2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性肝疾患進展制御法の確立:効果予測に基づく個別化医療
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23590986
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉治 仁志 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40336855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 隆一 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (30423908)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カクテル療法 |
Research Abstract |
今年度は肝線維化進展抑制に関するカクテル療法について動物モデルを用いて生体内における有効性を確認すると共に作用機序について詳細な検討を加えた。我々はこれまでに、Angiotensin-II受容体阻害薬 (ARB) などによるレニンアンジオテンシン系ブロックが肝線維化抑制につながることや、IFN抵抗例にACE-Iと低用量IFNの併用が抗線維化作用を示すことを報告してきた。今回は、リバビリン(RVB) を加えることでより強い抗線維化作用が認められるか否かについて作用機序を含めて検討した。四塩化炭素によるマウス実験的肝線維症を作成し、ARB (losartan: 30mg/kg)投与群、IFN (IFN-α: 1x 104 IU/週2回) 投与群、RVB (10mg/kg) 投与群、2剤併用群 (ARB+IFN、ARB+RVB、IFN+RVB)、3剤併用群 (ARB+IFN+RVB)、およびコントロール (C) 群の8群に分け各種検討を行った。その結果、ARB、IFN、RVB各群共にC群に比し肝線維化が有意に抑制された。二剤併用投与では単剤投与より線維化抑制効果が強く、三剤全てを投与した群において最も強い線維化抑制効果が認められた。また、肝における活性化肝星細胞(Ac-HSC)数、TGF-β 産生の増加は各薬剤投与により抑制され、これらの変動は線維化抑制の程度に相応していた。In vitroの検討でも、Ac-HSCの増殖およびTGF-β 産生はARB、IFN、RVB存在下で抑制され、三者共存下で最も強く抑制された。以上のことから、強力な抗ウイルス療法が困難な例やウイルス陰性化を望めない臨床例に対する予後改善を目指した治療として有用である可能性が示唆された。なお、本研究は各専門学会で発表すると共に英語論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画の通りに進捗している。既存薬剤によるカクテル療法に関しては、先に述べたように本年度は実験的肝線維化モデルを用いて基礎的検討を行い、臨床応用に可能な成果を得た。分子標的治療薬を用いた検討についてはSorafenib (SORA) の有害事象が用量依存性であることに注目し、低用量SORAとARBの併用効果について血管新生との関連を中心に検討した。その結果、血管内皮細胞の管腔形成はSORA、ARB処置群で対照群に比し抑制されており、併用群ではさらに強い抑制効果が認められることを確認した。治療効果予測のためのバイオマーカー検討については、これまでの研究で明らかにしてきたARBと分枝鎖アミノ酸製剤 (BCAA)併用による肝癌再発抑制について血管新生因子探索アレイを用いて有力な候補を絞り込んでいる。現在のところ、VEGF関連因子としては可溶性VEGFR2が鋭敏なマーカーとなり得る可能性がある。同じVEGFの受容体であるVEGFR1の可溶性フォームについては再発群と非再発群で著変を認めておらず治療効果判定のマーカーとしては使用困難であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は in vitro で得られた成果に基づいてin vivo での検討を中心に解析を行う。肝線維化進展に及ぼす影響について、本年度の研究で得られた成果が普遍的であるか否かについてブタ血清モデルを用いて検討を行う。全ての薬剤は臨床用量に匹敵する低用量で連日投与とし、単独投与および併用投与群について経時的に肝線維化の進展および肝線維化に関わる因子について複数の視点から検討を加える。線維化評価項目としては、イメージアナライザーによる定量に加えて collagen 量などについても検討する。活性化肝星細胞に対する作用としては α-SMA 免疫染色、TGF-β などを測定する。なお、IR抵抗性条件下における検討は IR条件を呈するOLETFラットを用いて解析を行う。また、Rib の血管新生阻害効果については、未だ作用機序が明らかではないので、各種実験モデル (Tubular formation, MTT など) を用いて VEGF 発現に及ぼす影響など作用機序の解析を含めた検討を加える。ECについては細胞の種類により血管新生反応が異なることも報告されているので、類洞内皮細胞に関しても分離して検討を行う。類洞内皮細胞分離については昨年までの基盤研究で購入している磁気ビーズによるsorting system (MACS) によりCD146を指標として分離して各種解析を行う。分子標的治療薬との併用に関しては、非環式レチノイド (ペレチノイン) についても同様の検討を加えると共に、これまでに報告されている抗アポトーシス作用などに対する相乗効果についても解析を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
それぞれの研究課題に関して、上記で述べた実験計画に基づいて培養細胞実験に必要な器具および動物購入などに使用する。臨床的検討については、本学臨床審査委員会の承認下に行っているので継続的に遂行していく。なお、全ての臨床研究に関しては保険診療範囲での治療を行うため新規薬剤購入費などは生じない。また本研究の成果については、各種国内および国際学会にて発表し、成果がまとまった段階で可及的速やかに英語論文として世界の研究者に発信する。
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