2011 Fiscal Year Research-status Report
致死性虚血性不整脈の予測因子の確立および原因遺伝子同定による病態解明と治療構築
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23591031
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 光希 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (40600044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池主 雅臣 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40303151)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 虚血性不整脈 / 心室細動 / 心筋梗塞 / 冠攣縮狭心症 / J波 / 遺伝子 |
Research Abstract |
1.J波を中心とした心電図所見と虚血性心疾患における心室細動との関連心電図上のJ波は一般健常人にも認める良性所見だが、我々はJ波に関連した致死性の心室細動症例を報告してきた(申請者ら、Pacing Clin Electrophysiol. 2011に掲載)。心筋梗塞や冠攣縮狭心症などの虚血性心疾患でも心室細動を伴うことが知られるが、J波との関連は明らかでない。 我々は、当院と関連施設において冠攣縮誘発試験時に心筋虚血を生じた67症例のJ波の変化と心室細動の関連を検討した。結果は、検査前よりJ波を有した症例は14例で、残り53例にはJ波を認めなかった。心筋虚血に伴い7/14例でJ波が増大し、そのうち4例で心室細動に至った。一方、検査前にJ波を認めなかった53例の中4例で新たにJ波が出現したが心室細動は生じなかった。心筋虚血に伴う心室細動は、J波を有する症例およびJ波が増大する症例に発生率が高いことが示された。これは、J波が虚血性心疾患においても心室細動の危険予測因子になりうることを示している(申請者ら、Europace 2011に掲載)。 また、急性心筋梗塞の急性期に心室細動を生じた症例を集積中であり、臨床データと心電図データを解析中である(平成23年3月31日時点で8症例)。2.虚血性心室細動の新たな原因遺伝子の検索 我々は、特発性心室細動症例における遺伝子解析により、心臓NaチャネルをコードするSCN5Aの遺伝子変異を証明し報告した(申請者ら、Circulation Arrhythmia and Electrophysiology 2011に掲載)。虚血性心疾患における心室細動においても同様のイオンチャネルの遺伝子異常が関連している可能性がある。上記の集積中の8症例については、すでに血液中からのゲノムDNAを抽出しており、今後行う原因遺伝子のスクリーニングに用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究目的の1つであった、冠攣縮誘発試験における心電図所見(特にJ波)と虚血性心室細動の関連を示すことができた。この点では、順調な進捗状況と考えられる。 急性心筋梗塞の急性期に心室細動を生じた症例の集積では、平成23年3月31日時点で8症例である。原因遺伝子のスクリーニングを行うためにはまだ十分な症例数が集積されていない。ただし、8症例については血液からのゲノムDNAの抽出は完了しており遺伝子スクリーニングの準備は整いつつあり、研究の進展は得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.心電図所見、特にJ波による虚血性心室細動の危険性の層別化を目的とする。 この目的のために、心筋梗塞症例の集積を継続していく。平成23年度に得られた、J波を含めた心電図所見における虚血性心室細動の予測因子について前向きの症例観察研究を計画する。2.虚血性心室細動に関連する遺伝子異常のスクリーニングと機能解析を目的とする。 心筋虚血に伴って心室細動を生じた症例の集積を継続していく。より多くの症例数の集積は、新たな遺伝子異常の発見に重要であると考えられる。すでに抽出したゲノムDNAを用いて、心臓イオンチャネルなどを中心として原因遺伝子の検索を開始する。また、心臓に発現するその他の新規の原因遺伝子も標的にしていく。遺伝子異常が同定された場合には、変異タンパクを培養細胞に発現させて分子レベルでの機能解析を行う。 また、判明した結果を解析し、成果の発表を通じて社会への還元を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費のうちの大部分を、虚血性心室細動に関連する遺伝子異常の検出のために使用する。理由は、遺伝子スクリーニングの試薬は高額なものが多く、スクリーニングするべき対象遺伝子数を増やす場合には必要と考えられるからである。虚血性不整脈機序の解明には、この原因遺伝子の検索が重要な位置を占め、その後の機能解析につながっていくため、経費の割り当てについては妥当であると考えられる。また、その後の遺伝子変異の機能解析および培養細胞関連に費用を当てる。 判明した結果および解析結果については、学会発表および論文発表により発信していくが、その過程での諸費用を要する。
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Research Products
(9 results)