2012 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌における上皮細胞増殖因子関連新規分子標的遺伝子の機能解析
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23590952
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
小笠原 尚高 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00433219)
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Keywords | 大腸癌 / 遺伝子 |
Research Abstract |
【特異抗体によるヒト正常上皮およびヒト大腸癌における発現の検討】 転写抑制遺伝子ZFP-BAのマウスモノクローナル抗体を用い,免疫組織染色を行いヒト大腸組織での発現意義について検討した. 病理生検にて採取されたヒト正常大腸粘膜上皮における免疫染色では,ZFP-BAは大腸上皮細胞核に発現していた.また,一部,大腸腺底部に存在するパネート細胞にもその発現が認められた.大腸内視鏡検査時に採取あるいは手術にて摘出された大腸癌組織および大腸腺腫組織における転写抑制遺伝子ZFP-BAの発現を検討したところ,前癌病変とされる大腸腺腫細胞ではその発現が認められた.一方,ヒト大腸癌組織においてはその発現は著しく減少していた.さらに, StageI/II大腸癌と比較し,StageIII/IV大腸癌ではその発現はほとんど認められなかった(33.1% vs 7.6%,p<0.05).以上の結果より,転写抑制遺伝子ZFP-BAは大腸発癌における抑制因子として機能しておらず,大腸癌発癌後における大腸癌の増殖・進展にかかわる抑制的な役割を果たしている因子であることが推察された.つまり,大腸発癌とその進展過程において,転写抑制遺伝子ZFP-BAの発現消失が大きく関与していることが確認された. さらに,同様に採取されたヒト大腸癌組織および大腸腺腫組織を用い,ZFP-BA のmRNAとタンパク発現を比較したところ,正常上皮細胞におけるZFP-BAのmRNAとタンパク発現に比べ,癌組織では有意にその発現の低下が見られ,ヒト大腸組織における免疫染色の結果を裏付ける結果となった. また,ZFP-BAの発現と予後(生存期間)との関連を検討したところ,ZFP-BA陰性大腸癌は,ZFP-BA陽性大腸癌と比べ予後不良であった(p<0.05).しかし,抗癌剤による治療効果とZFP-BA発現との関連は今回認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる研究目的である転写抑制遺伝子ZFP-BAのマウスモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色によるヒト大腸癌組織での発現解析は上述のように予定通り順調に行うことができた. しかしながら,昨年度計画されていたZFP-BAとHB-EGF-CTFとの結合領域の解析とレポーターアッセイ系による機能解除の解析については,おおよその結合部位は解明されたものの,いまだ十分な解析ができていないため,今後も引き続き解析を継続する予定である
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Strategy for Future Research Activity |
【転写抑制遺伝子ZFP-BA とHB-EGF-CTFとの結合抑制】 HB-EGF-CTFの核移行抑制と本遺伝子をターゲットとした大腸癌発癌および進展を抑制する分子を検索する予定である.TPAのshedding誘導にてHB-EGF-CTFは核移行するが,その移行を抑制する物質としてKB-R7785が存在する.しかし,KB-R7785はその毒性のため生体投与が不可能であることが過去のマウスを用いた研究から判明している.shedding誘導にてHB-EGF-CTFは核移行しZFP-BAと結合しその機能を抑制するが,このHB-EGF-CTFとZFP-BAとの結合を抑制する物質を検索する予定である.はじめに,High-throughput screening system(Alphascreen®)を用いて,HB-EGF-CTFとZPF-BAとの結合を抑制する可能性のある物質の候補を9000の化学物質ライブラリー (CarnaBioscience Inc., Kobe, Japan)から選別する.大腸癌培養細胞(HT29,HCT116, CaCo2)に対し候補となった新規物質を投与し,HB-EGF-CTFとZPF-BAとの結合が抑制されることを細胞蛍光免疫染色およびレポーターアッセイ系にて確認する.さらにCell Counting Kit8 (CCK-8) (Dojindo Laboratories,Kumamoto, Japan)等を用い,細胞増殖能が抑制されることを検討する.今までの検討で,一部のアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB,高血圧治療薬)によって,HB-EGF-CTFとZFP-BAとの結合が抑制されることが判明し,ZFP-BAの発現低下を抑制することが可能と推察される.生体投与の可能な既存の抗癌剤にかわる新規分子標的薬の開発および臨床応用につなげたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大腸癌培養細胞(HT29,HCT116, CaCo2),候補物質の検索スクリーニングに用いるHigh-throughput screening systemキット(Alphascreen®),細胞増殖能を検討するCell Counting Kit8 (CCK-8キット)等とそれに伴う研究遂行に必要な試薬を購入する予定である.また,HB-EGF-CTFとZPF-BAとの結合抑制を確認するため,FLAG-tagged ZFP-BA,CFP (cyan fluorescein protein)-tagged ZFP-BA等のプラスミドを作成のために本研究費を使用する予定である.細胞蛍光免疫染色およびレポーターアッセイ系を検討するための抗体やそれに伴う試薬,消耗物品を購入する予定である.
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