2015 Fiscal Year Research-status Report
ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌が有する強力な抗炎症効果の作用機序
Project/Area Number |
23590954
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
岡田 義清 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他部局等, 助教 (90531137)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 消化器内科 / プロバイオティクス / 炎症性腸疾患 / 樹状細胞 / Treg細胞 / 炎症性サイトカイン / 乳酸菌 / 発酵食品 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、伝統的発酵食品である「ふなずし」より炎症性腸疾患の動物モデルに優れた予防・治療効果を有する新規ラクトバ シラス属菌菌株を2株、単離した。本菌株は、DSS大腸炎モデルマウスにおいて、乳製品由来のプロバイオティクスであるLactobacillus gasseri(以下、LGと表記)を上回る抗炎症作用を有していた。 平成27年度においては、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌株(以下、本菌株と表記)の自然免疫系細胞およびTリンパ球への影響を、引き続き詳細に検討した。その結果、本菌株をin vitroにて作用させた骨髄由来樹状細胞は、炎症性サイトカイン産生がLG作用群に比し有意に低下することに加え、培養上清中に活性化型TGF-betaを有意に産生していた。 本データにより、本菌株群は未成熟樹状細胞に対し特徴的な形質変化を惹起することが推察された。そこで、骨髄由来樹状細胞に本菌株を作用させることで得られた成熟樹状細胞を、未熟T細胞(ナイーブT細胞) との共培養に供した。その結果、本菌株をin vitroにて作用させた骨髄由来樹状細胞は、LG作用群に比しTreg細胞の代表的なマスターレギュレーターであるFoxp3遺伝子発現を未熟T細胞に対し有意に発現せしめ、さらにその細胞においては抗炎症性サイトカインIL-10産生が亢進している事が認められた。これらの結果より、本菌株は樹状細胞をはじめとする抗原提示細胞に直接的に作用し、ユニークな形質変化を惹起することが明らかとなった。さらに、それらの樹状細胞は大腸固有粘膜層におけるTリンパ球サブセットに影響をおよぼすだけではなく、in vitroにおいて特徴的なT細胞分化を惹起する可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌菌株の自然免疫系細胞およびTリンパ球の影響を引き続き、詳細に精査した。その結果、複数の炎症性・抗炎症性サイトカイン産生量をタンパクレベルで定量した。これより、本菌株を作用させることで、特異的な形質変化を樹状細胞に惹起させることが示された。さらに、in vitroにて本菌株を作用させた樹状細胞は、未熟T細胞(ナイーブT細胞) を特徴的なサブセットに分化誘導する可能性が示された。このサブセットは制御性Tリンパ球と考えられる特徴を複数有していることが確認された。以上のデータは、 新規ラクトバシラス属菌がもつ強力な抗炎症作用と特異的な性質の解明にむけての順調な進捗を示している
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌はT細胞分化に主要な役割を果たす樹状細胞に特有の形質変化を惹起し、未熟T細胞(ナイーブT細胞) を特徴的なサブセットに分化誘導する可能性が示された。このため、今後は本菌株を作用させた樹状細胞におけるT細胞分化に関与する分子群の分析および本菌株を作用させた樹状細胞が大腸炎に対し抗炎症効果を発揮する際の動態解析を中心とする推進方策とする。すなわち、マウス骨髄細胞または大腸固有粘膜層より樹状細胞を単離および分化させ、制御性T細胞の分化誘導の鍵となる分子群の検索を行う。さらに、その分子群に対する抗体または阻害剤を用いて抗炎症効果の確認を行う。
|
Causes of Carryover |
平成27年度においては、本研究に必要と考えられる多くの試薬等が購入できた。このため、次年度使用額は3,949円となっている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では、前年度に購入済みの試薬等で十分な進捗が可能と考えられる。次年度使用額は文房具等に充てる予定である。
|