2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクター感染胃癌マウスにおける骨髄由来細胞とインターロイキン17の役割
Project/Area Number |
23590919
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高石 繁生 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 准教授 (20596829)
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Keywords | 国際情報交換、アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
本研究は、大別して下記の2つの命題について、ヘリコバクター菌感染による胃癌マウスを用いて、解析することを主眼としている。A.ヘリコバクター菌感染による胃発癌における、骨髄由来細胞の役割を明らかにする。B.ヘリコバクター菌感染による胃発癌における、IL-17の役割を明らかにする。 第3年度である平成25年度は、第1・2年度に続いて、研究協力者であるコロンビア大学医学部消化器内科TIMOTHY WANG教授の支援を得て、研究を行った。特にヘリコバクター菌感染によるマウスの胃発癌のメカニズムを明らかにすること、そのために、前庭部胃粘膜上皮の幹細胞マーカーであることが報告されているLGR-5の発現様式を解析することを主眼において、研究を進めた。具体的には、以下の2種類のトランスジェニックマウス(1)(2)を、それぞれ、緑色蛍光タンパク質GFPを組み込んだレポーターマウス(3)と交配させてからヘリコバクター菌を感染させて、胃粘膜の変化を経時的に観察した:(1) ヒトプロガストリン高発現マウス(HGASマウス (2)ヒトアミド化ガストリン高発現マウス(INS-GASマウス) (3)LGR-5プロモーター制御下GFP発現ノックインマウス。その結果、(1)と(3)を交配させたマウスおいては、ヘリコバクター菌の約10-12ヶ月感染後に、胃前庭部に腫瘍が形成され、腫瘍内に多数のGFP陽性細胞が認められた。逆に、(2)と(3)を交配させたマウスおいては、約10-12ヶ月感染後に、胃体部において胃発癌が促進されていたが、胃前庭部においては逆に胃発癌が抑制され、GFP陽性細胞数は不変または減少することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前述の「研究実績の概要」にも記したとおり、本研究は2つのテーマからなるが、今年度はこれらのテーマの一部を遂行したのみである。 テーマAに関しては、種々の遺伝子改変マウスにヘリコバクター菌を感染させて、より効率的かつ早期に胃発癌を生じるマウスモデルを確立しつつある。 テーマBに関しては、研究協力者である東京理科大学・岩倉洋一郎教授(元・東京大学医科学研究所教授)から、下記3種類のノックアウトマウスを一部譲渡して頂き、胃発癌マウスと交配させる予定である。a) IL-17A KOマウス b) IL-17F KO マウス c) IL-17A-IL-17F ダブルKO マウス。(譲渡については同意取得済み) 研究代表者は、科研費申請時の所属先であった九州大学大学院医学研究院グローバルCOE幹細胞研究センターから、平成23年度に学内に新設された九州大学先端医療イノベーションセンターに配置換えとなった。このセンターは平成23年7月に竣工し、事務部門も含めた新体制の陣容が固まるまでかなりの時間を要した。加えて、九州大学大学院医学研究院から独立した組織であるため、動物実験施設は医学研究院付属のものを使用せざるを得ず、平成24年度に続いて、その許可取得の手続きや審議にかなりの手間と時間を要することとなった。 また、一部の研究試料(実験動物を含む)は、他施設からの運搬・輸送が必要である。とりわけ、九州大学大学院医学研究院附属動物実験施設は、他施設からの実験動物受け入れに関して条件が厳しく、凍結胚での搬入および解凍・繁殖操作が必要であり、手間と時間を要することが、研究遂行上での障害である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の「現在までの達成度」にも記したとおり、テーマAに関しては、ヘリコバクター菌感染による胃発癌マウスへの、GFP等の蛍光物質でラベル化された骨髄細胞の移植を今後行う予定であり、これらについて充当されるべき経費は次年度に使用する予定である。 テーマBに関しては、3種類のノックアウトマウスa) IL-17A KOマウス b) IL-17F KO マウス c) IL-17A-IL-17F Double KO マウスを、研究協力者である東京理科大学・岩倉洋一郎教授から譲渡して頂くこととなっている。