2012 Fiscal Year Research-status Report
虚血性心疾患にともなう致死性不整脈発症の遺伝的基盤についての検討
Project/Area Number |
23591030
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
中島 忠 群馬大学, 医学部, 助教 (40510574)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉林 正彦 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00215047)
金古 善明 群馬大学, 医学部, 講師 (60302478)
|
Keywords | 虚血性心疾患 / 致死性不整脈 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
我々は、これまでに急性心筋梗塞/虚血の発症急性期に心室細動が重積した症例10例においてSCN5A遺伝子の解析を行った。しかし、疾患と関連するSCN5A変異、多型は同定されなかった。 一方、急性心筋梗塞/虚血の亜急性期に過度のQT延長をきたし、多型性心室頻拍(torsades de pointes: TdP)を発症した症例(post myocardial infarction(MI)/ischemia-associated TdP) 4例において、KCNQ1, KCNH2, KCNE1, KCNE2、SCN5A遺伝子の解析を行った結果、QT延長症候群をきたす変異は同定されなかったが、2例においてKCNQ1 G643S多型を同定した。KCNQ1 G643S多型のアレル頻度は人種により異なり、アジア人では約10%認めるが、欧米人ではほとんど0%である。この多型は、徐脈や低カリウム血症などのQT延長の助長因子存在時にはTdP発症リスクを上昇させるとされているが、さらに、post MI/ischemia-associated TdP発症の遺伝的基盤である可能性がある。 最近、post MI/ischemia-associated TdPを発症した欧米人13例中9例にKCNH2 K897Tを認めたことが報告され(Heart Rhythm 2012:9;1104-12)、KCNH2 K897Tとpost MI/ischemia-associated TdP発症の関連が示唆されている。KCNH2 K897T多型のアレル頻度も人種により異なり、欧米人で35%程度認めるが、アジア人を含む他人種では数%しか認めないことから、post MI/ischemia-associated TdP発症の遺伝的基盤は人種により異なることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
急性心筋梗塞/虚血発症急性期の心室細動の重積や、post MI/ischemia-associated TdPは稀な疾患であり、症例数の集積に苦慮しているため。 また、研究代表者は、不整脈源性右室心筋症、遺伝性/二次性QT延長症候群、ブルガダ症候群など他の多くの疾患の遺伝子解析も並行して行っており、得られた新たな知見を学会、論文発表などで発信し、一定の成果が得られているが、こちらに多くの時間を取られてしまったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、急性心筋梗塞/虚血発症急性期に心室細動が重積した症例と、亜急性期に過度のQT延長をきたしpost MI/ischemia-associated TdPを発症した症例の集積を継続する。本プロジェクトを他のプロジェクトより優先させ、得られたサンプルの遺伝子解析のスピードアップをはかる。 post MI/ischemia-associated TdP症例では、KCNQ1 G643S多型が多い傾向にあるが、さらに症例数を蓄積し多いと判断された場合は、培養細胞株発現系を用い、野生型KCNQ1、KCNQ1 G643S多型を発現させ、機能解析を行う。さらに、野生型KCNQ1とKCNQ1 G643S多型において、酸化ストレス(tert-butyl-hydroperoxide: t-BHP)によりチャネル機能が修飾されるかどうか、修飾に差があるかどうかを調べる。また、抗酸化剤がt-BHPの作用に拮抗するかどうか調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度から継続して、急性心筋梗塞/虚血発症急性期に心室細動が重積した症例、亜急性期に過度のQT延長をきたしpost MI/ischemia-associated TdPを発症した症例の遺伝子解析を継続する予定である。患者末梢血からgenomeを抽出するKitとしてQIAamp DNA Blood Midi Kit、PCR産物を精製するKitとしてQIAquick PCR Purification Kit、シークエンス反応KitとしてBigDye terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit等、購入する予定である。 また、疾患と関連する遺伝子多型(現時点ではKCNQ1 G643S多型が候補である)を培養細胞株に発現させ、パッチクランプ法により機能解析を行う予定であり、消耗品としてガラス微小電極(micropipette)を購入する予定である。
|
Research Products
(4 results)
-
-
-
-
[Presentation] Genetic heterogeneity of Brugada syndrome in Japanese patients: Implications for genotype-based risk stratification and management2012
Author(s)
Tadashi Nakajima, Yoshiaki Kaneko, Tadanobu Irie, Wu Jie, Seiko Ohno, Megumi Fukuyama, Toshimitsu Kato, Takafumi Iijima, Shoichi Tange, Minoru Horie, Masahiko Kurabayashi
Organizer
第27回日本不整脈学会学術大会(シンポジウム)
Place of Presentation
パシフィコ横浜(横浜)
Year and Date
20120705-20120707