2012 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸症候群による時計遺伝子を介した分子生物学的影響に関する研究
Project/Area Number |
23591147
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
鰤岡 直人 鳥取大学, 医学部, 教授 (50252854)
|
Keywords | 時計遺伝子 / 睡眠時無呼吸 / 睡眠関連呼吸障害 |
Research Abstract |
本年度も時計遺伝子が構成する分子時計(概日時計)の機序と睡眠関連呼吸障害の代表的な疾患である閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の時計遺伝子に対する影響を検討した. ヒト末梢時計遺伝子,PERIOD1, PERIOD2, PERIOD3, BMAL1, CLOCKの生体におけるmRNA発現の日内変動を調べる手段として末梢血白血球からtotal RNAを抽出してmRNA発現を調べてきた.一方,齧歯類では肝臓,腎臓,肺などの臓器自体の時計遺伝子発現を直接調べて報告されている.OSASが生体の臓器における末梢時計遺伝子に分子生物学的影響を直接及ぼすかを調べるため,基礎検討として手術切除された臓器の切除時刻の違いによる末梢時計遺伝子のmRNA発現の日内変動を検討した.研究は鳥取大学医学部の倫理委員会の審査を受け患者からは文書による同意書を得た.対象者は肺疾患の手術を受けた15例である.切除された肺非癌組織からtotal RNAを抽出してReal-time PCR法でヒト末梢時計遺伝子,PERIOD1, PERIOD2, PERIOD3, BMAL1, CLOCKのmRNA発現を調べた.内部コントロールとしてbeta-ACTINを用いた.午前に切除した症例は6例,午後切除した症例は9例であった. 結果として,調べた各々の時計遺伝子mRNA発現には午前,午後の間に有意差を認めなかった.さらに切除時刻-mRNA発現量に有意の相関関係を認めなかった.例数が少ないこともあるが,麻酔など前処置の影響も大きいと考えられた.今回の準備的研究ではOSAS患者は含まれていないが,手術による切除肺組織を用いてのmRNA発現の日内変動解析は難しいと思われた.しかし,mRNA発現の日内変動以外で分子時計(概日時計)の分子生物学的機序解析には有用な可能性があると考えられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はOSASによって生じる生理学変化がヒト生体臓器における末梢時計遺伝子対して与える直接の影響を把握する手段として,手術による切除肺組織を用いて末梢時計遺伝子mRNAの発現を調べた.有意な変動を認めなかったが,これまで検討されていなかったアイディアであり,時計遺伝子の機序を調べる基礎データとなり得たと思われる.以上から研究目的の達成度は想定通りであった.
|
Strategy for Future Research Activity |
時計遺伝子は視交叉上核(SCN)においてのみでなく,腎臓,肝臓,肺,心臓,皮膚,口腔粘膜,末梢血単核球などの末梢組織においても同様の遺伝子群が末梢時計遺伝子として発現・発振している.SCNに発現する時計遺伝子は中枢時計遺伝子,その他の臓器,細胞に発現する時計遺伝子は末梢時計遺伝子と定義されている.時計遺伝子群の転写,翻訳の周期が約24時間であり,これらの機序は分子時計(概日時計)と呼ばれる.分子時計の機序は中枢も末梢も同じである.睡眠関連呼吸障害(sleep-related breathing disorders)は低酸素血症などを伴う睡眠中の呼吸障害であるが時計遺伝子に影響を及ぼす.引き続き,時計遺伝子が構成する分子時計の機序と睡眠関連呼吸障害の代表的な疾患である閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome: OSAS)の時計遺伝子に対する影響の機序を検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(715,850円)発生は実験予算を余裕を持って使用したためであり,研究を遂行するため次年度に必要である. 使用計画として試薬などの消耗品を中心とした物品費に用いる. あわせて,研究成果を論文にするための費用として使用する予定である.
|