2013 Fiscal Year Research-status Report
ホルター心電図による睡眠時無呼吸スクリーニングの有用性の実証
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23591055
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
早野 順一郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90173054)
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Keywords | 睡眠時無呼吸 / 心電図 / 心拍変動 / 心筋梗塞 / うつ病 / 死亡率 |
Research Abstract |
ホルター心電図は、わが国だけでも年間270万件が実施されており、その対象である循環器疾患患者は睡眠時無呼吸(SAS)のハイリスク群でもある。そこで、申請者がH20-H22年度の基盤研究Cで開発したSAS発作自動検出アルゴリズム(ACAT)の有用性を検証するために、男性運送業従事者における心電図によるSASスクリーニングの精度の検討(研究1)、急性心筋梗塞(AMI)後患者の死亡率に対するうつ病とSASの交互作用の検討(研究2)、ホルター心電図大規模データベースにおけるCVHRの解析を行った。研究1では、165例の被験者の中で、26例(16%)に中等症以上のSASがあったが、ROC曲線解析の結果、CVHRはこれをAUC=0.974(95%CI、0.937-0.993)で検出した(CVHR≧15を基準とすると感度88%、特異度97%)。CVHRの検出力は肥満、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、自律神経機能異常の影響を受けなかった。研究2では、AMI後患者716例(内、337例が抑うつ状態)の25か月の追跡期間中に43例が死亡した。抑うつとCVHRから判定したSASを合併した94例では20例(21.3%)が死亡し、これは従来の危険因子による推定死亡リスクの6.9倍であった。一方、抑うつかSASの一方のみを有した例および両方ともなかった例の死亡率は、既知の危険因子による推定死亡率と一致した。抑うつとSASの間には死亡率に対する交互作用が有り(p = 0.03)、抑うつはSASを有する群でのみ死亡のリスクであり(p <0.001)、SASは抑うつを有する群でのみ死亡利のリスクであった(p <0.001)。研究3では、男性93,296例、女性113,263例のホルター心電図にACATを適用したところ、男性の7.2%、女性の2.6%に重症SASの存在(CVHR ≧30)が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請した研究の目的は、申請者がH20-H22年度の基盤研究Cで開発した睡眠時無呼吸発作自動検出アルゴリズム(ACAT)による睡眠時無呼吸スクリーニングの臨床的有用性の検証と、ACATアルゴリズムの機能の拡張であったが、次のような研究の実績が得られた。 (1) 睡眠時無呼吸症候群検出の社会的ニーズの高い男性運送業従事者において、心電図によるSASスクリーニングが十分な精度を有することを実証した。 (2) 睡眠時無呼吸症候群が予後悪化因子となることが指摘されている急性心筋梗塞後患者において、ホルター心電図にACATを適用することによって検出された睡眠時無呼吸は、死亡リスクに対してうつ病との間に交互作用を有することを世界ではじめて見出すことができた。 (3) 約20万件のホルター心電図大規模データベースにACATを適用することで、ホルター心電図受検例における睡眠時無呼吸の有病率を男女別、年齢別に推定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ホルター心電図による睡眠時無呼吸スクリーニングを普及し、全てのホルター心電図解析装置にアルゴリズムを実装することで、循環器疾患における睡眠時無呼吸の検出率を高め、睡眠時無呼吸による予後の悪化を防ぐ。ホルター心電図による睡眠時無呼吸のスクリーニングにより、終夜睡眠ポリグラフ等の費用のかかる睡眠時無呼吸の診断効率を高める。この方法を日本の医療技術として世界に輸出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
睡眠時無呼吸に伴う心電図変化の解析の中で、当初想定していたこと以外の臨床的価値(急性心筋梗塞の予後に対するうつ病と睡眠時無呼吸の間の交互作用)が見出され、そのためのデータ解析および論文発表のために時間がかかり、当初に予定していた研究計画の実施が遅れている。 心拍数周期性変動(CVHR)による睡眠時無呼吸の治療効果評価法の確立のために、CPAP治療前後のAHIの変化とCVHRの変化との関連の分析を行う。データのcomputer解析、論文作成、論文および学会発表の消耗品および旅費として研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)