス関連細胞内情報伝達分子の網羅的同定に、DNAアレイを用いる。 2)変異c-kit遺伝子導入によって大きく変動する細胞内情報伝達分子が同定された場合には、それら分子機能を遺伝子導入細胞に標的遺伝子siRNA法により、その機能を抑制し、試験管内での増殖能およびアポトーシス抵抗性に及ぼす効果を検討する。さらに、定量的MSP法により、それらのメチル化レベルを検討する。 3)高悪性度の小腸GIST細胞株をSCIDマウス皮下に移植し、腫瘍形成能を確認する。 4)スニチニブ耐性克服薬の臨床試験からレゴラフェニブの効果が示されているが、その効果と上記解析で明らかにされた新規標的分子との相互作用を検討する。 上記計画1)の一部および2)3)は前年度計画内で実施終了する計画であったが、研究途上にあり、その費用を次年度費用と共に請求した。
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