2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化脂質によるアンジオテンシン2受容体活性化の機序の解明と病態生理学的意義の検討
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23591102
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 浩一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00528424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樂木 宏実 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252679)
大石 充 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50335345)
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Keywords | G蛋白共役型受容体 / 細胞内シグナル伝達経路 / Angiotensin II受容体 / 酸化LDL受容体 / 動脈硬化 / 複合体形成 |
Research Abstract |
目的1)酸化LDLによるAT1活性化の機序の詳細な解明 細胞膜上でLOX-1とAT1が特異的に結合していることで、酸化LDLがAT1を活性化することを更に詳細に検討した。LOX-1とAT1の結合の特異性についてはLOX-1と相同性の高いDectin-1がAT1と結合しないことをin situ PLA法を用いて証明していたが、LOX-1とAT1の結合部位を同定するためLOX-1とDectin-1のキメラベクターを作成しin situ PLA法を施行した。その結果、AT1はLOX-1の細胞内ドメインと膜貫通ドメインの中間領域で結合していることが示された。また、Dectin-1を細胞外ドメイン、LOX-1を細胞内ドメインに持つキメラ蛋白はAT1と結合し、Dectin-1のリガンドであるdepleted zymosanはこのキメラ蛋白とAT1依存性に細胞内シグナルを活性化することが示された。これらの結果より酸化LDLによるAT1の活性化にはLOX-1とAT1の細胞膜上での結合が重要であることが示された。 目的2)酸化LDLによつAT1活性化の病態生理学的意義の解明 これまでに酸化LDLがAT1依存性にマウスの血圧を一過性に上昇させることを示したが、この機序が血管収縮に基づくものか検討した。マウスから摘出した腹部大動脈のリングの収縮を、マグヌス管を用いて検出したところ、酸化LDLにより腹部大動脈の一過性の収縮を認めた。この反応はACE阻害薬では抑制されず、ARBで抑制されAT1依存性であることが確認された。 上記内容の一部は論文投稿し現在revise中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に対する進捗状況は以下の通りである。 目的1) 酸化LDLによるAT1活性化の機序の詳細な解明 計画A; 酸化LDLによるAT1活性化の更なる検証 計画B; AT1とLOX-1間のヘテロダイマー形成の普遍性と意義の検証 計画C; AT1とLOX-1の相互作用の更なる検証 実績の概要に示した如くLOX-1とAT1の結合機構に関しては概ね解明できた。但し、立体構造解析に関しては技術的な困難さがあり現時点では解明できていない。 目的2) 酸化LDLによるAT1活性化の病態生理学的意義の解明 計画D; 動物モデルを用いた酸化LDLによる血管への影響のAT1依存性に関する検討 計画E; アンジオテンシンII非依存性、AT1依存性の動脈硬化促進作用の検討 計画Eはアンジオテンシノージェン欠損マウスの繁殖に依然遅延が生じているため遅れが生じており、マウス提供者である筑波大学深水博士と共同し繁殖継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
目的1) アンジオテンシンIIによるAT1活性化に続発するAT1の不活化が酸化LDLによっても惹起されるか検討する。 目的2) 動脈硬化における同現象の病態生理学的意義を検討するために現在Angiotensinogen/ApoE同時欠損マウスを作成しAT1依存性、アンジオテンシンII非依存性の動脈硬化進展を検証する計画を今後も進行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
策定した研究計画A-Eの内、既に終了したものを除き下記の研究計画を推進する。 目的1) 酸化LDLによるAT1活性化の機序の詳細な解明 アンジオテンシンIIによるAT1活性化はβarrestin-2依存性にAT1のinternalizationを惹起しAT1を不活性化するが蛍光ラベルしたβarrestin-2を用いてこの過程を観察することが可能である。酸化LDLにおいても同様の機序でAT1の不活化が起こるかGFPを付加したβarrestin-2を用いて観察する。 目的2) 酸化LDLによるAT1活性化の病態生理学的意義の解明 ApoE単独欠損マウス、アンジオテンシノージェン(AGT), ApoE同時欠損マウス、AT1a,ApoE同時欠損マウスの3グループを作成し過去の論文に従い生後12週より高脂肪食を7週間投与し大動脈と大動脈洞の動脈硬化の進行度をoil-red O染色を用いて評価する。各マウスより採取した大動脈切片を用いてルシゲニン化学発光法やDHE染色などにより酸化ストレスの程度を比較検討する。またApoEとアンジオテンシノージェン同時欠損マウスに動脈硬化の進展を認めた場合ARBの投与により進行を抑制しうるか検討しアンジオテンシンII非依存性、AT1依存性のARBの新しい抗動脈硬化作用があるか否かを検討する。
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