2012 Fiscal Year Research-status Report
ガンキリンのプロテアソーム制御機構を利用した展開医療研究
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23590998
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
櫻井 俊治 近畿大学, 医学部, 講師 (90397539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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Keywords | ガンキリン / 癌幹細胞 / JNK / EMT |
Research Abstract |
多くの肝癌は慢性炎症による組織の線維化を背景に発癌し、この過程において活性酸素種(ROS)の蓄積およびその下流分子JNKが重要な役割を果たしている。Thioacetamide (2.5%)をマウスに10か月間経口投与することで、慢性肝炎、肝線維化を経て肝細胞癌ができることを見出した。TAA投与による慢性肝炎において、ROS依存性にc-Jun/JNK 経路の活性化およびstemness factorSOX2の発現が亢進し、またROS非依存性にガンキリンの発現が亢進し、発癌に貢献する(Sakurai et al 2013)。ヒト癌組織においてガンキリンとVEGFの発現量との間に有意な相関を認め、癌細胞株においてガンキリンがVEGF, stemness factor Nanogの発現を促進し、VEGFはNanogの発現を直接制御することを確認した(Lui et al 2012; Mine et al 2013)。ガンキリンが幹細胞の増幅を制御している可能性がある。 ストレス応答蛋白は外界からの刺激に対して生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。HSP27はROSの蓄積を阻害し、肝発癌を抑制し(Sakurai et al 2013)、一方でepethelial mesenchymal transition (EMT)及び癌の脱分化に関与する可能性がある(Nagata et al 2012)。 分子標的薬ソラフェニブ治療前に肝生検にて採取した肝組織を用いた検討にて、治療抵抗性に関わる遺伝子を検討した肝癌患者におけるソラフェニブ治療抵抗性および予後と癌幹細胞マーカーであるCD133の発現量との間に相関があり、治療抵抗性の獲得における癌幹細胞の重要な関与が示唆された(Hagiwara et al 2012)。JNK活性がソラフェニブ治療抵抗例で高い傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HBx promoter/enhancer、SAP promoterトランスジェニックマウスを用いて、ガンキリンが肝血管腫形成に重要な役割を果たしていることを見出した。その機序として、ガンキリンはhypoxia-inducible factor-1 (HIF-1) を活性化し、vascular endothelial growth factor (VEGF)の発現を亢進させる (Liu et al Biochem Biophys Res Commun 2013)。またガンキリンはstemness factor Nanog, Oct-4の発現を亢進させ、癌幹細胞の増殖に深く関与する。VEGFは血管新生を促進するだけでなく、stemness factorの発現を亢進させることで発癌促進に関わっていることが示唆された(Mine et al 2013)。 TAAをマウスに10か月経口投与することで、慢性肝炎、肝線維化を経て発癌することを見出した。このマウスモデルは慢性炎症からの発癌の機序を考察するうえで有用であると考える。このモデルにおいてガンキリンがROS非依存性に発現が亢進する(Sakurai et al Cancer Res 2013)。Albumin-Cre, Mx-1-Creトランスジェニックマウスを用いて2種類のガンキリンのconditional knockout mice(肝実質細胞特異的欠損マウス、肝実質細胞および炎症細胞における欠損マウス)を既に作成し、diethylnitrosamine (DEN)およびTAAも投与済みで、間もなく発癌に関するデータがすべて出そろう状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性炎症を伴う肝臓において、ROS非依存性に癌遺伝子産物ガンキリンの発現が亢進する(Sakurai et al Cancer Res 2013)。ガンキリンはプロテアソームの必修構成要素であり(Saeki et al., Cell 2009)、プロテアソーム機能を制御することでNF-kB, p53, Rbなどを介する発癌シグナルを調節する。またNanog, Oct4などのstemness factorやVEGFの発現を亢進させることで、癌幹細胞の増殖を制御することを報告した (Mine et al Dig Dis Sci 2013)。プロテアソームとNASHの関連が報告されており(Wing SS, BMC Biochem 2008; Chang et al., Metabolism 2009)、プロテアソームの機能解析が肝発癌の病態解明に貢献すると考えられている(Henry et al., Gut 2009)。2種類のconditional KOマウスとメチオニン、コリン欠乏食を使用して、NASH発生におけるガンキリンの肝実質細胞、炎症細胞における役割を各々解明する。又ヒトNASH肝生検サンプルおよびコントロールとして転移性肝癌の手術サンプルを用いて、ガンキリンとNASH、プロテアソームとの関連についてqRT-PCR, Western blot, FACS, 免疫染色により解析する。ヒト血清でのガンキリン発現量と肝臓癌の臨床的特徴および分子標的薬ソラフェニブの治療効果との関連についても検討する。癌幹細胞とプロテアソームに焦点をあてながら、炎症から発癌におけるガンキリンの機能を解明し、新しい治療、診断法の開発を目指していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ガンキリンのインスリン抵抗性およびNASHへの影響をマウスモデルおよびヒトサンプルを用いて解析する。組織の炎症、線維化には肝Kupffer細胞および星細胞が重要な働きを果たしている。Mx-1-Creトランスジェニックマウスにて肝Kupffer細胞および星細胞で目的の遺伝子が欠損することを示した(Sakurai et al 2008; Sakurai et al 2011)。KOマウスおよびコントロールマウスより肝Kupffer細胞および星細胞を単離し、サイトカイン、ケモカイン、コラーゲン産生、細胞増殖へのガンキリンの影響を検討する。 