2011 Fiscal Year Research-status Report
新規の致死性自己免疫性肝炎モデルを用いた肝炎劇症化に関わる腸内細菌免疫応答の解析
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23590973
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡部 則彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50419446)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 内科学 / 肝臓病学 / 免疫学 / 劇症肝炎 / 自己免疫性肝炎 / 消化管免疫 |
Research Abstract |
劇症肝炎モデルとして、新生児胸腺摘除を行うことで致死性の自己免疫性肝炎を発症するBALB/c系統のPD-1遺伝子欠損マウスを用いて、劇症肝炎の免疫学的病態形成機構の解析を行った。この劇症型肝炎は約2週齢で発症し、約3週齢で重症化し、約4週齢までに多くが死に至るが、免疫組織学的解析とフローサイトメトリー解析などから、劇症期の肝炎組織では、T細胞、特にCD8+T細胞が優位に浸潤しており、肝炎発症後に抗CD8抗体を経時的にin vivoに投与すると、末梢のCD8+T細胞が除去され、CD4+T細胞は遺残するもののCD8+T細胞の肝浸潤が消失し致死的な肝細胞障害が抑制されることが明らかとなった。さらに、肝炎劇症期には、このモデルでの肝炎の病態誘導の場である脾臓と炎症の場である肝臓いずれにおいても、T細胞はt-bet発現が上昇しており、IFN-γ、IL-18受容体、CXCR3の発現増加が認められ、肝組織では、CXCR3のリガンドの一つであるCXCL9の発現上昇を認めた。そして、抗CXCL9中和抗体をin vivoに投与すると肝炎の劇症化が抑制でき、CXCR3発現細胞のCXCL9に依存した肝への移行が肝炎劇症化に必須であることが明らかとなった。次に肝炎劇症化に必要とされる炎症性サイトカインの同定を行った。このモデルにおいて、肝炎劇症化にともない、血清IL-18濃度が上昇しており、炎症性サイトカイであるIFN-γ、IL-1β、 IL-6、IL-12、IL-18の活性中和抗体のin vivo投与を行うと、抗IL-18受容体抗体でのみ劇症肝炎を阻止できた。そして、IL-18受容体抗体投与では脾臓での自己反応性T細胞活性化そのものは抑制できないが、CXCR3発現T細胞増加が抑制されることで、肝炎劇症化が阻止されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝炎劇症化に関わる腸内細菌免疫応答の解析のために、まず肝炎劇症化免疫機構の解明を目指して、劇症肝炎モデルにおいて、劇症化に関与し、その病態機構に重要な転写因子、サイトカイン、ケモカインとその受容体の同定を行うことを目的として研究をすすめた。その結果、転写因子としてt-bet、サイトカインとしてIFN-γ、IL-18、ケモカインとその受容体としてCXCL9-CXCR3のケモカイン-ケモカイン受容体系の関与の可能性を見いだし、IL-18―IL18RシグナルとCXCL9-CXCR3のケモカイン-ケモカイン受容体系が劇症化に必須であることを示し得た。以上の結果から、当初予定していた研究はほぼ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き劇症肝炎モデルを用いて、その病態形成機構と腸内細菌に対する消化管免疫応答の関与の解明を目指して免疫学的、細菌学的解析を継続する。肝組織中のToll-like受容体リガンドの定量と、免疫担当細胞でのToll-like受容体の発現解析を行い、肝炎劇症化に関与する細菌因子について検討する。また、劇症化に関与するCD8T細胞とその分化誘導に関わる免疫担当細胞を単離し、ex vivoでの培養系などにて、CD8T細胞との相互作用、活性化誘導、組織への移行、細胞障害性の獲得などに必須の分子群を同定し、その免疫応答過程を明らかにする。一方、消化管常在細菌の多くは培養できないため、このモデルでの消化管常在細菌のマイクロバイオーム解析を行う。また、分離培養定量化が可能な既知細菌に関してはその培養定量を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、実験の信頼性を高めるために必要なcell sortingによる組織からの免疫担当細胞の高純度精製、細胞組織の免疫染色、フローサイトメトリー解析などに用いる精製抗体、磁気ビーズ、蛍光標識抗体、染色試薬が必要である。また、高感度で安定した結果が得られるケモカイン、サイトカイン対するELISA試薬や、細胞・組織からRNA、DNAを抽出する試薬、Real-time PCR、マイクロバイオームのための試薬が継続して必要でありこれらの購入費として使用する。また、腸内細菌解析とそれに関する免疫機序の解析実験が主となるため、マウスはSPFの環境で保持し飼育する必要があり、実験によっては無菌施設、P2施設での飼育、他施設へ輸送しての飼育管理維持も必要であり、これらの飼育費用などに継続的に使用する。さらに、論文の校正、投稿費用、学会発表のために参加費、旅費も必要であり、これら研究継続に必要な経費の支払いに使用する。なお、標本作製を継続的に依頼し、役務費として支出しているが、本年度中にすべての標本が作製できなかったため、次年度に41,000円を繰り越し、使用する予定である。
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