2012 Fiscal Year Research-status Report
肺胞壁断裂の機序解明への新たなるアプローチ:加齢による肺の力学機能低下を探る
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23591125
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
友田 恒一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90364059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 雅則 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (80271203)
木村 弘 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20195374)
大崎 茂芳 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (90273911)
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Keywords | 肺胞壁断裂 / 力学機能 / 加齢 / コラーゲン線維 / 配向性 |
Research Abstract |
肺気腫は、肺胞壁の断裂が主体である慢性閉塞性肺疾患であり60歳代後半から70歳代に発症する。しかし長年の喫煙により肺胞壁が断裂するメカニズムは未だ明らかにされていない。申請者は周期的で不均一な呼吸運動による力学負荷に対してコラーゲン線維配列が再構築しながら肺構造維持に寄与していることを明らかにしてきた。本研究ではコラーゲン線維には力学負荷に対する耐容性が存在し、耐容限界を超える回数の呼吸運動による力学負荷を受けるとコラーゲン線維の力学強度が低下し、肺の力学機能が低下するとの仮説を立てた。この仮想に基づくと、喫煙により脆弱化した肺は、高齢になると加齢による力学機能低下が加わり呼吸運動による力学負荷に対応できなくなり肺胞壁の断裂がおこり気腫肺ができると説明することができる。この仮説を実証すべくヒト肺における加齢による力学機能の変化に焦点をあてて肺気腫における肺胞壁断裂のメカニズム解明の糸口を得ることが本研究の目的である。本年度は病変のない肺標本および軽度肺気腫の肺標本からコラーゲン線維の」配向性および力学特性を測定するサンプルを調整した。病変のない冠状断面の肺標本ではコラーゲン線維配向性は脊椎方向と平行方向に配列していた。各サンプル間で著名な変化は認めれらなかった。肺気腫を認める冠状断面の肺標本では気腫病変が多い部位でのコラーゲン線維配向性の配向度が高くなる領域が認められたが配向角度は一定方向への配列は認められなかった。気腫の発症進展にともないコラーゲン線維の配列が再構築されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
早期の気腫病変を認める肺標本は収集できたが 年齢別(とくに若年者 高齢者)の病変のない肺標本の収集が十分できなかった。 配向性測定器(マイクロ波方式による配向性測定システム)のコンピュ―タのOSが windows 95と古く測定中に動作しなくなりwindows7へのバージョンアップに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
年齢別および肺気腫の肺標本を可能な限り収集し、多くのサンプルでの肺の力学特性を評価し肺の力学的特性の加齢による変化が肺気腫の発症のどのように関わるかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年齢別の病変のない肺標本および早期の肺気腫標本からサンプルを作成し加齢による肺の力学特性の変化が肺気腫の発症の関わる役割について検討する。 A)コラーゲン線維配向性の測定:マイクロ波を回転するシート状サンプルに照射し、マイクロ波の透過強度の角度依存性を測定することでコラーゲン線維の配向性を求めるマイクロ波方式(Osaki S, Nature,347, 132 (1990))を用いて調製したシート状肺サンプルにおけるコラーゲン線維配向性を5mm間隔で測定し、冠状断面での分布図を作製する。 B)力学強度の測定:1)水平方向および垂直方向評価用に5mm×15mmの大きさに調製して切り出す。2)破断限界の測定調製した肺サンプルを用いて引っ張り試験を行い(Osaki S, Nature 384, 419 (1996))、力学強度―伸び曲線を作成し破断した際の破断強度および破断伸びを測定する。3) 測定後水平方向および垂直方向の力学強度分布図を作製する。 上記の二つの観点から各サンプルの力学特性の相違について検討する。
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