2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患におけるオキシステロールの役割の解明
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23591126
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉浦 久敏 東北大学, 大学病院, 講師 (20445092)
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Keywords | 酸化コレステロール / 酸化ストレス / リモデリング |
Research Abstract |
本年は計画書に従って、オキシステロールの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態に対する役割を見るために、①オキシステロールの蛋白分解酵素に対する刺激作用、②オキシステロールによる細胞老化に対する作用を検討した。その結果、オキシステロールはヒト肺線維芽細胞からのマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)の分泌を刺激し、この経路には転写因子であるNF-kBが関与していることが明らかとなった。本内容に関しては、英文誌に投稿準備中である。また②の細胞老化に対する作用に関しては、オキシステロールは肺線維芽細胞を刺激し、細胞老化を促進することが明らかとなった。これは、老化関連蛋白の発現誘導、細胞増殖の抑制、老化関連β―ガラクトシダーゼの細胞内蓄積をもたらすことが明らかになった。今後は老化の機序として、老化を促進するといわれるプロスタグランディンEの過剰産生や酸化ストレスについて検討していく予定である。本研究についても現在、論文投稿準備中である。次段階としては、動物モデルを用いてタバコ曝露による気腫性変化を抑制するかについて検討し、その病態における意義および作用機序について明らかにすることを計画している。本研究によって、COPDで生じている蛋白分解酵素の過剰産生や肺の重要な構成細胞である線維芽細胞の老化の原因を解明する可能性があり、現状で治療法が存在せず、本邦に約530万人存在するといわれているCOPDの原因治療法の開発につながる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、オキシステロール関連の研究として、4報の英文誌に投稿し受理されている。①COPD患者の肺組織や喀痰において25-ヒドロキシコレステロールの産生が増加しており気流制限と関連し、好中球性炎症を惹起する可能性がある(Sugiura H et al. 2012 Respirology)、②25-OHCがToll様受容体のシグナリングを増強する(Koarai A, Sugiura H et al. 2012 Respir Res)、③27-OHCがCOPD患者の肺、気道で過剰産生されており、気流制限に関与し、末梢気道の線維化に関係する可能性がある(Kikuchi T, Sugiura H et al. 2012 Chest)、④25-OHCがNF-kBを介して気道のリモデリングに関与する可能性がある(Ichikawa T, Sugiura H et al. Exp Cell Res 2013) 上記の論文に関しては、計画書に示した内容に沿ったものであり、計画は概ね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、タバコ曝露肺気腫モデルを用いて、オキシステロールの阻害剤や産生酵素であるcholesterol 25-hydroxylaseのノックアウトマウスを用いて、これらのオキシステロールがタバコによる肺気腫への病理学的変化を抑制するかどうかについて検討を行う。検討には、呼吸生理学的変化やオキシステロールの産生および酸化ストレスの程度、炎症性メディエーターの産生、MMPsの産生について検討する予定である。また、近年、COPDの病態で注目されている細胞老化やオートファジー、アポトーシスについても同モデルを用いて検討する予定である。これらのin vivoのデータからin vitroの実験系で示されてきたオキシステロールの生物活性がその阻害剤や遺伝子の欠損によって抑制されるかどうかを明らかにすることができる。また、25-OHCだけでなく27-OHCの産生やその生物活性についても同モデルを用いて明らかにすることができると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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