2012 Fiscal Year Research-status Report
肺線維症病態におけるオートファジーと小胞体ストレス応答が制御する細胞運命
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23591162
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90468679)
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Keywords | オートファジー |
Research Abstract |
肺線維症病態におけるオートファジーと小胞体ストレス応答が制御する細胞運命が検討課題である。昨年度の肺線維症の肺組織を用いた検討から、肺線維症進展にオートファジー機能が不十分であることが病態に関与する可能性が示された。 本年度は、培養細胞を用いた基礎的な検討を行った。まず気道上皮細胞を用いて、小胞体ストレスを亢進させたときに誘導される細胞老化に対するオートファジーの影響を検討した。ツニカマイシンにより小胞体ストレスを誘導し、SA -β-gal染色により、気道上皮細胞の老化を評価した。ツニカマイシンは細胞老化を誘導し、mammalian target of rapamycin (mTOR)阻害剤であるTorin1によるオートファジーの亢進は、小胞体ストレスと細胞老化を抑制した。一方、LC3BとATG5に対するsiRNAを用いてオートファジーを阻害すると、小胞体ストレスによる細胞老化が増強した。つまり、小胞体ストレスを受けた上皮細胞ではオートファジー機能が細胞老化を規定する可能が考えられた。 肺から分離培養した線維芽細胞をTGF-βで刺激し、筋線維芽細胞への分化を誘導した。LC3BとATG5に対するsiRNAを用いてオートファジーを阻害すると、TGF-βの刺激なしでも、α-SMA とtype I collagenの 発現が亢進した。またオートファジーの阻害はTGF-βによる筋線維芽細胞への分化をさらに促進した。逆にmTOR阻害剤であるTorin1によるオートファジー亢進はTGF-βによる筋線維芽細胞化の誘導を抑制した。つまり、オートファジーの低下は上皮細胞に対しては細胞老化を、また線維芽細胞に対しては筋線維芽細胞分化を誘導し、肺線維症の進展に関与する可能性が、基礎的検討でも確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者肺組織を用いて得られた検討結果を、培養細胞系を用いた検討により確認することが出来た。つまり肺線維症病態にオートファジー機能低下が関与する可能性がより明確に示すことが可能であった またオートファジーが規定する細胞運命が細胞特異的である可能性を考えていた。今回、気道上皮細胞と線維芽細胞を用いることで、細胞老化と筋線維芽細胞分化へとそれぞれ異なる表現型をオートファジーが規定している可能性が明らかとなったことは興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
線維化進展におけるオートファジー機能の関与が、線維症肺組織を用いた検討、さらに培養細胞系を用いた検討により明らかとなった。オートファジーは動的な細胞内蛋白分解系であり、実際の生体における役割は多岐に及ぶ。そこで今後は肺線維症の動物モデルを用いてさらに検討を行っていく必要がある。ブレオマイシンを用いた肺線維症モデルで、オートファジーを各種薬剤により、阻害または亢進させた影響を検討する。さらに細胞選択的なオートファジー関連蛋白のノックアウトによる実験系も計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RT-PCR用キット、ウエスタン用試薬、実験用マウス、プラスチック消耗貧(チップ、プレート、ピペット)、各種ELISAキット、各種抗体、培養用試薬および血清など消耗品の購入予定である。
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Research Products
(3 results)