2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒトTCF-4アイソフォームによる造腫瘍能獲得は低酸素依存性である
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23590999
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
古賀 浩徳 久留米大学, 医学部, 講師 (90268855)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Wntシグナル |
Research Abstract |
平成23年度は、低酸素環境における「SxxSS」モチーフの役割について検討した。すなわち、モチーフを欠くTCF-4Jと、それを有するTCF-4Kを過剰発現させたヒト肝癌細胞(それぞれJ細胞、K細胞と呼称)の形質が低酸素状況下でどのように異なるか、およびその機序に焦点を当てた。これまでに、1)低酸素環境においては「SxxSS」モチーフの欠失が、HIF-1αおよびHIF-2α蛋白の発現を増強させるということ、2)J細胞はK細胞よりも有意に低酸素下での増殖能が高いということ、3)J細胞はヌードマウスにおいて強い造腫瘍性を発揮することが明らかになった。とくにHIF-2α下流シグナル分子と考えられているEGFRの発現がJ細胞で増強していたことが明らかになり、J細胞は機能的にもTGF-αなどEGFRリガンドに対する高反応性を示した。EGFRの下流としてSTAT3系の活性化が誘導されたが、JAK/STAT3阻害剤のみでは細胞死を惹起させることはできず、Erk1/2やPI3K/Aktシグナル伝達系の関与も示唆された。一方、K細胞の増殖はJ細胞に劣るが、「SxxSS」モチーフのS→A改変でK形質がJ型へ転換しないかどうかの検討を引き続きおこなっている。これと、β-catenin binding siteを欠失させたΔTCF-4JとΔTCF-4Kの作成が完了したので、上記「SxxSS」の役割がβ-catenin依存性であるかどうかを検討も開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、研究はおおむね順調におこなわれているが、SxxSSモチーフのどのセリン残基をアラニンへ変異させたものがJ型の特徴を持つのかについては、さらなる詳細な検討を要する。また、ΔTCF-4JとΔTCF-4Kとの比較もさることながら、薬剤によるβ-catenin/TCF-4結合阻害が興味深い細胞形質に関係していることがわかり始めているので、その点についての検討に労力を注いでいることも関係している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初申請通りの方向性に変更はない。すなわち、「SxxSS」モチーフにかかわるリン酸化酵素/脱リン酸化酵素の検討に移りたい。とくに、「SxxSS」をリン酸化修飾する責任キナーゼの候補として、NLKについて深く検討したい。NLKとの共発現によるTCF-4のバンドシフトに着目し、そのシフトがどのTCF-4K mutantでキャンセルされるかでスクリーンするところから始める。また免疫沈降、2次元電気泳動などにより、TCF-4Kとは会合するが、mutant K(例えばS269A、S272A、S273A)とは会合しない分子をプロテオミクスにより網羅的に解析することも平行しておこなう。 また、薬剤によるβ-catenin/TCF-4結合阻害によってK細胞の形質が変化する可能性が示唆されているので、その点に関しても検討を加えていく。場合によっては上記網羅的解析より、「SxxSS」モチーフ依存性細胞形質の解析に有用な方法である可能性もあり、その場合にはプロテオミクスに優先して阻害実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費1,220,000円、間接経費360,000円を使用し、上記課題の遂行と逐次研究成果の発表を学会および論文によりおこないたい。直接経費は主として研究試薬等の購入に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)