2012 Fiscal Year Research-status Report
蛋白・脂質代謝異常による小胞体ストレスを伴う肝細胞障害でのオートファジーの役割
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23591000
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
原田 大 産業医科大学, 医学部, 教授 (00241175)
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Keywords | オートファジー / 脂肪性肝疾患 / Mallory-Denk体 |
Research Abstract |
培養細胞においてプロテアソーム阻害剤を投与するとケラチン8/18、ユビキチンならびにp62からなる凝集体が形成され、小胞体ストレスと酸化ストレスの関与するアポプトーシスが引き起こされた。この際細胞ではオートファジーが亢進していた。ラパマイシンによりオートファジーが亢進してプロテアソーム阻害剤によるアポプトーシスが抑制された。またトレハロースの投与によりオートファジーが亢進し、プロテアソーム阻害剤によるアポプトーシスが減少した。 飽和脂肪酸であるpalmitateと不飽和脂肪酸であるoleateの投与により脂肪滴が形成されたが、oleateによるものがより顕著であった。またpalmitateはアポプトーシスを引き起こすが、oleateは引き起こさず、palmitateによるアポプトーシスを抑制する効果もあった。Oleateはオートファジーも亢進させた。またオートファジーを亢進させると脂肪酸投与による脂肪滴は減少し、さらにpalmitateによるアポプトーシスも軽減された。以上よりオートファジーは脂肪滴の成分を分解しており脂肪酸負荷による脂肪毒性の軽減に有用と考えられた。 マウスにおいてはDDC投与により酸化ストレスが引き起こされ、Mallory-Denk体(MDB)が形成されるが、この際電顕にてオートファゴゾームの増加を認めた。ラパマイシンやトレハロースによりMDB形成は減少した。 マウスにおいてhigh fat diet(HFD)を投与すると脂肪肝が起こるが、この際LC3で判断するオートファジーの亢進はなかった。これにさらにDDCを混合して投与すると脂肪滴の沈着は明らかに減弱した。HFDとDDCを同時投与したマウスではLC3で判断するオートファジーが亢進しており、脂肪代謝の中心的な蛋白であるSREBP1の発現が減弱していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた研究は順調に進行しており、今後は飽和脂肪酸ならびに不飽和脂肪酸を負荷した状態にアディポカインを加えた状態を調べ、培養細胞で脂肪負荷を行なった状態とin vivoの結果の差を検討して行く。 マウスの仕事に関してはいくつかの酸化ストレス、脂肪負荷モデルではラパマイシンとトレハロースによるオートファジーの調節の影響が組織学的結果と血液生化学的結果が一致していない。この理由は未だ明確ではないが、autophagic cell deathの関与等を検討するため電顕的観察を追加したい。。 ヒトにおいてはまだ小胞体ストレス、酸化ストレスならびにオートファジーに関して免疫染色による検討のみでは、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患の間に有意な差を認めていない。これはB型肝炎ウイルスならびにC型肝炎ウイルスともオートファジーを増殖に利用していることに起因するかもしれない。電顕によるオートファジーの検討が充分でなく検討を続けて行きたい。さらに生検組織で細胞ごとのストレスとオートファジーの関連を詳細に検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた研究は飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸の負荷と酸化ストレスや小胞体ストレスの組み合わせと小胞体ストレス、酸化ストレス、異常蛋白蓄積、オートファジー、細胞増殖、アポプトーシスへの影響を検討したい。これらは単純性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎ならびにアルコール性肝障害のモデルとなると思われる。さらに実際に臨床に使用されているrapamycinアナログであるRAD001を用いた検討も計画している。 マウスを用いた仕事では実際のヒトNAFLDに近い脂肪負荷プラス酸化ストレス負荷のモデルであるHFD + DDC投与マウスの小胞体ストレス、酸化ストレス、オートファジー、細胞増殖ならびにアポプトーシスの状態の検討を継続してそれに対するmTOR阻害剤やトレハロースの役割を検討したい。 ヒトにおいてはB型慢性肝炎、C型慢性肝炎、NAFLDならびにウイルソン病の患者の肝組織の小胞体ストレス、酸化ストレス、異常蛋白蓄積、オートファジー、細胞増殖ならびにアポプトーシスの関係を疾患間の比較のみでなくそれぞれの細胞での関係を検討している。さらに現在作成中の電顕標本の検討を詳細に行なう予定である。特にMDB形成、autophagosomeならびにlipophagyに注目して検討を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養細胞の維持ならびにプロテアソーム阻害剤、mTOR阻害剤、siRNA等の試薬や小胞体ストレス、酸化ストレス、異常蛋白蓄積、オートファジー、細胞増殖ならびにアポプトーシスの解析に必要な抗体の追加購入が必要なため50万円ほど予定している。マウスの維持費ならびに投与試薬で70万円程度を予想している。また論文掲載費用も必要と考えている。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] Aging modulates susceptibility to mouse liver Mallory-Denk body formation.2012
Author(s)
Hanada S, Harada M, Akiba J, Abe M, Sakata M, Taniguchi E, Kawaguchi T, Koga H, Nagata E, Ueno T, Omary MB, Sata M
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Journal Title
J Histochem Cytochem
Volume: 60
Pages: 475-483
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 代謝性肝疾患2013
Author(s)
原田 大
Organizer
日本肝臓学会教育講演会
Place of Presentation
東京 砂防会館
Year and Date
20130818-20130818
Invited
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