2011 Fiscal Year Research-status Report
PAR-2制御によるIPF急性増悪新規治療法の探究
Project/Area Number |
23591159
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 朋子 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10400342)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
本実験の目的は、特発性肺線維症(IPF)の急性増悪のメカニズムを追求し、肺保護作用があると考えられるPAR-2レセプターをターゲットとしたIPF急性増悪の新規治療法を探求することである。H23年度の研究実施計画では細胞レベルでPAR-2の役割を検討する予定であった。肺線維芽細胞としてMRC5、WI38、肺上皮細胞としてCalu-3を用いまずはPAR-2の発現を検討した。結果はRNAレベルでも蛋白レベルでもPAR-2の発現は認められた。またこれが機能的発現であることは細胞内カルシウム濃度の測定により確認した。肺線維芽細胞においてはα smooth muscle actinの発現がPAR-2アゴニストであるPAR-2 activating peptideやtrypsinで亢進することを確認した。そのメカニズムとしてMAPキナーゼに着目し、同じくPAR-2アゴニストでERKのリン酸化が起こることも確認した。肺上皮細胞ではEMT変化に着目し上皮細胞の線維化のメカニズムを検討した。現在のところE-cadherinがPAR-2アゴニストにより減少してくることを確認している。上記の実験結果は、肺線維症における線維化のメカニズムにPAR-2が関与することを示唆するものであり今後ブロック実験などによってさらにその確証を得る予定である。一方、IPFの急性増悪の機序として肺胞腔内へフィブリン沈着が知られている。実際急性増悪を起こした患者のBAL検体でフィブリンを測定したところ安定期の患者の検体と比較し明らかにフィブリンは増加していることがわかった。現在上記の細胞系を用いPAR-2アゴニストでフィブリンの合成が促進することを確認中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れが出た最大の理由は、2点あると考えている。(1)細胞培養を行っている際、ほかの細胞でマイコプラズマ感染が明らかとなり一旦培養系をストップせざるを得ない状況になった点である、これは速やかに原因となった細胞を廃棄し新しく培養系を立ち上げなおしたが正常に機能するまでやく2~3か月を要した。(2)Western Blot法が正常に機能するまで3~4ヵ月を要した点である。さまざまなトラブルシューティングを行ったが、最終的に原因がmembraneの保存状況にあることが判明、membraneを大量にストックする従来のやり方を変え、都度調達とすることでmembraneの保存状態が良好となり、Western Blottingは問題なく機能するようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度の研究実施計画では細胞レベルでPAR-2の役割を検討する予定であったわけであるが、上記のような理由でまだ予定のすべての実験は終了していない。今後は肺線維芽細胞におけるTGF-β1の発現やフィブリンなど凝固線溶系因子の合成促進をPAR-2アゴニストを用い確認、また肺上皮細胞のEMTについて他の抗体を用いてPAR-2アゴニストによる効果を検討する予定である。そのためTGF-β1測定キットの購入、凝固線溶系因子のELISA測定、EMT発現を確認するための各種抗体の購入が必要となる。H24年度は肺組織におけるPAR-2の役割の検討がテーマであるが、この実施計画に先立ち、上記の積み残しを至急で行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の計画修正を受けて、下記のものを購入する。H23年度積み残し分:TGF-β1測定キット、凝固線溶系因子のELISA測定、EMTに関する各種抗体、PAR-2阻害剤、PAR-2siRNA、PAR-2 activating peptide、PAR-2 blocking peptideH24年度実験計画分:ヒトBAL検体の各種バイオマーカーのELISAによる測定、PAR-2ノックアウトマウスを含む動物、PAR-2アゴニスト、PAR-2アンタゴニストなど。研究費は上記の購入に使用する予定である。
|