2011 Fiscal Year Research-status Report
心房細動の発生と維持におけるカルシウム動態の関与について
Project/Area Number |
23591038
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
植田 典浩 名古屋大学, 環境医学研究所, 研究員 (10456709)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 心房細動 / 圧負荷 / カルシウム |
Research Abstract |
体重1.5-2.0 kgのウサギから麻酔下に心臓を摘出した後、37℃ の灌流液を用いてLangendorff灌流を行った。心房筋圧負荷モデルを下記の方法で作成した。まず、肺動脈、上大静脈と肺静脈にカニュレーションを行い、カニュレーションしない残りの肺静脈を含めて、その他の血管は結紮した。肺動脈と上大静脈に接合したチューブに接続した水柱計で心房内圧をモニターし、肺静脈と左上大静脈に接合したチューブは心房内圧調節のための流出口とした。心房内圧は0~16 cm H2O(一部では20 cm H2Oまで上昇させた)の範囲内で変化させた。Bachmann束に双極電極を装着し、心房の電気生理学的な特性を観察するとともに、心房細動を高頻度(バースト)刺激により誘発した。ギャップ結合阻害剤であるカルベノキソロン30-300μM添加後は低い心房内圧でも容易に心房細動が誘発された。一方、ギャップ結合修飾剤であるロティギャプタイド(ZP123)では、Controlと同じ心房内圧でも心房細動の誘発率は低下した。心房の興奮伝播過程を高分解能心筋膜電位光学マッピングシステムを用いて記録した。ZP123添加後は有意に心房内の伝導速度は上昇した。しかし、これまでの検討では、カルベノキソロンでは有意の変化は観察されなかった。なお、心房筋の膜電位記録時に使用する、心筋収縮の抑制薬であるBDM(2,3-budanedione monoxime)添加後には、持続する心房細動の誘発が困難であった。このことはCytocharasin-Dの添加後においても同様であった。現在は、blebbistatinなど他の薬物による心房の収縮の抑制下で、持続する心房細動を誘発できる状態を作成するための検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
持続する心房細動を観察できることは、心房の膜電位及びカルシウム動態を観察する上で有用な情報を得られると考えられる。心房細動のメカニズム解明に関するキーポイントとなる検討である。しかしながら、心房の収縮を抑制する薬物の存在下では、持続する心房細動を誘発することが困難であるため研究の進捗の遅れをきたしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
膜電位感受性色素を用いた心房筋活動電位の記録時には、心房の収縮を抑制する薬物を使用している。しかしながら、心房の収縮を抑制する薬物の存在下では、持続する心房細動の誘発が困難である。今後は、心房筋活動電位の記録時に、心房圧負荷により持続する心房細動が誘発できるように種々の薬物について検討予定である。blebbistatinなど、これまでに使用していない心房筋の収縮を抑制する薬物について検討するとともに、さらに追加薬物を使用することにより、持続する心房細動の誘発率を上げることができるように検討していく予定である。次にカルシウム動態の同時記録が可能であるシステムを構築していくことを計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の遂行時の課題としては、心房筋活動電位の記録時に持続する心房細動の誘発を確立することがあげられる。膜電位及びカルシウム動態を記録時において持続する心房細動を容易に誘発できれば、研究の遂行はスムーズになり、心房細動の発生機序が解明される。特に急性の心房圧負荷状態に関しては、ヒト生体での現象にも近い状態であると考えられるため、治療戦略のためにも有用な検討である。まず、この点について集中的に検討を行い、事態を打開したい。
|