2012 Fiscal Year Research-status Report
体表面標準心電図による心内の三次元的再分極分布と不整脈リスクの評価
Project/Area Number |
23591032
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
和泉 大輔 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (30529699)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池主 雅臣 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40303151)
|
Keywords | 不整脈 / T波 / 再分極 / 多型性心室頻拍 / QT延長 |
Research Abstract |
心室筋の wedge model を用いた in vitro study では、心外膜と心内膜側の間で記録された双極心電図における T peak-end interval は心室貫壁性の再分極分布の不均一性と1:1で相関する事が示されている。一方で、体表面心電図における T peak-end interval の成因は不明の点が多く、心室貫壁性の再分極不均一性との関連性については議論がある。我々は、in vivo の検討で、肢誘導のT peak-end intervalが、貫壁性の再分極分布の不均一性を直接的には示唆していないが、左室全域の空間的な再分極不均一性の指標として有用であることを報告した。本当該年度、我々は体表面心電図胸部誘導における T peak-end interval の成因について検討を行い、胸部誘導のT peak-end interval が誘導近傍の比較的広い範囲の再分極不均一性の総和を示唆していることを以下の通り明らかにした。 1.胸部誘導V2-6 における T peak-end interval は左室の前壁~側壁、基部~心尖部の貫壁性の recovery-time dispersion の重回帰分析により予測可能である (R2 >0.9) 。 2.胸部誘導V2,3 のT peak-end interval は左室側壁に比べ前壁の recovery-time dispersion の影響が大きく、 V5,6 では心尖部のrecovery-time dispersion の影響が大きい。 3.胸部誘導のT peak-end interval は、近傍の左室局所の貫壁性の recovery time dispersion より大きいものの、誘導近傍の貫壁性再分極分布の不均一性と強い正相関を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胸部誘導におけるT peak-end intervalの成因について生体心での検討はこれまで非常に乏い。本研究ではこれまでに体表面心電図肢誘導および胸部誘導のT波(特にT peak-end interval)の成因について一定の研究成果を得ている。研究成果については、健全な医療の発展に貢献するため、国際的学術誌(申請者ら Heart Rhythm 2012)に掲載し、内外の関連学会(申請者ら American Heart Association Scientific Sessions Conference 2011、The 77th Annual Scientific Meeting of the japanese Circulation Society 2013)に報告を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、QT延長症候群とともに心筋虚血モデルとJ波症候群モデルの検討を進める。各モデルの作成を確立し、体表面心電図と心室の3次元的な再分極分布の関連性を評価する。 これまでの研究では、ビーグル犬を静脈麻酔下で人工呼吸管理を行い正中開胸で心臓にアプローチしていたため、体表面心電図の前胸部誘導の導出に限界があった。そのため、前胸部誘導と心室の貫壁方向を含む3次元的な再分極分布の関連性を評価に困難な面があった。術式を改良し、側胸部の小開胸により心臓にアプローチすることで体表面心電図の前胸部誘導が記録できるため、翌年度以降は体表面心電図の前胸部誘導と心室の貫壁方向を含む3次元的な再分極分布の関連性も含め評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に得られた結果を基にして、各モデルを作成して、Tp-eと心内不応期分布の相関関係と、重症心室性不整脈発症のリスクを検証する。対照状態と急性虚血および低体温の条件下で、以下の項目の関係を明らかにする。各モデルでのTp-eおよび心電図形状と、(1)3次元的不応期分布と催不整脈性、(2)自律神経活動、(3)薬剤と高頻度ペーシングの治療介入効果、(4)心臓局所のRestitution kinetics。 本年度、未使用額があったが、これは一定の研究成果を得るために実験結果の十分な解析に時間を要したことにより、すべての実験プロトコールを遂行できなかったためである。未使用額については、J波症候群モデルの作成を確立することに用いる。
|