2012 Fiscal Year Research-status Report
炎症・ウイルス感染環境下での肝構成細胞の免疫・代謝応答の解析
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23590970
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石川 哲也 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10288508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石上 雅敏 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90378042)
上山 純 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00397465)
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Keywords | ケモカイン / サイトカイン |
Research Abstract |
肝細胞を始めとする肝構成細胞が、炎症・免疫応答にどのように反応し、その後の炎症・免疫、代謝などの生体応答にどのような影響を与えるかを解析する目的で、それぞれの肝構成細胞をin vitro での炎症刺激による擬似肝炎環境下におき、ケモカイン/サイトカイン、自然免疫関連分子群、細胞内蛋白・脂質代謝への影響を解析することを計画した。これにより、これまで個体レベルで総和としてみていた肝炎という現象を、細胞レベルで詳細に解析することを目的とした。 まずは、肝癌細胞株における炎症刺激に対する免疫応答の解析と至適刺激条件の決定を行うために、3種の肝癌細胞株(HepG2、Huh7、Hep3B)を用い、炎症性サイトカイン刺激下での、ケモカイン/サイトカイン発現に及ぼす影響を解析した。 細胞刺激にはIL-1α、TNF-α、IFN-γ、IL-4、IL-10、TGF-βを単独あるいは組み合わせて用い、ケモカイン/サイトカイン遺伝子発現をreal-time PCRで解析した。 HepG2、Huh7、Hep3Bとも、IL-1α刺激によるIL-8、IP-10発現の増強、IFN-γ刺激によるMig発現の増強、TNF-α刺激によるIL-8、IP-10、RANTES発現の増強など、共通の反応パターンが確認された。一方、IL-1α刺激によるMDC、TARCの発現増強がHuh7でのみ認められるなど、細胞間の反応パターンの違いも確認された。また、無刺激状態では、Hep3Bがサイトカイン/ケモカインを高発現しているのに対し、HepG2は発現量が低く、Huh-7はその中間のパターンを呈していた。Hep3Bにおいては、種々のサイトカイン刺激に対する反応性が低い傾向にあり、これは定常状態(無刺激)におけるサイトカイン/ケモカインの高発現が影響していることが示唆された。現在、不死化ヒト肝細胞株を用いた比較実験を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝癌細胞株間でのサイトカイン/ケモカイン発現パターンの差異、各種炎症刺激に対する反応の差異が確認されたことより、新たに不死化ヒト肝細胞株を用いた実験を実施している。これにより当初予定した計画から遅れが生じた。 実施が遅れている研究内容は、①自然免疫関連分子群の発現の解析、②培養上清中のケモカイン/サイトカインの蛋白量の解析、③被刺激肝細胞における蛋白・脂質代謝に関する解析、④ヒト初代肝細胞、類洞内皮細胞、星細胞を用いた解析などである。 現状での達成度は当初の計画の6割程度と考えられるが、③、④について、より生理的な状態に近い不死化ヒト肝細胞株を中心に解析することにより、研究のスピードアップを図ることができると考えている。既に解析用サンプルを作成済みのものもあるため、平成25年度の研究計画に組み入れての実施を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の遅れもあり、平成23~24年度に計画されていた①自然免疫関連分子群の発現の解析、②培養上清中のケモカイン/サイトカインの蛋白量の解析、③被刺激肝細胞における蛋白・脂質代謝に関する解析、④ヒト初代肝細胞、類洞内皮細胞、星細胞を用いた解析については、主目的である肝細胞による免疫応答の修飾についての解析、つまり①、②を先行して実施することとする。また、特に③、④については、ヒト不死化肝細胞株を中心に実験を計画するが、解析内容については大きな変更は考えていない。平成25年度の研究計画となっている⑤HBV・HCV遺伝子導入肝癌細胞株における解析については、既に細胞株は入手済みであり、親株となるHuh-7、HepG2の解析もある程度進んでいるため、予定通りの実施を計画する。⑥ケモカイン標的siRNAが細胞の炎症刺激への反応に与える影響の解析については、⑤の結果を勘案し、若干、予定を変更する場合もある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、細胞株の購入費用に約20万円、消耗品費(real-time PCRなど分子生物関連試薬、培養関連試薬・機器、ELISAキット、臨床検査試薬など)に約80万円、学会出張旅費、論文作成費用に約20万円を充てる予定である。
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