2011 Fiscal Year Research-status Report
核内転写因子cJun阻害を利用した非小細胞肺癌の癌幹細胞を標的にした治療法の検討
Project/Area Number |
23591132
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木下 一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40343008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 康 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10374513)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肺癌 / cJun / 癌幹細胞 / EZH2 |
Research Abstract |
研究代表者は多くの増殖シグナルに関与する核内転写因子cJunの阻害が肺癌細胞の増殖とin vivo造腫瘍能を抑制することを報告し、その標的遺伝子を同定した。一方、肺癌を含む多くの悪性腫瘍は、幹細胞の性質を持ち薬剤抵抗性を示す少数の細胞集団(癌幹細胞)から形成されることが明らかになってきたが、乳癌幹細胞の自己複製にはcJunが必須であることが報告された。本研究はcJun阻害を利用した非小細胞肺癌の癌幹細胞を標的にした治療法の開発を目標とした。 平成23年度は、癌幹細胞が濃縮されると考えられているlow attachment plate上でのEGF・bFGF添加/無血清培地によるspheroid(球状細胞集塊)形成培養を、種々の非小細胞肺癌細胞株(PC-3、NCI-H1975、NCI-H1299、およびA549)を用いて行った。いずれの細胞株においてもspheroidが形成された。また、通常培養時と比べて癌幹細胞マーカーの一つであるALDH高活性細胞の増加を認めた。NCI-H1299細胞においては、tet-onシステムによるcJun dominant negative mutantの誘導によって、spheroid形成能が低下した。 一方、研究代表者は幹細胞の維持に関係するポリコーム遺伝子EZH2が非小細胞肺癌で高発現し予後不良因子であることを報告していたが、通常培養において、siRNAによるEZH2のノックダウンやEZH2阻害効果を有する小分子化合物DZNepが上記4種類の非小細胞肺癌細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することを見出した。 以上の結果より、非小細胞肺癌細胞の中に癌幹細胞の可能性のある細胞があり、それらの細胞の増殖にcJunが関係していることが示唆された。また、幹細胞の維持に関係するEZH2の阻害が肺癌細胞の増殖に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
low attachment plate上でのsphoid形成は、細胞間接着によってしばしば大集塊を形成し、徐々に継代が困難になる現象が認められ、一時研究の遂行に支障が生じた。しかし、培養面にすり鉢状のマイクロウェルが施されている培養容器により細胞間接着の影響をなくし、長期継代可能なシステムを確立することができたため、現在はおおむね順調に計画を進めている。 また、通常培養の検討ではあるが、幹細胞維持に関わるポリコーム遺伝子EZH2のノックダウンやEZH2阻害効果を有するDZNepが非小細胞肺癌細胞に対する優れた増殖抑制効果があることを見出し、平成23年度の日本癌学会で発表し、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
spheroid形成細胞におけるcJunの活性を検討し、SP6000125によるcJun阻害によって、spheroid形成が抑制されるか検討する。また、DZNepを含めた他の癌幹細胞シグナル阻害薬との併用効果を検討する。また、spheroid形成細胞のin vivoでの造腫瘍能を検討する。 なお、次年度使用の研究費55,139円が生じているが、研究遅延のためではなく、使用金額の集計ミスのためである。すなわち、研究代表者は、2月29日付で残額が0円になったと事務担当者より報告を受けたため、以後は研究費を使用しなかった。しかし、4月16日に本報告書作成のため研究費支出の再確認を行った所、集計ミスにより55,139円の残額があることが判明した。今後は、研究代表者自身も支出状況を良く確認しながら、計画的に研究費を使用していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種シグナル伝達阻害薬、各種シグナル活性評価のための試薬・キット、NOD/SCIDマウスなどの購入のために使用する。日本癌学会のシンポジウム(招待)でDZNepに関するデータを発表し、日本肺癌学会などで情報収集するための旅費にも使用する。 前述したように23年度未使用額55,139円の発生理由は、使用金額の集計ミスのためである。すなわち、研究代表者は、2月29日付で残額が0円になったと事務担当者より報告を受けたため、以後は研究費を使用しなかった。しかし、4月16日に本報告書作成のため研究費支出の再確認を行った所、集計ミスにより55,139円の残額があることが判明した。この未使用研究費については、NOD/SCIDマウス購入費の一部として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Minichromosome maintenance (MCM) protein 4 as a marker for proliferation and its clinical and clinicopathological significance in non-small cell lung cancer2011
Author(s)
Kikuchi J, Kinoshita I, Shimizu Y, Kikuchi E, Takeda K, Aburatani H, Oizumi S, Konishi J, Kaga K, Matsuno Y, Birrer MJ, Nishimura M and Dosaka-Akita H
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Journal Title
Lung Cancer
Volume: 72
Pages: 229-237
DOI
Peer Reviewed
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