2011 Fiscal Year Research-status Report
肺炎起因菌に対する抗菌ペプチドの細胞死誘導機構の解析と治療戦略の基盤研究
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23591170
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
桑野 剛一 久留米大学, 医学部, 教授 (60215118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木田 豊 久留米大学, 医学部, 講師 (30309752)
谷 健次 久留米大学, 医学部, 助教 (00614108)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 塩基性抗菌ペプチド / 膜透過性 / 抗菌活性 / 過酸化水素 / 酸化ストレス / SOS反応 / 大腸菌 / 黄色ブドウ球菌 |
Research Abstract |
細菌感染症において、非特異的感染防御機構の一つとして塩基性抗菌ペプチド(デフェンシン、カテリシジン等)が重要であることは広く知られている。その特徴は、抗菌スペクトルが広く、また薬剤耐性菌にも抗菌活性を示すことにある。しかし、その抗菌作用機序は、膜透過性亢進の関与が考えられているが、完全に解明されていない。ところで、近年、β-ラクタム、キノロン薬剤等の抗菌剤による細菌細胞死の機序として、SOS反応、酸化反応由来ハイドロキシラジカルOH-等の関与が示唆されている。 そこで、本研究において、抗菌ペプチドによる細胞死の誘導機構を膜透過性、活性酸素、細胞内反応シグナル等の観点から解明し、抗菌ペプチドの活性を増強する方法を探り、臨床的に感染症治療の効率化を図る基盤的なデータを得ることを目的とする。本年度、抗菌ペプチド(デフェンシン、カテリシジンを含む直鎖状の塩基性ペプチド等)の抗菌作用機序の解明、とりわけ、抗菌ペプチドが膜へ作用した後、細胞死へ至る機序の解明を計画した。 本年度の実績は、先ず、抗菌ペプチドが、細菌の膜透過性亢進を誘導するか、そしてその抗菌活性を検討し、またペプチド処理により、過酸化水素が産生誘導されるかを検討した。概ね、膜透過性亢進の誘導を可能な抗菌ペプチドは抗菌活性も示した。しかし、一部のペプチドは、膜透過性亢進を示さなかったが、強い抗菌活性を示した。即ち、膜透過性亢進以外の機構で細菌の増殖が阻害されることが示唆された。また、過酸化水素は、ペプチド処理後に誘導されたが、その産生レベルは低く、抗菌活性発現における意義は現在のところ、明確でない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、種々の塩基性抗菌ペプチド(デフェンシン、カテリシジン、および塩基性アミノ酸等が10残基ほどの合成ペプチド等)による大腸菌、黄色ブドウ球菌等に対する膜透過性をプローブ:DiSC3(5)で細菌を処理し、それから遊離するDiSC3(5)を測定することにより評価した。概ね、膜透過性と抗菌活性は相関しており、抗菌活性の発現に膜の透過性亢進は重要な役割を有することが明らかとなった。しかし、一部の抗菌ペプチドでは、膜透過性を亢進しなかったが、抗菌活性を示した。即ち、膜透過性亢進の関与以外の抗菌機構が存在することが示唆された。また、抗菌ペプチド処理した細菌は過酸化水素を産生した。その産生は、膜の透過性亢進とほぼ相関した。さらに、抗菌ペプチド処理後の細菌から産生される過酸化水素の定量をおこなった。しかし、産生された過酸化水素の濃度は低く、過酸化水素の消去剤(カタラーゼ)を抗菌アッセイ系へ添加しても、その抗菌活性への影響を認めなかった。従って、抗菌ペプチドによる細菌の細胞死に過酸化水素が関与する可能性は低いことが示唆された。 今年度、このように抗菌ペプチドによる膜透過性亢進と抗菌活性の相関、および過酸化水素の産生誘導の基礎的なデータが得られたので、ほぼ当初の計画どおり研究計画は遂行されたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、抗菌ペプチドの膜透過性と抗菌活性は、ほぼ相関することが明らかとなった。多くのペプチドによる膜透過性は、グラム陽性細菌、陰性細菌において、差を認めなかったが、興味あることに、ある抗菌ペプチドでは黄色ブドウ球菌の膜透過性を亢進するが、大腸菌の膜透過性を亢進できないことを観察した。さらに、膜透過性を亢進しないが、抗菌活性を示す抗菌ペプチドも存在した。即ち、膜透過性亢進以外の抗菌機構が存在することが示唆された。一つの抗菌機構として、ペプチドが細胞内へ侵入して、ゲノムDNAと結合することにより、ストレスが誘導され、細胞死が起こるのではないかと推定している。今後、ストレスで誘導される酸化損傷の検出として、8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)をマーカーとして、DNA損傷レベルを測定したい。 これまで、活性酸素の関与については、細胞外には高濃度の過酸化水素を検出できなかったが、今後、上述の8-OHdG、また、酸化損傷生成物であるチミジングリコール、脂質の酸化損傷、さらにタンパク質の酸化損傷を抗体等を使って検出したい。また、ストレスで誘導されるSOS反応についても検討を実施する。抗菌ペプチド処理細菌のrecA,lexAをmRNAレベルでRT-PCR等によって解析する。DNA修復タンパクhex, rad等についても同様に解析する。また、RecAの活性化ではATP加水分解が生じることから、リン酸モリブデン青色測定法でATPase 活性を測定する。このような解析から、抗菌ペプチド処理による細菌の細胞死誘導における活性酸素の関与が解明されることが期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)の直接経費は、平成23年度の繰越直接経費を加えて、152万円である。平成24年度の研究計画として、前年度と同様に、過酸化水素、SOD、カタラーゼ等の活性酸素等の検出に関わるキット費用として、25万円を計上したい。次に、抗菌ペプチドにより誘導されるストレスで生じるDNAの酸化損傷を8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG)をマーカーとしてELISAキットで検出する予定である。本キットは、1セット8.5万円であり、5セットほどの購入を予定しており、合計42万円となる。また、酸化損傷生成物であるチミジングリコールを検出するため、抗チミジングリコール抗体(6万円)、抗8-ニトログアシノン抗体(6万円)を購入する。脂質酸化ストレスの評価に、ヘキサノイルリジン測定ELISAキット(6万円)を購入する。さらにタンパク質の酸化損傷を抗ジチロシン抗体(2万円)で検出したい。これらの抗体を検出する試薬一式費用として、10万円を見込んでいる。 また、ストレスで誘導されるSOS反応についても検討を予定している。抗菌ペプチド処理細菌のrecA,lexAをmRNAレベルでRT-PCR等によって解析する予定であり、プライマー作製、RNA抽出、PCRに関わる試薬等の費用で、15万円を予定している。 最後に、細菌の培養等に関わる試薬、消耗品一式として、15万円、さらに抗菌ペプチドの合成費用等として25万円を計上している。 以上の総合計が152万円の予定となる。
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Research Products
(2 results)