2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患におけるオキシステロールの役割の解明
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23591126
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
杉浦 久敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20445092)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / オキシステロール |
Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)の有病率及び死亡率は、増加の一途を辿っており、COPDの病態解明および治療法の開発は、急務である。COPDの病態に関与する炎症性メディエーターとしては、LTB4, IL-8, TNF-α, IL-1β等が報告されている。また、酸化ストレスには、活性窒素種をはじめO2-, H2O2等が報告されている。これらCOPDの病態に関連するメディエーターの多くはサイトカインやケモカイン、酸化・窒素化物で、それ以外の病態関連メディエーターは現在までのところ全く不明である。COPDの病態を解明し、創薬という観点から新たなCOPD病態関連メディエータ―の探索は極めて重要と考えられる。本研究の目的は、新規炎症性メディエーターの探索およびCOPD患者の肺・気道での発現の検討、その生物活性を評価することでCOPDの病態に関連する新たなメディエーターの確立することである。我々は、すでに約50名の肺癌患者に精密肺機能検査を施行し、健常人およびCOPDに分類し、肺組織を収集している。得られた末梢肺組織をもとにマイクロアレイを施行した。q-PCRを施行し、健常人およびCOPD患者における末梢肺組織における遺伝子発現について報告した。我々は、COPD患者の末梢肺組織において強発現していたcholesterol 25-hydroxylaseに着目した。Cholesterol 25-hydroxylase は、動脈硬化病変で強発現しており、cholesterolを水酸化し、最終産物として25-OH cholesterol(25-HC)を生成する。近年の報告では、25-HCは単球などの細胞に作用し、炎症を惹起することが知られている。本研究ではoxysterolsのCOPDの病態に関して多角的に検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オキシステロールのうち、25-hydroxycholesterolと27-hydroxycholesterolの分泌がCOPD患者の気道で生じていることを解明し、さらにその発現程度は呼吸機能とも密接に関連することを解明した。これらの研究成果は、著名な英文呼吸器雑誌であるRespirology誌、Chest誌に投稿し、受理されている。また、それぞれのオキシステロールの生物活性について、線維芽細胞を用いた検討で、気道のリモデリング‐線維化について検討を行っている。線維化の指標としては、筋線維芽細胞のマーカーであるα-SMAの発現、collagen I, fibronectinの産生、遊走能について検討を行い、オキシステロールには強力な組織リモデリング作用があるという結果を得ている。これらの結果についてはすでに国内外の関連学会等で発表され、現在、呼吸器著名英文雑誌に投稿するため準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記の方針に沿って研究を進める予定である。(1)マウス喫煙曝露モデルにおけるcholesterol 25-hydroxylaseおよび25-HCの役割の検討作成したcholesterol 25-hydroxylaseのノックアウトマウスを用いて、長期喫煙曝露モデルを作成し、肺気腫への進展および炎症性メディエーターの産生等について検討を行う。また外因性に25-HCを投与した際の肺気腫への進展や炎症性メディエーターの産生について検討を加える。(2)酸化/窒素化ストレスと25-HCとのクロストークの検討COPDの気道では酸化/窒素化ストレスが過剰に生じていると考えられる。In vitroの系を用いて、酸化/窒素化ストレス過剰状態を再現し、その際に25-HCが、前述した気道リモデリング効果をさらに増強するか否かについて検討を行う。以上の検討を新たに開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、下記の研究目標の達成のために使用する。(1)COPDと健常人におけるcholesterol 25-hydroxylaseの発現程度と部位および呼吸機能の関連 (2)COPDと健常人におけるcholesterol 25-hydroxylaseの最終産物である25-HCの生成程度と呼吸機能の関連 (3)マウス喫煙曝露モデルにおけるcholesterol 25-hydroxylaseおよび25-HCの役割の検討 (4)25-HCのCOPDの病態に関連する細胞(気道・肺胞上皮細胞、好中球、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞)への作用のin vitroにおける検討 (5)酸化/窒素化ストレスと25-HCとのクロストークの検討支出は、試薬や抗体、ピペットや培養液などの購入費用に計上される予定である。また、研究成果については、国内外の主要学会で発表する予定で、その旅費も計上する予定である。
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