2011 Fiscal Year Research-status Report
新規遺伝子改変マウスによるのCCL1の呼吸器細菌感染症における機能解析
Project/Area Number |
23591111
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
井上 純人 山形大学, 医学部, 助教 (70466621)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 呼吸器 / 感染症 / 慢性閉塞性肺疾患 |
Research Abstract |
肺特異的CCL1発現マウスの作成のため、マウス胚細胞へSP-CプロモーターCCL1プラスミドベクターをマイクロインジェクションにより導入した。その後雌マウス卵管へ戻してやることによって、キメラマウスを作製した。野生株のマウスと交配して得られた子孫からGenotypingにより遺伝子改変マウスを選抜することに成功した。まず作成された遺伝子改変マウスの表現型を感染などの負荷をかけない状態で検討した。遺伝子改変マウスの外観や肺組織所見は、野生型マウスと比較して有意な差を認めなかった。血清及び気管支肺胞洗浄液を採取して検討を行ったところ、遺伝子改変マウスにおいては気管支肺胞洗浄液中のCCL1濃度が野生型マウスと比較して有意に高値であることが示された。更に肺組織内において、CCL1過剰状態での気管支肺胞洗浄液中の肺胞マクロファージの動態を検討した。肺胞マクロファージの表面抗原であるF4/80、CD11bの発現を、フローサイトメトリーを用いて解析した。気管支肺胞洗浄液中の肺胞マクロファージ表面抗原解析では、F4/80陽性細胞は、野生型マウスでは43.5%、遺伝子改変マウスでは35.4%と、遺伝子改変マウスで少なかった。これらの結果から、生体内において肺組織におけるCCL1過剰状態は、肺胞マクロファージの表面抗原の発現に影響を与えている可能性が示唆された。以前の我々の知見では慢性閉塞性肺疾患(COPD)における急性増悪の予後にCCL1の遺伝子変異が関与していることを疫学的に示している。COPDの急性増悪の原因として気道感染は重要であり、本研究により肺組織におけるCCL1の役割が明らかにされ、COPDにおける気道感染のメカニズムが解明に近づくことが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度においては、遺伝子改変マウスを作成の上確立をし、野生型マウスとの表現型の差異を確認することが計画されていた。現在までの研究で、遺伝子改変マウスは確立され、感染などの刺激がない状態での表現型の確認が行われた。また気管支肺胞洗浄液中のCCL1の発現量の検討や気管支肺胞洗浄液中のマクロファージを解析し、表面抗原の発現を検討した。これらにより、遺伝子改変マウスでは、肺組織内において免疫機能の最も重要な役割を担うマクロファージの動態に変化がみられることが示唆された。今後感染症における検討が必要と考えるが、無刺激の状態で評価がなされたことは、今後のCCL1の機能解析において重要な基礎データがそろったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず遺伝子改変マウスにおける急性細菌性気道感染後の病態の検討を行う。具体的には、個体数が確保された遺伝子改変マウスとコントロールマウスに対して、急性細菌性気道感染を誘発し、以下の項目を検討する。(1)感染後の生存率を比較する。(2)気管支肺胞洗浄(BAL)液中の肺胞マクロファージ、好中球、リンパ球の動態を検討する。(3)BAL液及び血清中の炎症性サイトカイン、ケモカインの動態をELISA法により検討する。(4)気道感染後の肺組織の変化を観察する。(5)肺組織中の蛋白やmRNAを採取し、Western blotting やRT-PCRにより炎症性サイトカイン、ケモカインの動態を検討する。次に遺伝子改変マウスにおける慢性細菌性気道感染後の病態の検討を行う。慢性閉塞性肺疾患の急性増悪においては、気道への細菌の定着(Bacterial colonization)がその病態に深く関与していると考えられている。これまでのCCL1における検討では急性感染症に対する報告がないため、上記のような急性感染症による検討では、CCL1の機能が明らかにされない可能性もある。そこで遺伝子改変マウスとコントロールマウスへ対して、慢性的細菌性気道感染を誘発し、以下の項目を検討する。(1)感染後の肺内の菌量の推移を検討する。(2)BAL液中の肺胞マクロファージ、好中球、リンパ球の動態を検討する。(3)BAL液及び血清中の炎症性サイトカイン、ケモカインの動態をELISA法により検討する。(4)BAL液中のリンパ球の表面抗原をFlowcytometryにより評価し細胞性免疫機能を解析する。(5)気道感染後の肺組織の変化を観察する。(6)肺組織中の蛋白やmRNAを採取し、Western blotting やRT-PCRにより炎症性サイトカイン、ケモカインの動態を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
行われる研究は山形大学の研究室の設備にて全て施行可能であるため、新たな設備費用は不要である。そのため請求した研究経費の大部分は消耗品に当てられている。細菌性気道感染を誘発する実験においては、本遺伝子改変マウス及びコントロールマウス共に相当数の個体が必要となるため、マウス維持費に必要な経費が必要である。また細菌感染症の検討を行うに当たり、細菌培養のための培地が必要であり、そのための予算が必要である。現在までに得られた知見を学会などで発表し、議論を行うために学会出席のための費用や、論文作成のための費用が必要である。
|
-
[Journal Article] Oxidized Phospholipid, 1-Palmitoyl-2-(9'-Oxo-Nonanoyl) - Glycerophosphocholine (PON-GPC), Produced in the Lung Due to Cigarette Smoking, Impairs Immune Function in Macrophages2012
Author(s)
Kimura T, Shibata Y, Yamauchi K, Igarashi A, Inoue S, Abe S, Fujita K, Uosaki Y, Kubota I
-
Journal Title
Lung
Volume: 190
Pages: 169-182
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-