2011 Fiscal Year Research-status Report
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23591092
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
針谷 敏夫 明治大学, 農学部, 教授 (70135557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 充代 (大橋 充代) 明治大学, 農学部, 講師 (20445860)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 周産期心筋症 / プロラクチン |
Research Abstract |
研究目的 周産期心筋症(PPCM)は、それまで健康だった女性が妊娠を機に心不全を発症する特異な心筋症である。長らく原因不明であったこの疾患の原因について、授乳ホルモンであるプロラクチンがプロテアーゼ切断を受けることにあるという報告が2007年になされた。本研究の目的は、周産期心筋症と妊娠高血圧症候群の検体血清を用い、(1)切断プロラクチンおよびその切断酵素の測定系を確立することと、(2)切断プロラクチン持続投与による心筋症モデル細胞および周産期心筋症モデルマウスの作成と解析を行うことである。研究実施計画 平成23年度は「切断プロラクチンおよびその切断酵素の測定系を確立」することを中心に研究を行い、以下の実績を得ることが出来た。検体中から、約11kDa-18kDaの切断プロラクチンを検出した。カテプシンDによる切断プロラクチンは16kDaであるが、全てのPPCM検体で16kDaの切断プロラクチンが検出された。次に、16kDaの切断プロラクチンに限り数値化を行った。その結果、PPCM検体では切断プロラクチン量が約3倍と健常妊娠者よりも有意に高い測定値を示した。また、PPCM検体では診断3ヶ月後、半年後、1年後においても切断プロラクチン値が高い傾向にあった。この結果は、切断プロラクチン値が妊娠前から高かったという可能性も否定できないが、診断1年後の検体数が少ないため、まだ未解明である。加えて、ブロモクリプチン処置を施したPPCM検体では、未処置のPPCM検体と比べて切断プロラクチンの低下が見られたが、健常妊娠者よりは高い傾向にあった。カテプシンD活性では、PPCM診断時、診断2週後において健常妊娠者と比較し200%と有意に高いカテプシンD活性を示した。さらに、PPCM検体の診断時において、切断プロラクチン値と左室内径短縮率が有意な負の相関関係を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 23 年度は「周産期心筋症における診断方法の開発」とし、プロラクチン切断酵素である活性型カテプシンDおよび切断プロラクチンの測定系を確立することを目的としていた。 「カテプシンD測定系の開発」に関しては、実験間誤差は非常に小さく、測定系は一見完成しているようにも見えるが、ドイツのハノーファー医科大学Dr. Denise Hilfiker-Kleinerらが発表している活性型カテプシンDの測定値とは大きく異なることが問題であった。しかしながら実際にドイツに出向き、詳細プロトコルのすり合わせを行うことで同一の測定方法を確立することができた。「切断プロラクチン測定系の開発」に関しては、検出には再現性はあるが微量なため誤差が大きいことが問題であった。しかしながら、実験技術を向上させることで再現性のある測定値を得ることが可能となった。 また、国立循環器病研究センター周産期科神谷医師の立ち上げたPregnancy Associated Cardiomyopathy and Hypertension-Essential Researc (PREACHERプロジェクト)を通して、試験的に切断プロラクチン量及びカテプシンD活性測定を行い、測定結果を担当医に返却するに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
「周産期心筋症における診断方法の開発」は、順次検体測定を継続して行う。またこれまでの問題点として1測定にかかるコストとタイムのパフォーマンスが問題となっている。この点を改善するためにさらなる実験技術向上を目指す「周産期心筋症モデル細胞およびモデルマウスの作成と解析」は、昨年度研究を開始している。まず心筋症モデル細胞の作成と解析では、切断プロラクチンは直接心筋細胞に作用するのではなく、血管内皮細胞を介して作用するという結果が得られている。 妊娠高血圧症候群を伴わない周産期心筋症モデルマウスの作成と解析は、現在のところ、モデルマウスの確立に問題がある。問題となっているのは、高プロラクチンマウスの妊娠率の悪さとモデルマウスでのプロラクチン上昇があまり確認されないことである。今年度はまず、その点を改善する。 続いて、解剖時の(心臓重量/脛骨長)と(心臓重量/体重)を計算し、心臓肥大を判断する。続いて、マウス血清内にHis Tag付加切断プロラクチンが検出されることを確認する。その後、血清中のカテプシンD活性、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を測定し、心機能障害の程度判断を行う。また、組織学的手法を用い。マッソン・トリクローム染色による心臓の線維化率、左心室の内径変化、毛細血管の占有率、切断プロラクチン局在を解析する。以上の解析後、ブロモクリプチンを投与し症状が改善されることを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、経費の主要な用途は消耗品である。モデル細胞、マウス作成に必要な培養機器、動物飼育費に経費を用いる。また作成したモデル細胞、マウスの解析に必要な試薬や消耗品を購入する。 なお、我々の研究成果を発表するための、国内学会(下垂体研究会、繁殖生物学会)、国際学会(米国内分泌学会)の旅費は研究代表者、研究分担者に関しては明治大学より出張旅費が支給されるため計上していない。研究協力者である大学院生へも明治大学大学院より発表補助金が支給されるので計上していない。同様に、論文発表際の英文校閲および印刷費は大学内補助金を使用可能なため、計上していない。
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Research Products
(9 results)