2012 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器悪性腫瘍における新規癌ウイルス感染実態の網羅的解析
Project/Area Number |
23591149
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
上岡 樹生 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (00274374)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
|
Keywords | ウイルス / 癌 / 呼吸器腫瘍 / 感染症 / 微生物 |
Research Abstract |
喫煙は肺癌の最大の原因ではあるが、近年非喫煙者の非小細胞肺癌(NSCLC)が増加の傾向にある。従来、肺癌の原因として喫煙以外に、環境因子、遺伝的素因、ウイルスの関与が示唆されてきたが、最近の世界的疫学研究結果においても、喫煙以外の因子の関わりを強く示している。しかし、本邦におけるウイルスに関する研究報告は欧米に比べ、十分なデータが蓄積されているとは言えない。 2008年にヒトに癌を惹起する第7番目の癌ウイルスとしてメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が発表された。MCPyVは神経内分泌系細胞由来の癌である皮膚メルケル細胞癌(MCC)から分離されたが、MCCと組織学的に近似する肺小細胞癌でも検出されることが報告され、世界中で議論が交わされている。しかしながら、本邦からの解析結果の報告は未だになく、わが国の肺癌におけるMCPyVの蔓延性については明らかにされていない。 そこで本研究では、呼吸器悪性腫瘍におけるMCPyVの関連性および感染実態について解析した。これまで研究で、一部のNSCLCにMCPyVのゲノムが検出されることを見出したが、本年度はウイルスRNAの発現、ウイルス蛋白の発現について調べた。MCPyC LT遺伝子発現をRT-PCR法で、また蛋白発現をLT遺伝子がコードする蛋白に対するモノクロナール抗体を用いて、免疫染色法で行った。 MCPyV陽性NSCLC症例の中には、MCPyV LT RNAの発現が見られ、ウイルス蛋白の発現が腫瘍細胞の核内に認められ、MCPyVが腫瘍細胞に感染していることが証明された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「呼吸器悪性腫瘍における新規ヒト癌ウイルスであるMCPyVの関連性および感染実態を明らかにする」ことを目的にしている。非小細胞肺癌細胞にMCPyVが検出され得ることを証明し、さらにウイルスRNA・蛋白の発現が見られることを突き止めた。肺癌とMCPyVの関係について、今後の研究に繋がるデータを得ることができた。これらの成果はBritish Journal of Cancerに受理された。 よって、本研究は当初の計画通りに進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
また本研究で検出されたウイルスDNAの塩基配列を詳細に解析し、その配列に変異、欠損がないかを調べ、野生型MCPyVの塩基配列と違いがないかを明らかにする。欧米においてこれまでに分離されている株と本研究で同定されたウイルス株に相違がないかも比較検討することにより、本邦独自のウイルス株かどうかを明らかにし、MCPyVとその病原性および発癌機序の一端に迫る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、ウイルス遺伝子の発現のための試薬を中心に最低必要限の予算を計上したため、若干の繰越金が発生した。 次年度は、ウイルス遺伝子解析用試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費、および研究成果発表のための旅費、学術誌掲載のための費用などに予算の計上を予定している。
|
Research Products
(6 results)