2011 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス肝炎持続感染モデルを用いた革新的治療ワクチンの開発
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23591004
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
木村 公則 (財)東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (70397339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永木 正仁 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30293559)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | HCV / 治療ワクチン / 慢性肝炎 / サイトカイン |
Research Abstract |
C型慢性肝炎の原因となるHCVがどうして持続感染を引き起こし、宿主の免疫応答が不十分なのかは未だ不明である。一つの要因としてHBVTgマウスモデルで解析されてきたが、抗原特異的CTLの機能低下があげられる。一般にCTLの機能として、抗原認識後のcytokine産生やcytotoxicityがあり、前者では主にIFNg, TNFaが後者には、perforinやgranzymeBの産生能として計測される。これらの報告をふまえて、本研究でrVV-N25投与によりHCV Tgマウスの慢性肝炎が改善した宿主の責任因子として、抗原特異的CTLの機能が回復しているかどうか;通常はアナジーになっている状態から活性化出来る状態に変化出来る報告があり、最近では、PD-1が関与しているといわれている、を検討した。更に、CTLの機能を修飾すると考えられる、CD4陽性Foxp3陽性の抑制性T細胞数、抗原提示細胞、特に樹状細胞の抗原提示能が回復しているか検討した。HCV Tgマウスにpoly I.C.を投与後90日の慢性肝炎状態のマウスにHCV蛋白を挿入した4種類のrVV株(rVV-LC16m8(control), rVV-CN2(構造領域+NS2),rVV-CN5(全領域)、rVV-N25(非構造領域))を皮下投与し、28日後に抗原特異的CTLの数量、CD4陽性Foxp3陽性数を解析した。結果として、治療効果を認めるrVV-N25投与群ではNS2特異的CD8陽性T細胞が増加していた。PD-1の発現に関しては差が明らかでなかった。CD4陽性Foxp3陽性数はrVV-N25投与群で減少していた。このようにrVV-N25投与群では、有意に抗原特異的CD8陽性細胞の増加を誘導し抗ウイルス効果に寄与していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当該年の研究計画の一つとしてHCVワクチン投与後の抗原特異的CTLの機能解析をあげており、昨年度の研究成果として、rVV-N25投与により慢性肝炎の改善をもたらすメカニズムの解析の一つとして、抗原特異的CTLの関与を証明した。上記に記載した様に、rVV-N25投与によりNS2特異的CD8陽性T細胞の増加が認められた。また、rVV-N25投与により血中の炎症性サイトカイン、特にTNFaとIL-6の低下が認められ、このサイトカインの低下が慢性肝炎の進展を制御している可能性が示唆された。実際、TNFaとIL-6の中和抗体をHCVTgマウスに投与すると肝炎の組織像の改善を認めた。現在このサイトカインの産生細胞を同定中であり、肝臓内のマクロファージが産生している可能性が高く今後詳細なメカニズムの解析を進めていく予定である。これらの成果は昨年度行われたアメリカ肝臓学会で優秀ポスター賞を獲得することができ国際的にも評価された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定として、まずどのようなメカニズムでrVV-N25が慢性肝炎に対して有効であるか解析をすすめる。現時点では、rVV-N25の作用機序として1)抗原特異的CD8陽性細胞の増加 2)炎症性サイトカインの抑制を確認しているが詳細なメカニズムは依然不明である。これらをふまえてC型慢性肝炎マウスモデルの組織学的改善における責任細胞の同定を行う。現在、TNF-aとIL-6の産生細胞を肝臓、脾臓、脂肪組織からリンパ球を採取し解析中であるが、preliminaryな結果として、マクロファージから産生されている可能性が高い。追加実験にて確認すると同時に、M1M2マクロファージの分布、サイトカイン産生能を解析する。さらに、マクロファージの慢性肝炎の関与を確認するため、マクロファージを除去するクロドロネートを用いて肝組織像の変化を検討する。これらの研究計画より慢性肝炎の進展に関わる宿主の免疫機構の解明が進む可能性がある。また現在rVV-N25の単独投与を行っているが、TLRアゴニストのアジュバント併用が有効であるどうかあるいは、抗TNF-a、IL-6の中和抗体の併用投与が有効か検討することにより至適投与法の確立を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HCVTgマウスを用いて免疫学的解析を行うにあたり、FACS用の抗体、細胞培養の試薬が必要となる。抗体は1本あたりの単価が高価なため約50万円を計上している。その他、消耗品の購入が大部分を占めるが、国際学会発表などの旅費の計上も予定している。またマウスの維持のための餌代、床敷代も使用を予定している。さらに、論文の英文校正、reprint代を約20万円使用を予定している。
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Research Products
(7 results)