2011 Fiscal Year Research-status Report
Thバランスの制御による難治性喘息に対する新規治療法の探索
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23591112
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森島 祐子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10375511)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 難治性喘息 / Th17 |
Research Abstract |
初年度(2011年度)においては、Th2細胞の特異的転写因子であるGATA-3を過剰発現させたマウスと、Th17細胞の特異的転写因子であるRORγtを過剰発現させたマウスを用いてOVA抗原特異的気道炎症のモデルを確立した。また、いずれの系統の抗原特異的気道炎症モデルにおいても、OVA抗原曝露による気道抵抗の上昇がみられ、喘息のモデルになり得ることを確認した。GATA-3過剰発現マウスではTh2細胞優位の環境となり、ステロイド反応性の好酸球性気道炎症が誘導された。一方、RORγt過剰発現喘息マウスではTh17細胞優位の環境となり、ステロイド抵抗性の好中球性気道炎症が誘導された。以上より、Th2/Th17サイトカインバランスがステロイド反応性を規定する要因の一つである可能性が示唆された。 これらの研究成果は、第51回日本呼吸器学会総会 (4月、東京)、2011 International Conference of American Thoracic Society (5月、Denver)、第61回日本アレルギー学会秋季学術大会 (4月、東京)において発表した。 次年度(2012年度)は、Th2細胞偏向性やTh17細胞偏向性がTh1細胞/ Th2細胞/ Treg細胞/ NKT 細胞や、サイトカイン等のメディエーターへ与える影響を解析する。さらにステロイド抵抗性好中球性気道炎症において鍵となる炎症性メディエーターを探索するとともに、ステロイド抵抗性を獲得した機序について検討する。標的となるメディエーターについては、抑制実験を行い、ステロイド抵抗炎症を制御できるか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験にはC57BL/6系のGATA-3過剰発現(GATA-3-tg)マウス、RORγt過剰発現(RORγt-tg)マウス、対照群として同系の野生型(WT)マウスを使用し、OVA100μgをday0およびday14に皮下注(感作)し、day28にOVA10μgを経鼻的に投与(曝露)した。OVA曝露24時間後に各群の気道抵抗を測定し、48時間後に気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数、細胞分画を算定した。また、肺組織の(HE染色)にて気道炎症のフェノタイプを確認した。さらに、肺リンパ球の細胞内サイトカインやBALF・肺組織におけるサイトカインの発現を解析した。一部のRORγt-tgマウス、GATA-3-tgマウス、WTマウスに対してはOVA曝露4時間前にdexamethasone(DEX)を50μg皮下注し、ステロイドへの反応性を検証した。 抗原感作/曝露の有無を問わず、GATA-3-tgマウスでは肺内IL-4産生T細胞の割合やBALFおよび肺組織中のIL-4濃度が増加し、RORγt-tgマウスでは肺内IL-17A産生T細胞の割合やBALFおよび肺組織中のIL-17A濃度が増加していた。OVA感作/曝露-WTマウスとGATA-3-tgマウスではBALF・肺組織中の好酸球増多を認め、その程度はGATA-3-tgマウスで顕著であった。一方、RORγt-tgマウスでは、好中球数の増多を顕著に認めた。気道過敏性についてはいずれの群でも同様に認められた。DEXを投与すると、抗原曝露したWTマウスやGATA-3-tgマウスでは気道への好酸球やリンパ球浸潤は著明に抑制されたが、RORγt-tgマウスでは好中球浸潤は抑制されなかった。 以上、2011年度に予定していた実験はおおむね順調に完了したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
RORγt-tg喘息マウスとGATA-3-tg喘息マウスとでステロイド反応性が異なっていたことから、ステロイド抵抗性を獲得した機序について検討する。ステロイド抵抗性にはリガンド結合活性をもたないglucocorticoid receptor β(GRβ)の増加が関与することが報告されており、我々もGRβに注目し、RORγt-tg喘息マウスのBALFや肺組織においてGRα/GRβが量的、質的に変化していないか解析する。加えて、ステロイドがクロマチンレベルで抗炎症作用を発揮するためにはactivating histone deacetylase 2 (HDAC2)によるヒストン脱アセチル化が重要であるが、このHDAC2の発現も検討する。 さらにステロイド抵抗性好中球性気道炎症において鍵となる炎症性メディエーターを探索し、GRβおよびHDAC2の発現がそれらのメディエーターの発現と相関、あるいは逆相関しているか解析する。加えて、ステロイド抵抗性好中球性気道炎症において特異的に変動するメディエーターに対する抑制実験を行い、ステロイド抵抗炎症を制御できるか検証する。想定しているメディエーターは、Th17から産生されるIL-17A, IL-17Fの他、IL-17受容体発現細胞を介して放出されるIL-6やG-CSF, MIP-2, MMP-9, TNFαなどである。 以上の研究を行うために研究費を使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、マウス購入費・飼育費のほか、試薬類(RNA抽出、PCR関連試薬、染色液など)や、FACS解析に関連する抗体、標的メディエーターに対する中和抗体、細胞内サイトカインを解析する際の培養に関わる培養液および胎児牛血清、ディスポーザブル機器(チューブ、ピペット、シャーレ、培養用品など)の購入のために使用する予定である。
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[Presentation] Role of Th17 cells in modulating steroid responsiveness in a mouse model of ovalbumin-induced airway inflammation2011
Author(s)
Ano S, Morishima Y, Ishii Y, Yageta Y, Yamadori T, Masuko H, Kaneko Y, Fujita J, Ohtsuka S, Matsuyama M, Kawaguchi M, Sakamoto T, Hizawa N
Organizer
2011 International Conference of American Thoracic Society
Place of Presentation
Denver(アメリカ)
Year and Date
2011年5月15日
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