ガンキリンにより制御される癌関連遺伝子を同定する。ガンキリンをbaitとするyeast two hybrid screeningを施行する。そこで得た候補分子との結合を免疫沈降を用いて哺乳類細胞株で確認し、ガンキリンとの結合による下流シグナルの変化を解明する。同定した分子およびガンキリンを強発現およびノックダウンし、TNFalpha刺激による細胞死、細胞増殖、Sox2, Nanogなどstemness factorの発現への影響、コロニーアッセイによる足場非依存性細胞増殖、TGFb, HGFなどの刺激下でのEMTへの影響を検討し、発癌に関わるシグナル経路を絞り込む。 マウスの飼育費、細胞培養関連試薬、メチオニン、コリン欠乏食、血糖測定機器、EMT誘導試薬、血清ガンキリン値測定のためのアルブミン除去試薬、プライマー、抗体の購入のために次年度研究費を使用する。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] FGF3/FGF4 amplification and multiple lung metastases in responders to sorafenib in hepatocellular carcinoma.2013
Author(s)
Arao T, Ueshima K, Matsumoto K, Nagai T, Kimura H, Hagiwara S, Sakurai T, Haji S, Kanazawa A, Hidaka H, Iso Y, Kubota K, Shimada M, Utsunomiya T, Hirooka M, Hiasa Y, Toyoki Y, Hakamada K, Yasui K, Kumada T, Toyoda H
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Journal Title
Hepatology
Volume: 57
Pages: 1407-15
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Heat shock protein 27 expression is inversely correlated with atrophic gastritis and intraepithelial neoplasia.2013
Author(s)
Nagata Y, Kudo M, Nagai T, Watanabe T, Kawasaki M, Asakuma Y, Hagiwara S, Nishida N, Matsui S, Kashida H, Sakurai T
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Journal Title
Dig Dis Sci.
Volume: 58
Pages: 381-388
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Quantification of tumor DNA in serum and vascular invasion of human hepatocellular carcinoma.2013
Author(s)
Nishida N, Arizumi T, Takita M, Nagai T, Kitai S, Yada N, Hagiwara S, Inoue T, Minami Y, Ueshima K, Sakurai T et al
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Journal Title
Oncology
Volume: 84
Pages: 82-87.
DOI
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[Journal Article] Assessment of Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI for HCC and dysplastic nodules and comparison of detection sensitivity versus MDCT.2012
Author(s)
Inoue T, Kudo M, Komuta M, Hayaishi S, Ueda T, Takita M, Kitai S, Hatanaka K, Yada N, Hagiwara S, Chung H, Sakurai T, et al
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Journal Title
J Gastroenterol
Volume: 47
Pages: 1036-1047
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Risk of hepatocellular carcinoma development in cases of hepatitis C treated by long-term, low-dose PEG-IFNα-2a.2012
Author(s)
Nishida N, Arizumi T, Hayaishi S, Takita M, Kitai S, Yada N, Hagiwara S, Inoue T, Minami Y, Ueshima K, Sakurai T,
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Journal Title
Dig Dis
Volume: 30
Pages: 547-553
DOI
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[Journal Article] Gender differences in the livers of patients with hepatocellular carcinoma and chronic hepatitis C infection.2012
Author(s)
Nishida N, Arizumi T, Hayaishi S, Takita M, Kitai S, Yada N, Hagiwara S, Inoue T, Minami Y, Ueshima K, Sakurai T et al
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Journal Title
Dig Dis
Volume: 30
Pages: 547-553
DOI
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