2011 Fiscal Year Research-status Report
エリスロポエチン受容体アゴニストによるマクロファージ泡沫化抑制の分子機構
Project/Area Number |
23591108
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
上羽 洋人 自治医科大学, 医学部, 講師 (80316546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 正のぶ 自治医科大学, 医学部, 教授 (40161286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / erythropoietin / マクロファージ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
我々は平成20-22年度の科学研究費補助金(基盤研究(C))による研究でエリスロポエチン(EPO)受容体アゴニスト(HBSP)の抗動脈硬化作用について検討を行い、HBSPが家族性高コレステロール血症の動物モデルであり心筋梗塞を自然発症するWHHLMIウサギを用いた実験において冠動脈の動脈硬化病変を有意に抑制することを明らかにした。本研究の目的はこの研究成果を発展させてHBSPと生物学的効果が同等でより安定したペプチドであるARA290のマクロファージ泡沫化に及ぼす影響とその細胞内シグナル伝達を検討することである。マクロファージの培養系に関しては末梢血ヒト単球(PBMC)およびヒト単球由来のTHP-1をそれぞれM-CSFおよびPMAを用いてマクロファージへ分化誘導しin vitro培養系を確立した。まず、EPOおよびARA290がマクロファージに対して直接作用することを確認するために既報(Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(32):14357-14362.)の実験系を用いてWestern blot法により細胞内シグナル伝達系を調べたところ、EPOおよびARA290はともにマクロファージへ分化したTHP-1においてERK1/2とAktを2相性にリン酸化(活性化)することが明らかとなった。この2相性のリン酸化パターンはEPOおよびARA290による刺激後5-15分と120-180分にピークを有しており、既報(Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(32):14357-14362.)の血管内皮細胞でみられた1相性のリン酸化パターンとは明らかに異なっていた。EPOおよびその誘導体のマクロファージに対する直接作用に関してはほとんど解明されておらず、本研究の今後の進展が待たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト単球由来のTHP-1に関してはPMA(100 nM, 24時間)を用いてマクロファージへ分化させる培養系を以前の研究で使用しており(J Am Coll Cardiol. 2002;39(5):256A.)、今回も比較的スムーズに培養系を確立できた。しかしながら、末梢血ヒト単球(PBMC)に関してはサプライヤーからの1バイアル当たりの細胞数が少なくM-CSFに対する反応もバイアル毎に差異があり、培養系の確立に時間を要した。このため、PBMC由来マクロファージの泡沫化実験に遅れが生じており、THP-1由来マクロファージを用いたEPOおよびARA290のシグナル伝達の実験を先行させて研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要・達成度で述べた点を踏まえて平成24年度はin vitro実験を以下のように一部変更して推進する予定である。1)PBMC由来のマクロファージを用いてWestern blot法によりEPOおよびARA290のシグナル伝達を検討する。2)マクロファージの泡沫化誘導:PBMCおよびTHP-1由来のマクロファージ培養系にvehicle(PBS)、酸化LDL(50 μg/ml)、ARA290(2.5 ng/ml) または酸化LDL(50 μg/ml) + ARA290(2.5 ng/ml)を加えて24時間培養し、泡沫細胞へと誘導する。3)脂質蓄積量の評価:2)の細胞を4%paraformaldehydeで固定後Oil Red Oを用いて染色し、デジタル顕微鏡システム(BX51/DP72, Olympus)で定量評価する。4)炎症性サイトカインおよびMMP-9の測定:2)で得られた培養上清を用いてマクロファージ泡沫化の過程で産生される炎症性サイトカイン(TNFα、MCP-1など) およびプラークの不安定化に関与するMMP-9を既報の実験系(Atherosclerosis. 2008;196(1):129-35.)を用いて測定し、これらの産生に及ぼすARA290の影響を検討する。平成25年度はin vivoにおけるARA290の効果を検討するためapoE欠損高脂血症モデルマウスを2群に分けてARA290またはコントロールペプチドを8週間投与し、既報(Proc Natl Acad Sci USA. 2010;107(32):14357- 14362.)に基づいて大動脈の病理組織学的検討を行い、動脈硬化病変における脂質沈着およびアポトーシス等に及ぼすARA290の効果を評価する。以上の結果を解析してマクロファージ泡沫化抑制の分子機構を明らかにし、論文に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在までの達成度で述べた通り、PBMC由来マクロファージ培養系の確立に時間を要したため、前年度の直接経費に未使用額が生じた。このため、平成24年度請求額と合わせて次年度所用見込額は2,450,000円となっている。これらの研究費は下記の通り平成24年度のin vitro実験における消耗品等に使用する予定である。消耗品等 金額 消耗品等 金額Human PBMC Kit 1,000,000 Oxidized LDL 150,000ELISA Kit 400,000 siRNA Kit 200,000Western blot用抗体 700,000合計 2,450,000
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[Presentation] Cardioprotective Properties of Helix B Surface Peptide, a Nonerythropoietic Derivative Mimicking the 3D Structure of Erythropoietin2011
Author(s)
Ueba, H., Brines, M., Yamin, M., Umemoto, T., Ako, J., Momomura, S., Cerami, A., Kawakami, M.
Organizer
The 75th Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Society
Place of Presentation
Yokohama
Year and Date
August 3, 2011