これらのマウスの搬入は、本来平成25年度中に完了している予定であったが、九州大学大学院医学研究院附属動物実験施設へのマウス搬入が遅れたため、研究実施期間の1年間の延長を要請し、マウスの運搬や九大での繁殖・コロニー維持に関わる費用は、平成26年度に繰り越されることとなった。 本研究で使用する胃癌マウスは、申請書に記載した研究協力者であるコロンビア大学医学部消化器内科Timothy Wang教授が作製または所有する遺伝子改変マウスである。しかし、このマウスは胃癌発症までに約1年間を必要とし、研究を進展させるにはやや時間がかかるのが難点である。 そこで新たな研究協力者として、金沢大学がん進展制御研究所腫瘍遺伝学研究分野・大島正伸教授に加わって頂き、ご自身が作製・開発された、自発的に胃炎を惹起し、約8か月という比較的短期間に胃癌を発症する、複合トランスジェニックマウス K19-Wnt1/C2mEマウス(通称Ganマウス)も、本研究の実験材料として加えることとなったが(大島教授の同意取得済み)、九州大学大学院医学研究院附属動物実験施設への搬入のために凍結胚を作成する必要があり、その作業が遅れたため、このマウスの搬入も平成26年度に持ち越されることとなった。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験材料である遺伝子改変マウスの一部(具体的には、IL-17Aノックアウトマウスなど)については、繁殖状況が良くないため、再度購入し直して、交配・飼育する必要がある。また、当初の計画を部分的に変更して、新たな種類の遺伝子改変マウス(後述のOct-4プロモーター制御下GFP発現トランスジェニックマウスなど)を仕入れることが不可欠と判断したため、事業期間を延長し、現在までに未使用金の助成金を次年度に繰り越す必要が生じた。 胃癌マウスとしては、約8か月という比較的短期間に胃炎と胃癌を発症するK19-Wnt1 /C2mEマウス (通称Ganマウス) を使用する予定である。この遺伝子改変マウスを、前述のノックアウトマウスらと交配させて、胃粘膜の変化を経時的に比較しながら観察することにより、IL-17A, IL-17Fの胃発癌の進展における役割を解析する予定である。 加えて、近年、iPS細胞やSTAP細胞生成の際に、幹細胞マーカーとして報告されているOct-4およびNanog遺伝子の、胃癌における発現様式を解析するため、新たに、Oct-4プロモーター制御下GFP発現トランスジェニックマウスやNanogプロモーター制御下GFP発現ノックインマウス(共に理化学研究所から購入可能)と、上記の胃癌マウスを交配させて、胃発癌における幹細胞の関与も解析する計画である。
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[Journal Article] Progastrin Promotes Antral Carcinogenesis and Gastric Stem Cell Function2013
Author(s)
Yoku Hayakawa, Shigeo Takaishi, Guangchun Jin, Hiroshi Ariyama, Christoph B. Westphalen, Samuel Asfaha, Yagnesh H. Tailor, Wataru Shibata, Xiangdong Yang, Duan Chen, Mark T. Whary, Sureshkumar Muthupalani, James G. Fox, Arthur Shulkes, Timothy C. Wang
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Journal Title
Gastroenterology
Volume: Vol. 144, Issue 5, Suppl. 1
Pages: S-152, S-153
Peer Reviewed
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[Presentation] Progastrin Promotes Antral Carcinogenesis and Gastric Stem Cell Function
Author(s)
Yoku Hayakawa, Shigeo Takaishi, Guangchun Jin, Hiroshi Ariyama, Christoph B. Westphalen, Samuel Asfaha, Yagnesh H. Tailor, Wataru Shibata, Xiangdong Yang, Duan Chen, Mark T. Whary, Sureshkumar Muthupalani, James G. Fox, Arthur Shulkes, Timothy C. Wang
Organizer
Digestive Disease Week,
Place of Presentation
Orange County Convention Center, FL, USA