2011 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症病態におけるオートファジーと小胞体ストレス応答が制御する細胞運命
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23591162
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90468679)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オートファジー |
Research Abstract |
肺線維症病態におけるオートファジーと小胞体ストレス応答が制御する細胞運命が検討課題である。本年度は肺線維症の肺組織を用いて、免疫組織学的にオートファジー活性に関する検討を行った。 肺線維症でのオートファジー活性は、まずオートファジー関連蛋白である、ATG5、 Beclin1、LC3染色により評価した。ATG5と Beclin1染色に関しては肺組織がびまん性に染色され、オートファジー活性の十分な評価を行えなかった。一方LC3は、肺線維症の肺組織の正常構造の保たれた領域のII型肺胞上皮細胞でのみドット状に発現亢進を認めた。これは同細胞におけるオートファジー亢進を示唆する所見と考えた。 従来プロテアソームで分解されると考えられてきた、ユビキチン化した蛋白が、p62というアダプター蛋白を介して、選択的にオートファジーで分解されることが報告されている。そこでp62とユビキチン化蛋白の発現によりオートファジーによる分解状況をさらに評価した。結果、p62は正常肺と、肺線維症の正常構造の保たれた領域のII型肺胞上皮細胞、さらに線維化進展部位の化生上皮細胞と線維芽細胞でその発現が亢進していた。ユビキチン化蛋白は、正常肺では発現を認めず、肺線維症の正常構造の保たれた領域のII型肺胞上皮細胞ではわずかに発現を認め、線維化進展部位の化生上皮細胞と線維芽細胞で発現が明らかに亢進していた。 細胞老化をp21と老化関連βガラクトシダーゼ染色により評価したところ、線維化進展部位の化生上皮細胞でのみ細胞老化の亢進を認めた。 以上検討から、肺線維症の肺組織の特に線維化進展部位ではオートファジー亢進が不十分であり、細胞老化や筋線維芽細胞化を規定している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートファジーは動的な細胞内蛋白分解系であり、オートファゴゾームの形成は5から10分で起こる。それゆえ、特に固定した組織検体を用いてオートファジーの活性状況を評価する際に、オートファジー関連蛋白の発現がオートファジー機能亢進によるのか、それとも機能低下に伴う蓄積であるのかの判断が重要である。 今回、オートファジー関連蛋白と同時にp62及びユビキチン化蛋白を評価することで、肺線維症の線維化進展部位では、化生上皮細胞、線維芽細胞でともにオートファジー亢進が不十分であることを示唆する所見を得た。また細胞老化亢進に関する検討結果と合わせて、オートファジー機能亢進が不十分であることが、化生上皮細胞に対しては細胞老化亢進に、また線維芽細胞に対しては、細胞老化でなく筋線維芽細胞への分化誘導に関与すると思われた。 つまりオートファジーが規定する細胞運命は細胞特異的である可能性が示唆され、それぞれの細胞種を用いた今後の検討を行う上で、基礎となる知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上皮細胞老化の亢進と、筋線維芽細胞の増殖は肺線維症における代表的な病理学的所見であり、病態に深く関与すると考えられている。オートファジー機能亢進が不十分であることが、化生上皮細胞に対しては細胞老化亢進に、また線維芽細胞に対しては筋線維芽細胞への分化誘導に関与する可能性がある。そこで肺組織から分離した気道上皮細胞と線維芽細胞を用いて、それぞれオートファジーの関与をin vitroで検討する。 気道上皮細胞に関しては、酸化ストレス(過酸化水素)や小胞体ストレス(ツニカマイシン)刺激と同時にオートファジー機能を制御し、細胞老化やアポトーシスへ与える影響を検討する。線維芽細胞に関しては、代表的な筋線維芽細胞誘導因子であるtransforming growth factor-beta(TGF-b)刺激と同時にオートファジー機能を制御し、筋線維芽細胞分化に与える影響を検討する。以上検討によりオートファジー機能が、それぞれ上皮細胞老化と筋線維芽細胞化への関与が明らかとなった場合には、その機序に関してより詳細な検討を行う。 線維化進展におけるオートファジー機能の関与がより明確になった場合には、肺線維症の動物モデルを用いてさらに検討を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RT-PCR用キット、ウエスタン用試薬、実験用マウス、プラスチックウエア(チップ、プレート、ピペット)、各種ELISAキット、各種抗体、培養用試薬および血清など消耗品の購入予定である。
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