2011 Fiscal Year Research-status Report
自宅あるいは職場環境が原因で起こる間質性肺炎の原因真菌の同定
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23591140
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮崎 泰成 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (30396999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 隆 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (10312076)
江石 義信 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70151959)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 住居関連過敏性肺炎 |
Research Abstract |
本年度の成果は「Respiratory Medicine」(Unoura K, Miyazaki Y, et al. Identification of fungal DNA in BALF from patients with home-related hypersensitivity pneumonitis. Respir Med 2011;105:1696.)に報告した。 夏型を含む住居関連過敏性肺炎(home-related hypersensitivity pneumonitis: HRHP)(19例)、膠原病肺を含む肺疾患(35例)及び健常者(8例)を対象とした。気管支肺胞洗浄液(BALF)よりDNAを抽出。Trichosporon sp.およびHRHPで報告のあるAcremonium chrysogenum, Aspergillus fumigatus, A. niger, Fusarium napiforme, Humicola fuscoatra, Penicillium corylophilum, Pezizia domicilianaのプライマーでPCRを行った。陽性PCR産物をクローニング/シークエンスした。急性HRHP10例中9例、慢性9例中8例でTrichosporon sp.を検出、この内11サンプルはT. asahii、4サンプルはC. uzbekistanesis、1サンプルはT. japonicumと同定、急性2例ではF. napiformeも検出された。健常者では真菌DNAは検出されず、他疾患中膠原病肺のみ17例中3例でTrichosporon sp.を検出、膠原病肺への関与も示唆された。 以上よりHRHP患者のBALFより真菌DNAが検出可能で、T. asahii以外の真菌も同定され、本法がHRHPの診断に有用であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過敏性肺炎は環境中の吸入物質が原因で起こるアレルギー性の間質性肺炎である。しかし、環境中に存在するありふれた有機物・無機物が原因であるため、原因抗原の特定はしばしば困難である。その結果、吸入抗原の同定がされずに診断されることが多く、本疾患の治療の基本である環境中からの原因抗原の排除は困難となり、疾患が進行する可能性がある。従って「原因抗原の同定」は診断治療の必須の項目であり、解決しなければならない喫緊の問題である。本邦では過敏性肺炎の原因は真菌がもっとも多く、自宅あるいは職場環境の真菌が原因で起こる「住居関連過敏性肺炎(HRHP)」はその一つである。そこで本研究ではHRHPの診断法を確立することを目的とし、3年間で以下の3つの項目を段階的に達成することを目標とした。(1).HRHPのBALF中の抗原真菌の同定法の確立(2).同定された真菌の抗原蛋白およびエピトープの同定(3).抗原部位に対する単クローン抗体を作製し環境中の抗原測定系を開発する。 本年度の研究では、HRHP患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)から真菌DNAが検出可能で、さらに数種類の真菌を同定することが可能であったあることを証明した。この結果より本法がHRHPの診断ツールとして有用であることが分かった。従って最初の目標である「住居関連過敏性肺炎のBALF中の抗原真菌の同定法の確立」がほぼ達成できたと考えられる。さらに多数の原因真菌の候補を検出するため、症例数を増やしての検討および網羅的な真菌叢の検出を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに多数の原因真菌の候補を検出するために、網羅的な真菌叢の検出を検討している。具体的には、「真菌特異的なユニバーサルプライマー」を明治薬科大学微生物学教室の杉田隆先生とともに設計し、同プライマーによりHRHP患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)から抽出した真菌DNAが検出可能かを検討する。既に行っている予備的な実験では、真菌DNAが検出されているので、クローニングし、30~50クローンのシーケンスを行う予定である。Respir Medの論文中で比較した他の肺疾患や健常者のサンプルにおいても真菌特異的なユニバーサルプライマーを用いて検討する。クローン数が十分でないためにBALF中の真菌叢を網羅的に検出できない場合には、次世代シークエンサー (454 pyrosequencing)を利用し、網羅的真菌叢を検討し原因真菌を探索する。菌叢の比較はUniFrac distance metric法で解析し、Euclidean distance matrix法を用いてクラスター分析を行う。 上記検討の結果、HRHPの原因真菌が複数明らかになる。引き続き2番目の研究項目である「同定された真菌の抗原蛋白およびエピトープの同定」を当大学人体病理学分野江石義信教授の教室と共同研究で行う。具体的には原因真菌のレパートリーの各々の真菌のcDNAの発現ライブラリーを作製し、BALF中より真菌DNAが検出された過敏性肺炎患者の血清とBALF中の免疫グロブリンでスクリーニンングを行う。免疫学的陽性プラークの同定を行い、抗原蛋白を決定する。特異性が明らかになった蛋白については、エピトープを明らかにし、血清、気管支肺胞洗浄液における抗体価をELISAで測定すると共に、患者末梢血、入手できれば気管支肺胞洗浄細胞のリンパ球増殖反応を施行し,特異的な細胞性免疫反応の誘導能を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、前記の様にcDNAライブラリーの作製のために使用する予定である。(研究代表者 宮崎泰成 40万円 研究分担者 杉田隆5万円 江石義信5万円)
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] A randomized, double-blind, multi-centered controlled trial of cyclosporine A vs. cyclophosphamide with corticosteroid in patients with idiopathic pulmonary fibrosis in Japan.2011
Author(s)
Miyazaki Y, Azuma A, Inase N, Ogura T, Taniguchi H, Yoshizawa Y, Sugiyama Y, Kudoh S.
Organizer
American Thoracic Society
Place of Presentation
Denver, USA
Year and Date
2011.5.16