2011 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧症血管リモデリング形成過程におけるIL-17の役割の解明
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23591166
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
丸山 淳子 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 教授 (50263017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 琢磨 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60224515)
丸山 一男 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20181828)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / IL17 / 低酸素暴露 |
Research Abstract |
IL-17の、肺高血圧(PH)発症への関与を検討するため、IL-17欠損(KO)マウスと野生型(WT)マウスを用いて、低圧低酸素曝露を行った。WT、KOマウスをそれぞれ低圧低酸素曝露群(hypo)および大気圧コントロール群(norm)に分け、21日間飼育し、ペントバルビタール腹腔内投与後、直接穿刺による右室収縮期圧(RVSP)測定、ヘマトクリット値(Ht)の計測を行った。脱血により安楽死させた後、心肺を一塊に摘出し、摘出心より左室と心室中隔に対する右室自由壁の重量比(RV/LV+S)を、肺のαSMAの免疫組織化学染色にて肺小血管の筋性化の比率(%muscularity)を計測した。その結果、WT/hypo群はWT/norm群と比較して、Ht(P<0.0001)、RV/LV+S、%muscularityにおいて有意に高値を示したことから、低酸素性肺高血圧を発症したと考えられた。KO/hypo群はWT/hypo群と比較して、RVSP、RV/LV+Sでは有意な差は認められなかったが、Ht値に有意な上昇を認め、%muscularityにおいては有意に低値を示した。以上より、IL-17は、低酸素性肺高血圧における肺小血管の筋性化に関与している可能性が示唆された。実験手技の難度が高いため、現在の検体数は十分とはいえないため、さらに、検体数を増やした上で、実験を続行する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度行った、生理学的手法の実験手技の難度が高く、現在の検体数では十分とはいえないため、さらに、検体数を増やした上で、実験を続行する必要があると考える。また、昨年度は、掘りマリン固定により得られたマウス肺組織標本を用いたαSMAに対する免疫組織化学染色により、低酸素性肺高血圧症血管リモデリングの程度を検討し、一応の結果を得ることができた。しかし、同標本を用いたその他の抗原についての染色では、明らかなシグナルを得られなかった。今年度は、組織固定法を変えて、さらに検討する必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った生理学的手法、形態学的手法を用いてさらに検討を続行するとともに、肺組織の炎症の程度、血管構成細胞のアポトーシスの変化、および、血管機能の変化についての検討を、以下のように行う。(1)同モデルでの摘出肺血管の血管緊張性・血管反応性の違いの解析ー脱血により安楽死させた低酸素暴露マウスから肺を摘出し,リング状血管片を作成し,Krebs Henseleit 溶液に浸し,各種血管収縮物質、内皮依存性血管弛緩物質、内非依存性血管弛緩物質に対する血管反応性の変化を検討する。(2)肺血管リモデリング、炎症、血管構成細胞のアポトーシスの程度の解析ー摘出した肺は、ホルマリン以外の固定法により、パラフィン標本を作成し、炎症性細胞浸潤の程度、血管内皮細胞および血管平滑筋細胞のアポトーシスの変化を確認する。(3)肺高血圧発症過程におけるIL17ファミリーサイトカイン、転写因子、増殖因子,接着因子、血管作動性物質の発現の経時的変化の解析ー野生型マウスにおいて、低酸素暴露0日、3日、7日、14日、21日の時点で肺を採取し、IL17A, RORgamma t, IL23p19, GCSF, VCAM-1, ICAM-1, TNFalpha, IL1beta, IL6, MCP-1の発現の経時的変化をreal time PCR 法で検討し、肺高血圧発症過程との関連を検討する。 以上について得られた結果をもとに、肺高血圧におけるIL17産生細胞の同定、IL17実際に、培養細胞および生体を用いた血管構成細胞の増殖に対するIL17の関与の検討を続ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、今年度得られた結果をもとに、肺高血圧におけるIL17産生細胞の同定、血管構成細胞の増殖に対するIL17の関与の検討を以下のように行う。(1)低酸素性肺高血圧モデルにおけるIL17A 産生細胞の同定ーIL17A 産生細胞として可能性があるものは,Th17、gamma delta T, M1マクロファージ、M2マクファージなどが挙げられる。それぞれRORgammaT, gamma 鎖、NOS2, Arg1を用いて,免疫組織化学染色を行う。また、抗IL17A抗体を同様に染色することにより、IL17A産生細胞の同定と定量を行う。シグナルが明らかでない場合は,マウス肺から分離した細胞集団のフローサイトメトリーを行う。(2)血管構成細胞の低酸素下での増殖、アポトーシスにおけるIL17の関与ーマウスモデルから得られた血管構成細胞の初代培養、あるいは既存の肺血管内皮細胞、血管平滑筋細胞株を用いて、正常圧酸素分圧下,1%、5%、10%低酸素分圧下において、IL17A存在下、非存在下での細胞増殖、細胞分化,アポトーシスの変化を検討する。また、上清に含まれるサイトカインの濃度を ELISA 法にて測定する。 以上の事柄について、結果が出た場合は、さらに生体を用いた実験手法を検討する。
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Research Products
(2 results)