2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトTCF-4アイソフォームによる造腫瘍能獲得は低酸素依存性である
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23590999
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
古賀 浩徳 久留米大学, 医学部, 講師 (90268855)
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Keywords | Wnt / TCF-4 / 低酸素 / リン酸化 |
Research Abstract |
平成24年度はTCF-4 isoform K型に存在する「SxxSS」モチーフのセリン残基のリン酸化に関与する酵素を同定することを主たる目的としていた。当初の予想ではNLKが主たる役割を果たしていると考えていたが、その後の検討でHIPK2 (Homeodomain-interacting protein kinase 2)が関与していることが示唆された(論文投稿中)。最も顕著にリン酸化による修飾を受けやすいのは「SxxSS」先頭の269番目のserine (S269)であり、この部位はTCF-4蛋白自体の安定性に深く関与していることがわかった。また、TCF-4 isoform過剰発現肝癌細胞の抗癌剤耐性機序の予備実験において、TCF-4がBcl-xL遺伝子のプロモーター領域に結合することがChIPアッセイで確かめられ、このS269がその結合力を制御し、結果としてBcl-xL発現を制御している可能性が示唆された。 さらに最近の予備実験では、S269の脱リン酸化(S269A変異)がある種のnon-canonical Wnt ligandの産生を強くコントロールしていることも見いだしており、当該モチーフを含むTCF-4 isoformの機能解析は新しい段階に入ったと考えている。 平成25年度は申請段階における酵素化学的な研究に加え、TCF-4 isoformのnon-canonical Wnt pathwayに与える構造依存的細胞形質制御機構を探求していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低酸素耐性とWntシグナル伝達系との交差点にTCF-4が位置し、重要な役割を担っていることを明らかにしてきたが、その研究途上で、TCF-4がBcl-xL遺伝子プロモーター領域に結合することを見いだし、さらにある種のTCF-4 isoformが持つ「SxxSS」モチーフがnon-canonical Wnt ligandの発現制御をおこなっていることを見いだしつつある。現在までのところ、当初の計画以上の成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、最近の予備実験において、「SxxSS」モチーフ先頭のS269の脱リン酸化(S269A変異)がある種のnon-canonical Wnt ligandの産生を強くコントロールしていることも見いだしており、当該モチーフを含むTCF-4 isoformの機能解析は新しい段階に入ったと考えている。すなわち、モチーフのリン酸化/脱リン酸化によってかなりフレキシブルにWnt ligandの産生が制御されていることが推察され、それによって、幹細胞形質の可塑性や癌幹細胞の抗癌剤耐性機序の一部が説明できないか検討中である。 従って、平成25年度は申請段階における酵素化学的な研究に加え、TCF-4 isoformのnon-canonical Wnt pathwayに与える構造依存的細胞形質制御機構を探求していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半は、Wnt ligandそのものや、それらに対する抗体、siRNA等の試薬代に使用されることになると思われる。加えて、最終年度であるため、これまでの成果をさらに国内・国外で発表していきたい。そのための参加費や旅費にも使用していきたい。
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