2011 Fiscal Year Research-status Report
腹部大動脈瘤の病態解明と細胞内エネルギー制御による内科的治療法の基盤確立
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23591052
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 助教 (10389570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
畠山 金太 宮崎大学, 医学部, 講師 (60325735)
鬼塚 敏男 宮崎大学, 医学部, 教授 (60108595)
長町 茂樹 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40180517)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 炎症 / 糖代謝 / マクロファージ |
Research Abstract |
ヒト腹部大動脈瘤壁は対照群の大動脈壁に比べグルコーストランスポーター(GLUT)-1, -3の蛋白発現が亢進し、18-FDGの取り込みと相関した。また、GLUT-3発現はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9活性と相関した。免疫組織学的検討ではGLUT-1陽性細胞は新生血管から瘤壁内へ漏出した赤血球やマクロファージに分布し、GLUT-3陽性細胞はマクロファージであった。ヒト腹部大動脈瘤壁ではグルコーストランスポーター(GLUT)-1,-3蛋白発現が亢進し、その主体はマクロファージであった。単球系細胞(U937)でも主たるGLUTサブタイプは-1ならびに-3であった。同細胞をフォルボールエステルで刺激し、誘導されたMMP-9活性はグルコーストランスポーター阻害剤であるサイトカラシンBやフローレチン、グルコースアナログである2-デオキシグルコース(DG)の投与により著減した。さらに、ヒト腹部大動脈瘤壁を細片化し作成した培養系に2-DGを投与したところMMP-9活性は減少した。塩化カルシウム塗布によるマウス腹部大動脈瘤モデルに2-DG(1000 mg/kg/日,腹腔内)を28日間投与すると、瘤径拡大が有意に抑制された(sham, 0.49±0.04 mm (n=10); CaCl2, 0.96±0.18 mm (n=14); CaCl2+2-DG, 0.62±0.08 mm (n=12), means ± SEM)。この瘤形成抑制効果は血管壁内のMMP-9活性やMCP-1蛋白発現の低下と関連していた。腹部大動脈壁内のマクロファージの糖代謝エネルギー制御により、腹部大動脈瘤の瘤径拡大進展を抑制できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)腹部大動脈瘤患者17名の同意を得て、PET-CTならびに術中に大動脈瘤壁を入手することができた。(2)培養細胞、動物実験とも有効に時間を活用して実験結果を得ることができた。(3)研究成果の一部を国内外の学会で報告することができた。(4)特許出願することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)培養マクロファージ細胞を用いた実験では糖代謝阻害薬2-DGの作用機序についてDNAマイクロアレイを用いて考察する。またDNAマイクロアレイの結果を基に解析を行い、候補として挙がった数種の遺伝子発現の増減の確からしさをreal-time RT-PCRで確認する。腹部大動脈瘤壁を利用したex vivo cultureは、引き続きグルコーストランポーター阻害薬ならびに糖代謝阻害薬のMMP-9活性への効果を観察する。(2)2-DGをもう1種の腹部大動脈瘤モデル(アポリポプロテインE遺伝子欠失マウスにアンジオテンシンIIを投与して作成)に対しても投与して瘤形成への効果の普遍性を観察する。塩化カルシウム塗布モデルへの効果と比較して、その作用機転について考察する。さらに、このモデルでは時に瘤破裂による死亡が観察されるので併せて死亡率を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)培養マクロファージ細胞を用いた実験ではDNAマイクロアレイ法を活用する。その結果を基に解析を行い、候補として挙がった数種の遺伝子発現の増減の確からしさをreal-time RT-PCRでの確認に研究費を使用する。(2)培養細胞およびex vivo cultureで効果が確認されたグルコース・トランスポーター阻害薬ないしは糖代謝阻害薬を、塩化カルシウムを腹部大動脈周囲に塗布して作成した腹部大動脈瘤モデル(Tsuruda T, et al. Circ Res. 2008)へ1ヶ月間投与して非投与群と瘤径を比較する。採取した動脈壁を用いてザイモグラムやウエスタンブロット法を行うのに研究費を使用する。(3)もう1種類の腹部大動脈瘤モデルであるアポリポプロテインE遺伝子欠失マウス+アンジオテンシンIIに対してグルコース・トランスポーター阻害薬ないしは糖代謝阻害薬を投与する実験に研究費を利用する。採取した血管を用いて遺伝子発現をRT-PCRで、蛋白発現をウエスタンブロット法で評価する。また、各種蛋白の血管壁内分布を免疫染色法で検討する。これら動物飼育費や各種の検査に必要な試薬購入費等に研究費を充てる。(4)さらなる研究成果を国内外の学会で報告する。
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