2011 Fiscal Year Research-status Report
ガンキリンのプロテアソーム制御機構を利用した展開医療研究
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23590998
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
櫻井 俊治 近畿大学, 医学部, 講師 (90397539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ガンキリン |
Research Abstract |
HBx promoter/enhancerを使用したガンキリントランスジェニックマウスは生後10か月の時点で血管肉腫様の腫瘍が出現した。また、化学発癌剤であるdiethylnitrosamine (DEN)を2週齢の雄に投与すると、8か月後に高分化肝細胞癌を認め、トランスジェニックマウスでコントロールマウスに比べてその腫瘍数と腫瘍サイズが有意に亢進した。SAP promoterを使用したトランスジェニックマウスにおいても同様に、DEN投与後の肝発癌が亢進した。 ヒト肝細胞癌の生検サンプルよりRNAを抽出しqRT-PCRを行った。ガンキリンの発現量とvascular endothelial growth factor (VEGF)の発現量との間に正の相関を認めた。このことはガンキリンが血管新生を介して肝発癌に関わっていることを示唆している。 肝癌細胞株を用いて実験を行った。ガンキリンは検討したすべての細胞株で発現が亢進していた。siRNAにてガンキリンの発現を低下させると、VEGFの発現が低下した。epitherial mesenchymal transition (EMT)は癌細胞の浸潤、転移に重要な病態と考えられている。ガンキリンは、TWIST, SNAILなどEMTに関わる遺伝子発現に影響があった。一方で、ガンキリンknock-downによるNF-kB, MAPKへの影響は限定的であった。 MAPKの一つであるp38は肝発癌に重要である。p38alpha floxed mouseとAlbumin-Creトランスジェニックマウスを交配すると、肝細胞だけでなく幼若な細胞においてもp38alphaが欠損する。このconditional KO mouseにおいて、DEN投与後、ガンキリンおよび幹細胞の分子マーカーであるSOX2の発現が亢進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAG promoterの下流でガンキリンのN端にloxP配列に挟まれたstop codonsが配置された配列をもつマウスを作製した。Creトランスジェニックマウスと掛け合わせることで、組織特異的にガンキリンを高発現させることができる。このマウスを用いて、TAA, DENによる肝障害、慢性肝炎、肝発癌へのガンキリンの影響を検討することが可能となった。 HBx promoter/enhancer、SAP promoterトランスジェニックマウスを用いた実験の進展を認め、ガンキリンがin vivoにおいて肝発癌に関わっていることが示唆された。その分子機序として、ヒトの組織を用いた実験によりVEGFを介する血管新生が関与していることがわかった。またガンキリンの幹細胞における機能、EMTへの影響について示唆に富むデータが得られ、今後、炎症からの発癌、癌の浸潤、転移ついての研究を進めていくうえで重要な成果であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2種類のガンキリンのconditional knockout mice(肝実質細胞特異的欠損マウス、肝実質細胞および炎症細胞における欠損マウス)およびトランスジェニックマウスを用いて、concanavalin A (conA), DENによる肝障害におけるガンキリンの役割を調べる。thioacetamide (TAA)を2か月以上投与することで、肝線維化、肝硬変を発生させ、慢性炎症、線維化におけるガンキリンの役割を検証する。ALT測定、ELISAなどの血清学的検討およびHE染色、シリウスレッド染色、TUNEL染色など組織学的検討を行う。肝障害とりわけネクローシスと炎症、組織線維化および発癌は密接に関係しており、ガンキリンの組織恒常性維持における役割を検討することで発癌の分子機序解明が可能になると考える。 上記マウスとメチオニン、コリン欠乏食を使用して、NASH発生メカニズムの解明を行う。NASHの成因の一つであるインスリン抵抗性と活性酸素類(ROS)の蓄積には互いに関連がある。ガンキリンのROSへの影響について、マウス肝臓組織と、抗8-OHdG抗体による免疫染色、OxyBlot protein oxidation kitを用いて検討する。 発癌において重要な役割を果たしている癌幹細胞とガンキリンとの関係について検討する。DEN, TAA投与後のマウス肝臓組織を用いて、SOX2, NANOG, OCT4, BMP4などの幹細胞性の維持に必要な分子の発現量、肝癌幹細胞マーカーであるCD90, CD133陽性細胞の割合をWestern Blot, qRT-PCR、免疫染色およびFACSにより検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用予定の研究費により、胆管結紮および薬剤(TAA, carbon tetrachloride)を用いた肝線維化の実験およびガンキリンのインスリン抵抗性、ROS産生への影響についての実験を行う。マウスの飼育費および線維化導入薬剤、血糖測定機器、OxyBlot protein oxidation kitなどの酸化ストレス測定試薬の購入のために使用する。 ガンキリンにより制御される癌関連遺伝子を同定する。4週齢のガンキリン transgenic mouse、conditional knock-out mouse、control mouseにDEN(100 mg/kg)を投与し、4時間後に肝組織を摘出し、microarrayにて遺伝子発現の違いを調べる。同定した遺伝子を細胞株に発現させ、TNFalpha刺激による細胞死、細胞増殖、コロニーアッセイによる足場非依存性細胞増殖を検討し、発癌に重要な遺伝子を絞り込む。 FLAGタグで標識したガンキリン蛋白を、薬剤(テトラサイクリン)誘導型発現制御可能なプラスミドで全細胞に安定に発現させ、抗FLAG抗体を用い、共免疫沈降を行い、ガンキリン蛋白複合体を回収し、二次元電気泳動で分離した後、微量蛋白スポットを質量分析し、データベースと照合して蛋白質を同定する。更に、プロテインアレイ、yeast two-hybrid screeningを用いてガンキリンと相互作用を有する蛋白質を網羅的に解析する。
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Research Products
(5 results)