2011 Fiscal Year Research-status Report
心筋細胞の生存・分化・脂肪毒性における脂肪組織の役割とその制御機構
Project/Area Number |
23591050
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
戸田 修二 佐賀大学, 医学部, 教授 (80188755)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
挽地 裕 佐賀大学, 医学部, 講師 (90380774)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 心外膜下脂肪組織 / 内臓脂肪組織 / 皮下脂肪組織 / 心筋細胞 / 脂肪毒性 / メタボリックシンドローム / 肥満 / 心不全 |
Research Abstract |
平成23年度は、心筋細胞-脂肪組織解析モデルで、心外膜下脂肪組織、内臓脂肪組織、皮下脂肪組織の心筋細胞への影響を検討し、以下の結果を得た。1)心外膜下脂肪組織、内臓脂肪組織、皮下脂肪組織は、いずれも心筋細胞のアポトーシス、脂肪滴蓄積を促進し、増殖、機能分化を高度に抑制した。即ち、上記3種類の脂肪組織は、いずれも心筋細胞の脂肪毒性を誘導し、脂肪組織の部位特異的な影響の相違は見られなかった。2)脂肪組織は、間葉系組織であるが、他の間葉系細胞である線維芽細胞では、脂肪組織誘導性の心筋細胞の脂肪毒性は再現できず、心筋脂肪毒性の誘導は脂肪組織特異的であった。3)脂肪酸輸送分子(FATP-1, -4, -6, CD36)の中で、脂肪組織は、心筋細胞のFATP-4, CD36の発現を促進した。この結果は、FATP-4, CD36が、脂肪組織誘導性の心筋細胞脂肪毒性に関与することを示唆している。4)心筋細胞は、脂肪組織のレプチン産生を抑制し、アディポネクチン産生を促進した。レプチンは脂肪毒性促進因子、アディポネクチンは脂肪毒性抑制因子の候補で有ることが示唆されているので、心筋細胞は、脂肪組織誘導性の心筋細胞脂肪毒性を防御している可能性が示唆される。5)しかし、レプチン、アディポネクチンを心筋細胞単独培養系に投与しても、脂肪組織誘導性の心筋細胞脂肪毒性は、再現できなかった。おそらく、脂肪組織の心筋細胞脂肪毒性に対する影響は、アディポカインの影響より、極めて強力な影響と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画は達成されたが、脂肪組織誘導性の心筋細胞脂肪毒性の機構の分子メカニズムの解析が不十分である。脂肪蓄積に伴うストレス応答として、セラミドの発現や酸化ストレス分子(酸化ストレスマーカー:8-OHdG、4-HNE;酸化ストレスシグナル:NF-κB、MAP kinase [ERK-1/2, p38];酸化ストレス防御因子:SOD)、小胞体ストレス分子(アポトーシス促進シグナル:IRE1α、JNK;小胞体ストレス防御シグナル:PERK、eIF2α、ATF6α、β)の発現を検討する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に解析できなかた上記の実験計画を実施する。さらに、脂肪毒性関連、非関連脂肪酸(パルミチン酸、リノール酸、オレイン酸、アラキドン酸、DHA、EPAなど)[Clin Sci 112:27-42, 2007]を酵素法(SRL社に外注)で測定する。間葉系幹細胞マーカーであるCD44, CD105の免疫組織化学(ホルマリン固定切片)、FACS(培養脂肪組織のコラゲナーゼ処理により得られた単離細胞を用いる。脂肪細胞と非脂肪細胞は遠心により容易に分離できる)[戸田の文献3, 9, 17]で、脂肪組織から再生する間葉系幹細胞数を測定する。間葉系幹細胞の分化系列(Mol Biol Cell 13:4279-4295, 2002)を、デスミン(筋細胞)、aggrecan、II型コラーゲン(軟骨細胞)、アルカリフォスファタゼ、I型コラーゲン(骨芽細胞)、アルブミン(肝細胞)、GFAP(神経系細胞)を示標にして同様に検討する。前脂肪細胞への分化は、オイルレッドO染色による脂肪滴により検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験を遂行するための設備は、すでに完備されており、研究に必要な物品は、主に消耗品である。その内訳は、主にマウス、ラットの動物、プラスチック・ガラス器具類や、細胞分離用コラゲナーゼ、特殊培養皿(底面がニトロセルロース膜を有する培養皿、1個500円)、培養液、血清、I型コラーゲン(100 ml、3万5千円)、抗体(1抗体当たり、6-12万円程度)、Western blot、real-time RT-PCR用プライマー、cDNA microarrayなどの試薬、ELISAキット(1個: 6万~10万円)、ATP assayキット(7万2千円)、脂肪酸測定費用(1万円/1脂肪酸、SRL社に外注)などである。200万程度を見込んでいる。
|