2011 Fiscal Year Research-status Report
蛋白脱アセチル化酵素SIRT1の核移行誘導による心不全治療の開発
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23591085
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00398322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 哲嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90199951)
堀尾 嘉幸 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30181530)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | SIRT1 |
Research Abstract |
SIRT1は核に局在するときにMn-SODの発現を亢進させ、酸化ストレスによる細胞死を抑制する(Tanno et al. J Biol Chem. 2007)。さらに、SIRT1活性化薬レスベラトロールの投与は拡張型心筋症ハムスターの死亡率を低下させた(Tanno et al. J Biol Chem. 2010)。まずSIRT1の核移行の分子機序の詳細を解明するためリン酸化による細胞内局在修飾の可能性について検討した。リン酸化部位予測アルゴリズム(Yaffe et al. Nat Biotechnol 2001;19:348-353)からPhosphatidylinositol-3-kinaseのリン酸化ターゲットがSIRT1に含まれることを見いだしPI3K/Aktの活性化がSIRT1の核内移行をもたらすことを示した。そこで、一連のSIRT1-GFP結合欠失変異体、点変異体を作成した。心筋細胞またはラット心筋芽細胞株のH9c2細胞にこれらの変異体を導入し、PI3K/Aktの薬理学的活性化によるSIRT1の細胞内局在の変化を観察することによりリン酸化部位のマッピングを行い、さらにSerまたはThr残基に点変異を導入した変異体の細胞内局在変化からSer517リン酸化によりSIRT1の核移行が誘導されることを見いだした。次に、蛋白-蛋白相互作用によるSIRT1の細胞内局在や機能修飾について検討した。PI3K/Akt活性化薬であるIGF1またはvehicleを培養液に加え、SIRT1抗体を用いて免疫沈降し、さらに沈降物を用いて2次元電気泳動をおこなった。IGF1添加後のみに得られるスポットを数個同定した。今後、このスポットをゲルから切り出しIGF1によりSIRT1との結合が促進される蛋白をmass spectrometryにより同定する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SIRT1のリン酸化部位を決定するための各種欠失変異体の作成に予想以上に時間を要した。さらに一部の欠失変異体はH9c2心筋芽細胞に導入する際にそのトランスフェクション効率が極端に低く、トランスフェクションの条件の最適化に難渋した。ただし、その他の実験は比較的順調であり目的である研究を着実に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおりに実験を進める予定である。まずSIRT1の核外移行シグナル(NES)に点変異を有し核のみに発現する変異体SIRT1の導入が細胞死を抑制するか、また核移行シグナル(NLS)に点変異を有し主に細胞質に発現する変異体SIRT1が細胞死を促進するか、in vitroで検討する。次にSIRT1の特異的活性化薬であるSRT1720の効果を検討する。初代培養心筋細胞またはH9c2細胞をストレスに暴露し、惹起される細胞死、ミトコンドリア機能障害に対するSRT1720の細胞保護効果を評価する。SRT1720の効果がSIRT1を介したものであるかを薬理学的SIRT1の阻害あるいはsiRNA法によるSIRT1のノックダウンにより確認する。SRT1720によるSIRT1活性化がもたらす遺伝子発現の修飾をDNAマイクロアレイにより解析する。特に、細胞死、ミトコンドリア機能、細胞内Ca2+ハンドリングを制御する遺伝子に注目する。次に in vivoの心不全モデルを用いてSRT1720の継続的投与が心不全の発症、進展を抑制するかを検討する。(1)冠動脈結紮によるラット心筋梗塞後心不全モデル、(2)胸部大動脈縮窄によるマウス左室肥大モデル、(3)ドキソルビシン投与によるマウス心不全モデル、(4)2型糖尿病マウスKK-Ayおよび2型糖尿病ラットOLETFを用いる。SRT1720の投与量は既報(Amy et al. Genes Dev. 2010;24:1403-17)を参考とし100 mg/kgとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物の購入(マウス、ラット)、各種試薬の購入(SRT1720など)、消耗品の購入、学会出席費用(アメリカ心臓協会、日本循環器学会、ヨーロッパ心臓学会など)などを予定している。H23年度は多くの消耗品、試薬を必要とする予備実験が順調に進みデータが得られた。そのため試薬や消耗品、動物の購入が当初予測していたよりも少なく済んだため残額が生じた。
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Research Products
(6 results)