2011 Fiscal Year Research-status Report
蛋白・脂質代謝異常による小胞体ストレスを伴う肝細胞障害でのオートファジーの役割
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23591000
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
原田 大 産業医科大学, 医学部, 教授 (00241175)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肝疾患 / オートファジー / ウイルス性肝炎 / 脂肪性肝疾患 / ウイルソン病 |
Research Abstract |
1.培養細胞においてプロテアソーム阻害剤を投与するとケラチン8/18とユビキチンからなる凝集体が形成され、小胞体ストレスと酸化ストレスが関与するアポプトーシスが引き起こされた。またこの際細胞ではオートファジーが亢進していた。ラパマイシンによりmTORを阻害するとオートファジーが亢進してプロテアソーム阻害剤によるアポプトーシスが抑制された。またトレハロースの投与によりmTORと関連なくオートファジーが亢進し、プロテアソーム阻害剤によるアポプトーシスが減少した。2.マウスにおいては3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)投与により酸化ストレスが引き起こされ、Mallory-Denk体(MDB)が形成されるが、この際電顕にてオートファゴゾームの増加を認めた。ラパマイシンの腹腔内投与やトレハロースの腹腔内投与によりオートファゴゾームが増加し、MDB形成は減少した。また高齢のマウスではオートファジーが減少してMDB形成が増加した。ただし、血液生化学検査は組織の改善所見と一致せずautophagic cell deathの関与も示唆された。3.人においてはB型慢性肝炎、C型慢性肝炎ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)において酸化ストレス、小胞体ストレスとオートファジーの活性に差はみられなかった。B型慢性肝炎に比し、C型慢性肝炎やNAFLD、ウイルソン病においてMDBが多く観察された。またMDBは肝小葉内の一部にまとまって存在し、その領域では酸化ストレスが強く、オートファジーが亢進している傾向があった。またNAFLDの全例において電顕にて脂肪滴をオートファジーにより処理するlipophagyを認めた。これらよりオートファジーの調節がC型慢性肝炎やNAFLDの治療となりうる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた研究は順調に進行しており、今後は飽和脂肪酸ならびに不飽和脂肪酸を負荷して培養細胞で脂肪負荷を行なった状態でのオートファジー、酸化ストレス、小胞体ストレス、細胞増殖ならびに細胞死との関連を検討して行く。 マウスの仕事に関してはDDC単独モデルではラパマイシンとトレハロースによるオートファジーの調節の影響が組織学的結果と血液生化学的結果が一致していない。この理由は未だ明確ではないが、autophagic cell deathの関与等を検討するため電顕的観察を追加したい。また、脂肪負荷モデルならびに脂肪負荷+DDC投与モデルを作成して検討を行いたい。 ヒトにおいてはまだ小胞体ストレス、酸化ストレスならびにオートファジーに関して免疫染色による検討のみでは、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患の間に有意な差を認めていない。これはB型肝炎ウイルスならびにC型肝炎ウイルスともオートファジーを増殖に利用していることに起因するかもしれない。電顕によるオートファジーの検討が充分でなく検討を続けて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた研究は今後、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸を負荷して培養細胞への脂肪酸負荷の小胞体ストレス、酸化ストレス、異常蛋白蓄積、オートファジー、細胞増殖、アポプトーシスへの影響を検討したい。さらに実際に臨床に使用されているrapamycinアナログであるRAD001を用いた検討も計画している。 マウスを用いた仕事では実際のヒトNAFLDに近い脂肪負荷プラス酸化ストレス負荷のモデルとしてhigh fat diet + DDC投与マウスを作成して小胞体ストレス、酸化ストレス、オートファジー、細胞増殖ならびにアポプトーシスの状態を検討し、それに対するmTOR阻害剤やトレハロースの役割を検討したい。 ヒトにおいてはB型慢性肝炎、C型慢性肝炎、NAFLDならびにウイルソン病の患者の肝組織の小胞体ストレス、酸化ストレス、異常蛋白蓄積、オートファジー、細胞増殖ならびにアポプトーシスの関係を疾患間の比較のみでなくそれぞれの細胞での関係を検討している。さらに現在作成中の電顕標本の検討を詳細に行なう予定である。特にMDB形成、autophagosomeならびにlipophagyに注目して検討を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養細胞の培養試薬、シャーレ等に20万円、プロテアソーム阻害剤、mTOR阻害剤、siRNA等の試薬や小胞体ストレス、酸化ストレス、異常蛋白蓄積、オートファジー、細胞増殖ならびにアポプトーシスの解析に必要な抗体は現在も保有しているが、追加購入が必要なため70万円ほど予定している。マウスの購入と餌を含む維持費ならびに投与試薬で50万円程度を予想している。
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