2011 Fiscal Year Research-status Report
ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌が有する強力な抗炎症効果の作用機序
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23590954
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
岡田 義清 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 助教 (90531137)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | プロバイオティクス / 炎症性腸疾患 / 樹状細胞 / Th17細胞 / 抗炎症性サイトカイン / 乳酸菌 / 発酵食品 |
Research Abstract |
申請者らは、伝統的発酵食品である「ふなずし」より炎症性腸疾患の動物モデルの腸炎に優れた予防・治療効果を有する新規ラクトバシラス属菌菌株を2株、単離した。本菌株は、DSS大腸炎モデルマウスにおいて、乳製品由来のプロバイオティクスであるLactobacillus gasseri(以下、LGと表記)を上回る抗炎症作用を有していた。この強力な抗炎症作用メカニズムを解明するため、DSS大腸炎モデルマウスの大腸および二次リンパ組織(腸間膜リンパ節および脾臓)における免疫細胞の動態を精査した。その結果、本菌株を投与した大腸では炎症性サイトカインであるIL-6やIL-17A産生が、LG投与群に比し大幅に減じていた。一方で、代表的な抗炎症性サイトカインであるIL-10産生はLG投与群と同等であった。興味深いことに、炎症性・抗炎症性の両面を併せ持つサイトカインであるIL-27産生が、LG投与群に比し大幅に増加していた。次に、二次リンパ組織において、T細胞の抗原提示に重要な役割を果す樹状細胞のサイトカイン産生に注目した。IL-10産生は、本菌株投与群およびLG投与群の両群で増加が認められたが、IL-27産生の増加は本菌株投与群のみに認められた。さらに、二次リンパ組織におけるT細胞サブセットの変化を検討した。制御性T細胞のマスター転写遺伝子であるFoxp3発現は本菌株投与群およびLG投与群の間に差異は認められなかった。その一方、IL-17Aを多く産生するTh17細胞のマスター転写遺伝子であるROR-gt発現は、本菌株投与群はLG投与群に比し大幅に減じていた。以上の本年度結果より、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌菌株は、IL-27産生促進およびTh17細胞分化阻止を中心にしてその強力な抗炎症作用を発揮する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌菌株投与による大腸炎症時の大腸および二次リンパ組織における炎症性・抗炎症性サイトカイン産生を精査した。その結果、複数の炎症性・抗炎症性サイトカイン産生を定量し、本菌株に特異的なサイトカイン産生パターンを見出すことができた。また、組織より樹状細胞およびT細胞を単離し、各細胞の炎症性・抗炎症性サイトカイン産生を定量し、同様に特異的なサイトカイン産生パターンを見出した。さらに、本菌株投与による制御性T細胞への影響を明らかにしただけではなく、IL-17Aを多く産生するTh17細胞への本菌株投与特有の影響についても興味深いデータを得ることができた。生態観察による腸管の単球の動態については未実施であり、来年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌は抗原提示に主要な役割を果す樹状細胞に特有の変化を惹起する可能性が示唆された。このため、今後は樹状細胞を中心とした推進方策とする。すなわち、樹状細胞の細胞表面マーカーをフローサイトメトリーにて調べ、本菌株がもたらすであろう特有の表現型の解析を行う。さらに、マウス骨髄細胞より樹状細胞を分化させ、in vitroにて本菌株を暴露することで、本菌株がToll様受容体(TLR)およびその関連細胞内シグナル伝達におよぼす影響を検討する。また、それにより抗炎症作用機序に結びつくであろう制御分子のデータが得られた場合は、遺伝子欠損マウスを用いてのin vivoでの証明を試みる。一方で、本菌株の暴露により樹状細胞の成熟を促し、未熟T細胞と共培養することで、T細胞分化への影響も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の本研究により、643,558円の次年度使用額が生じた。これは、購入予定であった各種の抗体が未購入であったためである。平成24年度においては、この次年度使用額を各種抗体の購入費にあて、フローサイトメトリー解析およびELISA法に用いる。また、平成24年度においては、in vitro試験で使用する各種の細胞培養消耗品、細胞刺激因子などに研究費を使用する。さらに、研究の進捗により、本研究の柱であるふなずし由来新規ラクトバシラス属菌の強力な抗炎症効果のメカニズムを制御する分子群が判明した場合は、その分子群の遺伝子欠損マウスを研究費にて購入する予定である。
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Research Products
(2 results)