2011 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化巣での原因歯周病菌の検出と同定による虚血性心疾患予防へのアプローチ
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23591051
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
副島 弘文 熊本大学, 保健センター, 准教授 (80332881)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯周病 / 動脈硬化 / 歯周病菌 / 抗体価 |
Research Abstract |
循環器内科入院中の虚血性心疾患患患者さんにおいて本研究に協力の得られた患者さんに歯科口腔外科受診していただき歯周病の有無および程度をPPRD (periodontal pentagon risk diagram by Renvert S, et al, J Clin Periodontal, 2003)のcode分類によりスコア化して評価した。診察していただいた項目としては、残存歯数、全歯の歯周ポケットの深さがどのくらいか(4 mm未満、4 mm以上、6mm以上)、歯4面のプラークの残存程度、プロービングによる歯周組織からの易出血性の有無、動揺歯の有無、歯肉の状況、パモントグラフィーを用いて歯槽骨の骨吸収の程度が歯根長の1/2以上に達するかどうか等である。また、歯周病菌のうちPorphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Aggregatibacter actimomycetemitansについてELISA法を用いて抗体価測定を行った。 口腔内腫瘍で歯科口腔外科入院患者さんにも歯周病の検査をしていただいた。腫瘍切除の際に顔面動脈が切除される。通常は廃棄される組織であるが、患者さんの同意を得て無菌的に収集し、すぐに凍結保存する。収集した顔面動脈から歯周病菌特有のプライマーを準備し前述3つの歯周病菌のDNA検索を行った。さらに歯周病菌のmRNAの検索を行い動脈内の歯周病菌の有無について検討した。残りの組織を用いて免疫組織化学染色を行い動脈組織内の歯周病菌の同定を行った。まだ結論を出せるだけのデータは集まっていないが顔面動脈に歯周病菌の存在は確認できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
循環器内科入院患者さんの入院時採血所見および心電図、心臓超音波、冠動脈造影所見および冠動脈CT所見の把握は順調である。歯科口腔外科入院患者さんについては研究開始が少し遅れたため、口腔内腫瘍で手術適応となる症例が期待したよりやや少ない状況である。よって循環器内科入院患者さんの歯科口腔外科での歯周病の有無および程度をPPRDのcode分類によりスコア化して評価することは順調であるが、歯科口腔外科の入院患者さんでは予定よりやや少なめとなっている。歯科口腔外科にて腫瘍切除の際に一緒に切除される顔面動脈を患者さんの同意を得て収集し、Porphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Aggregatibacter actimomycetemitansといった歯周病菌のDNA検索および歯周病菌のmRNAの検索を行っている。対象症例数がまだ多くないが歯周病菌の検出はできており、24年度はさらに症例数を多くして歯周病菌のある症例と無い症例について比較検討していく。また、DNAおよびmRNAとして歯周病菌が検出された残りの組織を用いて少しの症例に対してだが、免疫化学組織染色を行い動脈組織内の歯周病菌の同定を行っている。この検討はまだこれからであるが一部の標本から歯周病菌が検出できている。同意を得た患者さんの血清を用いて歯周病菌のうちPorphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、 Aggregatibacter actimomycetemitansについてELISA法を用いて抗体価測定を行っているが十分ではない。種々のマーカーとの関連があるようであり、今後症例数が増すとはっきりしてくると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
歯科口腔外科での研究開始がやや遅れたため口腔内腫瘍の入院患者さんが予定よりも少なかった。そのため歯科口腔外科入院患者さんの歯周病の検索および抗体価測定も予定より少なくなった。さらに歯科口腔外科にて腫瘍切除の際に一緒に切除される顔面動脈の数も少なくPorphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Aggregatibacter actimomycetemitansといった歯周病菌のDNA検索および歯周病菌のmRNAの検索も少なかったために予定より研究費の使用が少なかった。24年度は歯科口腔外科にいっそうご協力頂き対象症例を増していく予定である。24年度の目的の1つでもある末梢血白血球での免疫応答の検討を今後は行っていく。その1つとして同意を得られた患者さんから得られた血液をすぐに活性化培養液で4時間培養した後、蛍光標識の付いた抗CD4抗体で染めておく。蛍光標識をつけた抗interferon-γ抗体と抗interleukin-4抗体とこの白血球と混ぜ、白血球内のinterferon-γとinterleukin-4に結合させる。この白血球をflow cytometerにかけることでinterferon-γあるいはinterleukin-4を産生するT helper cellを検出できる。こうして動脈硬化病変の血栓性閉塞発生に関連する免疫応答について歯周病患者の白血球で検索する。さらにはまた、歯周病菌が動脈組織内へ侵入するメカニズムを検討する目的で培養液中でヒト内皮細胞に歯周病菌を作用させるとどのような変化をきたすか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動脈でのPorphyromonas gingivalis、Prevotella intermedia、Aggregatibacter actimomycetemitansといった歯周病菌のDNA検索および歯周病菌のmRNAの検索はこれまで通り継続して行っていく。免疫化学組織染色については23年度一部の症例に行っていたが、現在症例が蓄積しつつあり、今後全対象症例で行っていく。また、歯科口腔外科入院患者さんについては研究開始の遅れにより口腔内腫瘍の症例が予定より少なかったためやや少ない状況であったが、23年度の歯科口腔外科症例数不足分は24年度に補うため23年度の未使用研究費は消化されると思われる。さらに、24年度は白血球の免疫応答を検討するため蛍光標識をつけた抗interferon-γ抗体および抗interleukin-4抗体、抗CD3抗体、およびそれぞれの抗体に対するのコントロール抗体など多数の抗体や試薬が必要である。また、培養液中でヒト内皮細胞に歯周病菌を作用させるとどのような変化をきたすか検討する。内皮細胞から種々の蛋白が発現してくると思われるがその中から白血球の遊走、接着、内皮下浸潤に関連した蛋白を検出していくためにウエスタンブロッティングを行う。また、23年度から引き続いて行っているデータを取りまとめていくつかの学会発表および論文発表を行っていく予定であり、これにも研究費が必要となる。
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Research Products
(4 results)