2012 Fiscal Year Research-status Report
多施設共同レジストリの構築による急性心不全の病態把握の試み
Project/Area Number |
23591062
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉川 勉 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20174906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香坂 俊 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (30528659)
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Keywords | 急性心不全 / 他施設共同レジストリ |
Research Abstract |
本研究の大目的は、我が国における急性心不全(AHF)のデータベースを樹立し、① 背景となる因子の病態・疫学を明確にし、② 急性心不全治療法の現況とガイドライン尊守の実態を把握し、③ 日常臨床で使用されているBiomarkerと予後との関連を明らかにすることであった。そのためには、まず欧米諸国と比較できる国際水準のAHF症例登録用ソフトを開発する必要があり、その登録システムそのものをインターネットを利用して汎用化し、医療施設からでも速やかに情報収集が可能と剃る必要がある。この作業により登録率を高め、かつ登録する医療関係者の労力を最小限に抑えることが可能となる。さらに、インターネットを通じてデータの解析結果を各医療施設はもとより一般にも適正な形で開示することで最新の情報を共有することが可能となる。 登録後の予後最終調査は退院後二年間まで追跡し、その二年間の間に当大学病院および複数の関東圏内の主要な循環器関連施設からのデータ収集体制を確立する。データの集積が千人規模に到達した段階で、重症度を考慮に入れた危険度補正死亡率(Risk Adjusted Mortality)の算出も可能となる。入院中の短期的な予後の評価や中期、遠隔成績の把握は重要な診療情報であり、また国民に還元されるべき情報でもある。これらを大規模で正確に把握するためには、アンケート形式での調査ではきわめて困難であり、レジストリというデータベース形式にて“正確”で“妥当”な指標を把握する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在も各施設で50~100名程度の登録が続いており、主な問題点について話し合いを行い、逐次アップデートを行なっている。また、各施設それぞれ1名のデータマネージャー(DM)を選出し、データ収集と各項目のvalidationに責任を持つこととした。さらに、データベースフォーマットソフトの作成を行い、ファイルメーカーベースでDropdown方式を多用し、手軽に入力できるものとした。また、外れ値に関しても自動的にピックアップできるようなプログラムを内包することとし、事前に入力エラーを予防する。これを各施設に配布し、使用している。 入力項目の選定はデータベースの質を決定する上できわめて重要であったが、平成24年度内に2度のデータベースミーティングを行い、項目のアップデートを行った。加えて、中長期的なフォローアップも開始されており、概ね順調に進んでいる。世界的にも様々な形で試行錯誤が行われている。我が国においては、国民の移動が国内に限定されることが多く、比較的に追跡調査を行いやすい環境にあるといえる。また、心不全の遠隔成績を得ることは、その後の診療や手技の選択にあたってきわめて有用な情報になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
主要学会(日本循環器学会、日本心臓病学会)期間中等に心不全データベースワーキンググルーブ会議とデータマネージャー会議を開催し、入力説明と結果のフィードバック、そして入力項目の選定や追加などを行うものとする。なお、Web Baseが稼働する平成25年度後半からの参加施設については、Web Baseにてテスト期間を設け、入力に慣れた段階で参加する予定にする。また、米国データベース会議への参加と情報の収集を常に行う。世界と共通の土俵でデータを管理するためにはアップデートされた情報を逐次入手する必要があり、全米より主要な研究者が集う米国データベース会議を活用して関係者と情報の交換を行い、発展的なデータベースの運用を目指す。 適宜入力フォームの不具合、項目の定義の微調整、入力プログラムの改良、といったハード面のメンテナンスを並行して行う。また、ハード面だけでなく、データの取り扱い管理法、臨床研究への応用方法、公表形式といったソフト面の規約を作成・整備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度400例前後を集計した後に、解析を行う予定であったが、現在小規模な解析をいくつか進めており、順次学会発表や学術誌への発表を行なっていく。 得られたデータの解析は、最初の数年は、基本統計量の算出にとどめ、大まかな傾向が統計的な意味を持って見えてきた段階で治療前重症度補正死亡率を算出し,医療の質向上に有用な施設レポートを参加施設に配布する。 本研究ではUMINをサーバーとし、インターネットを用いたデータ入力、validation、公表を行うこととにより、データ収集の手間と経済性、正確性が大幅に改善されると考えられる。また、こうしたフォーマットを用意することによって二次的に臨床治験や他の 心疾患のレジストリとして活用されることも期待される。 本研究における未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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